動物の栄養源・食用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 00:29 UTC 版)
「食糞」も参照 様々な生物で、栄養源、あるいは食用として糞が利用されている。排泄物には、その動物が消化吸収できなかった成分が含まれるが、それを再吸収するために食う場合もあれば、その動物が利用できない成分を、他の動物が食う例もある。さらに、糞にはもとの食物に含まれていた成分だけでなく、酵素・細菌の働きなどにより、その動物の腸内で添加されたり、分解によって生じた成分が含まれたりすることもあり、それが重要な意味を持つ例もある場合がある。 例えばウサギなどは、自分の糞を食べる。北米コロンビア川渓谷に棲息するナキウサギは、栄養価の乏しいコケ類を食べているが、排出した盲腸糞はナキウサギの胃腸の微生物によって、コケの6倍もの栄養素を有しており、食糞によって栄養を得ている。また、コアラなど、親が子に栄養分を豊富に含む未消化の便を与える動物もある。これは初乳に近い役割を果たしている。草食動物の場合は、腸内細菌の働きによって草木を消化するが、腸内細菌の発生が弱い場合は消化不良を起こす。そのような時に草食動物は、腸内細菌の補充のために、好んで自分や仲間の糞を口にする。 哺乳類の中には、子育て期間中に子供の糞を食べてしまう種もあるが、これは子供の消化能力が弱くて、未消化分が多いこともあるが、それ以上に天敵から身を守るために、糞をできるだけ巣の周辺に残さないようにする合理的な行動である。イヌや人間などでは、生理的合理性がない食糞行為も観察される。特に人間の糞尿摂取については文化的側面も強い(#文化面から見た糞参照)。 糞が別種の動物に利用される場合もある。野性において動物の糞は、よく他の動物の餌になる。代表的なのは、昆虫の中で、糞虫といわれるコガネムシ類である。フンコロガシ(スカラベ)がよく知られる。 また、糞は分解を進める微生物の働く場でもある。糞が排出されると、すぐに細菌類や菌類がどんどん分解をはじめる。菌類の側から見ると、たとえば草食動物の糞には、その材料である植物よりはるかに窒素の含有量が多く、基質としてより有用である。糞に生じる菌類は糞生菌と呼ばれ、古くから研究の対象となってきた。糞だけに出現する、あるいは糞での生活に特化したと見られる菌類はミズタマカビなど様々な群の菌類に見られる。ハエのウジなどは、むしろ細菌を餌にしている可能性もある。細菌や菌類による分解が進めば、糞は土に同化してゆく。 人糞が豚や犬、魚類の餌として使用される場合もある。そのために便所はそれらの生物の飼育場所に隣接して作られることがある。さらに手の込んだものでは、人の便所の下に豚小屋(豚便所)を、豚小屋の下の方に養魚池を造る。これなどは、自然の仕組みを巧く利用した例と言えよう[要出典]。 アフリカ東部に暮らすマサイ族などは、乾季のゾウの糞を元に象糞茶(サバンナティー)を作る。また、象の糞をライオンに与えると、獰猛なライオンが一瞬にしておとなしくなってしまうという。 コーヒー栽培においては、ジャコウネコの一種が、特に出来の良いコーヒーの実を好んで食べることから、この糞に含まれている未消化のコーヒー種子を取り出したもの(コピ・ルアク)が高値で取引されている。動物の消化酵素の働きで、コーヒー自身の風味が玄妙に変化し、独特の味わいがあるという。 なお、食糞行為について、便秘ではない個体が排泄してすぐの糞便は空気に触れていないため、衛生上それほど問題はないとされているが、排便後1時間以上経った物や、便秘をしている個体の糞は、有害細菌の働きによって腐敗している。健康に悪影響を与える毒素が発生するので、食糞してはいけないと言われている。特に排便後、空気に触れて一時間経過したものは毒素を多く含み、人間が食すると急性中毒を起こし、強制的に体外排出しない限り死に至ることが多いとされる[要出典]。
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