内戦、イラン軍の侵入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/13 01:20 UTC 版)
「ヤアーリバ朝」の記事における「内戦、イラン軍の侵入」の解説
1718年にスルターン2世が没した後、イマーム職を巡る抗争が勃発する。国内は幼年のサイフ・イブン・スルターン2世を支持する派閥とムハンナ・イブン・スルターンを支持する派閥に分裂し、双方の派閥はよりイマームにふさわしい資格を持つ人物を擁立していることを主張した。1719年にムハンナは密かにルスタークに入城し、イマーム職の就任を宣言した。しかし、ムハンナは支持を得られず、翌1720年に従兄弟のヤアラブ・イブン・ビララブによって廃位され、殺害される。ヤアラブはサイフ2世をイマームに擁立し、自身は後見人を称した。1722年にヤアラブはイマームへの就任を宣言するが、サイフ2世と婚姻関係にあるビララブ・イブン・ナースィルの反乱を引き起こした。反乱の結果ヤアラブは廃位され、ビララブがサイフ2世の後見人となった。 内戦の中でムハンマド・イブン・ナースィルが権力を掌握し、1724年10月にムハンマドはイマームに選出される。ムハンマドと敵対するハルフ・イブン・ムバーラクは北部の諸部族の間に混乱を引き起こし、1728年にソハールで起きた戦闘によってムハンマドとハルフの双方は落命する。ソハールの守備隊はサイフ2世をイマームとして承認し、サイフ2世はニズワで復位した。しかし、ザーヒラ地方の住民の一部はサイフ2世の即位を認めず、彼の従兄弟であるビララブ・イブン・ヒムヤールをイマームに擁立した。緒戦の後、サイフ2世とビララブは睨み合ったまま、数年間交戦を避けていた。内陸部の大部分を支配するビララブは徐々に優位を確立していき、サイフ2世を支持する勢力はベニ・ヒナ族や同盟を結んでいる少数の部族に限られていたが、海軍とマスカット、バルカ(英語版)、ソハールといった主要な港湾都市を掌握していた。 勢力が減退したサイフ2世はアフシャール朝イランの創始者ナーディル・シャーに援助を求め、1737年3月にイランの軍隊がオマーンに到着した。サイフ2世はイラン軍に合流した後ザーヒラ地方に進軍し、ビララブの軍隊と撃破する。内陸部を進軍するイラン軍は進路上の町を占領し、殺戮、略奪、奴隷の拉致を行い、獲得した戦利品はイランに向けて送られた。数年間サイフ2世は支配者の立場を確立したが、放蕩な生活を送っていたため、諸部族の反発を引き起こした。1742年2月にサイフ2世と対立するヤアルビー家の人間はスルターン・イブン・ムルシドをイマームに選出した。ナハルに入城したスルターンはサイフ2世を攻撃し、サイフ2世はソハールの譲渡と引き換えに再びイランに援助を求める。 1742年10月頃、イランの遠征隊はジュルファーに到着する。イラン軍はソハールを包囲し、マスカットに進軍するが、いずれの都市も占領することができなかった。1743年にサイフ2世はイラン軍に欺かれ、マスカットの最後の城砦を占領される。マスカットの陥落に際して、イラン軍が開いた宴会に参加したサイフ2世と同行者たちがワインを飲んで酔いつぶれた時、イラン軍の指揮官はサイフ2世の印章を盗み出してこれを偽造し、マスカットの城砦の指揮官に砦を放棄するように命令した逸話が伝えられている。マスカットの陥落から間もなくサイフ2世は没し、マスカットを占領したイラン軍は再びソハールを攻撃した。1743年の半ばにソハールに篭城したスルターンは致命傷を負い、ビララブが代わりのイマームに選出された。ソハールは9か月にわたる包囲に耐えた後、守将のアフマド・イブン・サイードは交渉によって名誉ある降伏をし、貢納と引き換えにソハールとバルカの統治を認められる。やがてイラン軍はの内部では兵士の逃亡が起き、兵士の数は次第に数が減っていった。1747年にアフマドは残存するイランの守備隊を招いてバルカの城砦で宴会を開き、宴会の場で彼らを虐殺した。 次第にアフマドの政治的影響力は増していき、新たなイマームに選出されたアフマドはブーサイード朝を創始した。アフマドが実権を握った当初、内陸部のいくつかの都市はいまだにヤアーリバ朝や在地の指導者を支持しており、東アフリカの海岸地帯ではザンジバルだけがアフマドをイマームとして承認していた。1749年にビララブが没した時、アフマドはオマーンにおいて比肩する者がいない唯一の支配者となる。1869年にヤアルビー家の最後の砦であるバーティナ地方のフォート・ハヤムがアッザーン2世によって占領されるまで、ヤアルビー家はわずかながらも独立を維持していた。
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