北限の産地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 00:27 UTC 版)
前述したように、年収穫量1000t以上の経済的産地形成としては岐阜県の養老山地山麓、あるいは千葉県の房総半島周辺となっている。だが、それ以外にも小規模な産地が点在し、それぞれが北限の産地と名乗っている。栽培技術の進歩と品種改良、また気候条件の変化などにより北限産地は年々北上している傾向がある。 東日本内陸のみかん産地 一般的には、筑波山麓が北限のみかん産地と呼ばれていた。産地としては茨城県桜川市真壁町酒寄地区(酒寄みかん)や石岡市八郷町などがあり、周辺の年収穫量は100t以上となっている。この周辺では名物の七味唐辛子の原料にもなる陳皮産地で知られる.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}福来(ふくれ)みかん(厳密にはタチバナの品種)が栽培されてきた歴史がある。近世以降になると埼玉県の比企地方にもみかん産地が展開し、盆地の気候を生かしたみかん作りが行われてきた。具体的な産地の例としては同地区内最大規模の産地である寄居町風布・小林地区(規模は年収穫量は数十トン程度だが、市場出荷といった農業生産を行っている産地としては北限に当たる)、ときがわ町の大附地区(福みかんという固有品種《福来みかんと同種》で知られる)、東秩父村の大内沢みかんなどがある。その他、東京都武蔵村山市も北限と言われた産地の一つで古くからみかん栽培が行われており、狭山みかんと呼ばれている。後に栽培技術の発達や品種の改良によって、北関東内陸県でも観光目的によるみかん栽培が行われるようになった。栃木県那須烏山市小木須地区では1980年代ぐらいから観光農園が出現し、北限のみかん産地として宣伝している。1995年には群馬県藤岡市鬼石の桜山公園でも、観光農園中心のみかん産地が成立した(みかん産地としては、国内で最も内陸に位置する)。また、藤岡や烏山ほどではないが、茨城県日立市十王町にも観光みかん園が存在する。さらに高緯度となると、1985年に福島県広野町が町民にみかんの苗木を配布し、みかん栽培が行われている(ただし、町民のレクリエーション目的で市場出荷は行っていないため、今まで収穫実績はない)。 一方で、関東以外の内陸部にはみかん産地は少なく、前述した岐阜県海津市南濃町、奈良県桜井市穴師地区や京都府井手町多賀地区ぐらいである。 本州日本海側のみかん産地 本州日本海側にも古くからのみかん産地が点在している。山口県ではまだ下関、豊浦、萩などみかん産地が多く見られるが、島根県以北となると冬場は厳寒になるため、産地は一部に限られる。その中で、京都府舞鶴市の大浦半島に位置する瀬崎、大丹生地区、京都府宮津市の由良地区は本州日本海側最大の産地で、古くから寒暖の差が激しく、良質のみかんが生産されている。栽培面積はそれぞれ10ha以上、年収穫量はそれぞれ100t以上と、中規模産地としては国内最北端に位置し、それぞれ大浦みかん、由良みかんと呼ばれている。また、福井県の越前海岸にもみかん産地が展開する。福井県敦賀市東浦地区も北限産地の一つとして知られ、東浦みかんと呼ばれる。 ここでは従来の早生や普通種なども栽培可能だけでなく、かつては阪神地方に出荷したり、ロシアに輸出も行っていたりしたほどの規模があった(現在は年収穫量30 - 50t程度で、市場に出回ることは少ない)。その北部に延長する福井県福井市越廼村、越前町などにも観光農園が点在する。島根県松江市美保関町の美保関みかんなども再興の気運があり、美保神社への奉納にちなんで、ゑびすみかんと呼んでPRを行っている。島嶼部では、長崎県対馬の豆酘地区における豆酘みかんや隠岐島の崎みかんなどがある。対馬の豆酘(つつ)地区は県内のシェアは低い(長崎県が全国有数の産地であるため)ものの、ブランド化の動きも進んでいる。島根県の隠岐諸島に位置する海士町には崎みかん(東浦より高緯度。年収穫量10t程度)と呼ばれる産地があり、Iターンの若者たちによる再生プロジェクトが進んでいる。そして佐渡島の羽茂地区でもみかんが明治時代から自家用に植えられていた。2007年12月には新潟県佐渡島の農家が早生種の「興津早生」など約1トンを出荷し話題となった。後に産地として成長し栽培農家数は約20人、栽培面積も3haの規模となっており、佐渡みかんと呼ばれジャムなどの加工品も作られている(これが暫定的な国内最北端の産地となっているが、佐渡の南部沿岸は降雪も少なく、丹後や北関東より気候条件としては温暖である)。
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