偶発的事象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 06:31 UTC 版)
太陽系が銀河系を公転する過程において、ほかの恒星が偶発的に接近し、太陽系に破壊的な影響をもたらす可能性がある。ほかの恒星との近接遭遇は、オールトの雲に属する彗星の近日点距離を著しく減少させる(オールトの雲は太陽の0.5光年以内の軌道を回る、氷の天体群による球殻状の領域)。その結果、恒星の接近によって内太陽系に到達する彗星の数が40倍に増加する可能性がある。彗星の地球への衝突は、地球上の生命が大量絶滅する引き金になり得る。破壊的な影響をもたらす恒星の接近は、4500万年に1回の平均頻度で発生する。太陽と、太陽近傍に存在するほかの恒星との衝突が発生する平均間隔は、およそ3 × 1013 年(30兆年)であるが、これは天の川銀河の推定年齢(1.3 × 1010歳)よりもはるかに長く、そのような事象が地球の一生において起こる確率の低さを示している。 直径5–10 km (3.1–6.2 mi)以上の小惑星または彗星の衝突によるエネルギーは、地球規模の環境災害(英語版)を引き起こすのに十分であり、種の絶滅に統計学的に有意な増加をもたらす。大規模な衝突により散乱する細かいちりの雲は、地球を覆い隠し、1週間のうちに地表温度を約15 °C (27 °F)低下させ、光合成も数ヶ月にわたって中断される。大規模な天体の衝突が発生する平均間隔は、最低でも推定1億年である。シミュレーションでは、このような衝突頻度は過去5億4000万年間において5 - 6回の大量絶滅と、それよりも深刻度の低い20 - 30の事象を引き起こしたとされる。この数字は、顕生代における大規模絶滅の地質記録と一致する。天体の衝突による災害は未来においても継続すると見られている。 超新星は恒星の劇的な爆発であり、天の川銀河においては超新星爆発が40年に1度の平均頻度で発生している。地球史上では、多数の超新星爆発が100光年以内の距離で発生してきた可能性が高い。地球から100光年以内での超新星爆発は、放射性同位体で地球を汚染し、生物圏に影響を与える場合がある。超新星が発するガンマ線は大気中の窒素と反応し、亜酸化窒素を生成する。亜酸化窒素の発生は、太陽の紫外線から地上を保護しているオゾン層の破壊を引き起こす。UV-B紫外線が10 - 30パーセント増加するだけで、地球上の生命(特に、海洋食物連鎖の土台をなす植物プランクトン)は甚大な影響を受けることとなる。地球から26光年の距離での超新星爆発はオゾンの柱密度を半減させる。地球から32光年以内の距離での超新星爆発は、数億年に1度の平均頻度で発生しており、数世紀にわたって持続するオゾン層の減少が引き起こされている。今後の20億年間で、地球の生物圏へ大きな影響を与えるような超新星爆発は約20回、ガンマ線バーストは1回発生することが予測される。 徐々に増加する惑星間の重力摂動の影響は、長期間にわたる内太陽系全体のカオス的振る舞いを引き起こす。数百万年以下の期間においては、この現象が太陽系の安定性(英語版)に大きな影響をおよぼすことはないが、数十億年という期間においては太陽系の惑星軌道が予測不可能になる。太陽系の進化のコンピュータシミュレーションでは、今後の50億年間で地球とほかの惑星(水星、金星または火星)の衝突が起こる確率は小さい(1パーセント未満)ことが示唆されている。同じ期間において、通過する恒星の重力によって地球が太陽系から投げ出される確率は約10万分の1である。それが実際に起こった場合、海洋は数百万年以内に凍結し、わずかな液体の水が地下14 km (8.7 mi)に残されることとなる。凍結するかわりに、地球が通過する連星系の軌道に乗り、生物圏が無傷で保たれる可能性もわずかながら存在する。その確率は約300万分の1である。
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