全国を巻き込んだ論争 - 長良川河口堰・徳山ダム -
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 15:42 UTC 版)
「木曽川」の記事における「全国を巻き込んだ論争 - 長良川河口堰・徳山ダム -」の解説
長良川河口堰(長良川)。公共事業の在り方や河川環境について日本中に問題を提起した。 徳山ダム(揖斐川)。徳山村全村が水没するため強固な反対運動が巻き起こった。 公共事業見直しの風潮は木曽川水系の開発にも影響を及ぼした。特に木曽川水系は全国的に注目の的になっている。 一つは長良川河口堰である。高度経済成長期の1968年(昭和43年)に計画発表されたが、ダムの無い長良川に河口堰を建設することに猛烈な反対運動が巻き起こった。これにより本体建設は全く進まず、堰と一体で運用される予定であった板取ダム(板取川)の建設が中止に追い込まれた。長良川固有種のサツキマスを始め魚類に多大な影響を及ぼすとの反対派の主張は新聞社やジャーナリストを味方につけ、中立的な視点での議論が出来なくなってしまったが、結果環境アセスメントを厳密に行う事で建設は進み、1994年(平成6年)完成した。 もう一つは揖斐川に2008年(平成20年)に完成した徳山ダムである。ダム建設により揖斐郡徳山村(現・揖斐川町)全村477戸が水没することになるため、反対運動が激化した。事業者・水没予定者双方のねばり強い交渉の末、代替地集団移転で妥結した。この2事業は、公共事業と環境問題、生存権という複雑な問題を多くの関係者に投げかけ、以降の公共事業に多大な影響を与えた。 木曽川水系の河川整備は環境保護という大きな問題を投げかけた。だが、長良川は1976年(昭和51年)の9.12水害や2000年(平成12年)の東海豪雨による郡上市の大災害など度々流域に被害をもたらす氾濫を起こし、堤防整備では限界との意見がある。揖斐川に関しても、横山ダムによって洪水調節が実施されているが2003年(平成15年)の大垣水害など流域はしばしば洪水の被害を受けており、徳山ダムの必要性を流域自治体が訴求している。木曽川についても1983年(昭和58年)の美濃加茂水害で丸山ダムの計画流入量を超える洪水が発生した事から新丸山ダムを現在建設中である。また、知多半島は1994年(平成6年)の大渇水で1日19時間断水の事態となり、トヨタ自動車の工場操業にも影響を及ぼした。 しかしながら、高度経済成長が終わり、水需要の増大が見込めない中、ダム建設が本当にコストに見合ったものであるのか、という視点での批判もある。治水についても、ダムによる治水にばかり依存するのではなく、旧来からあった輪中を有効活用して洪水被害に対処しようという意見もあり、国土交通省も具体的な検討を行いつつある。 こうした事から、流域住民の生命・財産の保護を取るか、自然保護を取るか、それは住民にとって本当に最適な選択肢かという、難しい決定を関係者は迫られている。両立が難しい為に、中立的な視点で当事者による公開・公正な議論が求められている。
※この「全国を巻き込んだ論争 - 長良川河口堰・徳山ダム -」の解説は、「木曽川」の解説の一部です。
「全国を巻き込んだ論争 - 長良川河口堰・徳山ダム -」を含む「木曽川」の記事については、「木曽川」の概要を参照ください。
- 全国を巻き込んだ論争 - 長良川河口堰・徳山ダム -のページへのリンク