太陽系の安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:03 UTC 版)
太陽系惑星の軌道が長期的に安定して保たれるかという太陽系の安定性(英語版)の問題はアイザック・ニュートン以来研究されてきた。ニュートンは太陽系は不安定であると考えていた。 blind Fate could never make all the Planets move one and the same way in Orbs concentrick, some inconsiderable Irregularities excepted, which may have risen from the mutual Actions of Comets and Planets upon one another, and which will be apt to increase, till this System wants a Reformation. Such a wonderful Uniformity in the Planetary System must be allowed the Effect of Choice. (盲目の運命はすべての惑星を同心円状の軌道上を同じように動かすことはできない。彗星や惑星の相互作用から生じると考えられるわずかな不規則性は増大しつづけ、終には再構築が必要になるだろう。惑星系の驚くべき一様性は神による選択の帰結でなければならない。) — アイザック・ニュートン、Opticks (1706) ラグランジュらによる摂動論の研究を経て、ラプラスは1776年に永年摂動の1次の範囲では惑星の軌道長半径は時間変化せず安定であることを示した。シメオン・ドニ・ポアソンはラプラスの結果を拡張し、1808年に2次摂動の範囲でも軌道長半径は永年不変量であることを示した。しかしユルバン・ルヴェリエは1840年から41年にかけて、長期間の軌道進化では高次の摂動が重要であり、摂動の低次の項だけに基づくラプラスらによる安定性の証明は信頼できないと指摘した(同時に小分母の問題にも言及している)。アンリ・ポアンカレはルヴェリエの問題提起を受けて、1880年代に惑星系の軌道は解析的な解の表示が存在しないこと(ポアンカレの定理)、そして問題の摂動級数は一般に発散することを証明した。1960年代のコルモゴロフらによるKAM理論は近可積分系の大部分の軌道は摂動が十分に小さければトーラス上の準周期解となることを示しており、太陽系の安定性をこの路線で証明する研究が行われた。 一方で、1950年頃からは電子計算機による太陽系の長時間高精度シミュレーションが行われるようになった。初期のものとしては1951年の W. J. Eckert らによる5惑星シミュレーションがある。Laskar は1989年の論文でシミュレーションの結果リャプノフ時間500万年で不安定化すると主張した。しかしリャプノフの意味での不安定性にもかかわらず、伊藤孝士と谷川清隆は±40億年のシミュレーションでは惑星軌道は安定に存在し続けたと報告している。太陽系の安定性に関する一般的な理論は2009年現在未だ存在しない。
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