各音の使用状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 03:20 UTC 版)
上記のように、漢字音の導入には仏教が大きく関わっており、各宗派によって使う音読みが異なっている。例えば、高僧を意味する「和尚(和上)」について、律宗・法相宗・真言宗では呉音で「ワジョウ(ワジャウ)」と読み、天台宗では漢音で「カショウ(クヮシャウ)」、禅宗・浄土宗では唐音で「オショウ(ヲシャウ)」と読んでいる。しかしながら、仏教用語の多くは古くから定着していた呉音で読まれている。 呉音は仏教用語や律令用語に使われ、日常語としても定着した。漢音はもっぱら儒学で用いられた。また、近代以降、西洋語を翻訳するのに作られた和製漢語にはもっぱら漢音が使用された。唐音は、禅宗用語を除けば、「椅子(イス)」や「蒲団(フトン)」のように中国から流入した物品の名称に使われることが多い。その他、湯湯婆「ゆタンポ」、石灰「シックイ」、提灯(提燈)「チョウチン(チャウチン)」、行灯(行燈)「アンドン」、脚絆(キャハン)、暖簾(ノレン)などがある(「シックイ」の石灰はのちに「漆喰(しつくひ)」と書かれるようになり「セッカイ」の石灰と区別されるようになる。 古今の漢人名(元駐日大使王毅、陳舜臣など)、昔の朝鮮人の名(李成桂など)を発音するのには漢音を使う。昔のベトナム人の名(徴側・徴弐など)に使うこともある。 なお、時代によって読み方の変遷した熟語もある。「停止」は江戸時代まで「チョウジ(チャウジ)」(慣用音「チョウ(チャウ)」+呉音「シ」の濁音化)と読んできたが、明治時代の改革で「テイシ」(全て漢音)と読むようになった。「文書」は古くから呉音で「モンジョ」と読んでいた(「古文書」など)が、漢音で「ブンショ」と読む(「公文書」など)ことが増えた。「大根」は、「つちおほね(土大根)」と言ったものが音読みで「ダイコン」と呼ばれるようになった。時代によって読み方の変遷した熟語の中には、読みによって意味が変わるものがある。留学生を呉音で「ルガクショウ」と読むと古代・中世を中心に中国や朝鮮半島に政治制度・技術・仏教などを学びに行った人を指し、漢音で「リュウガクセイ」と読むと近代・現代に学校や政府などから外国語や、医学など専門の学問、政治を学びに行く人を指す。
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