レバノン空軍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 01:58 UTC 版)
レバノン空軍は、1982年のイスラエル軍によるレバノン侵攻時に壊滅状態に陥った。山岳戦争でハンターが支援攻撃を行なって以降は、長らく実質的な防空能力を有していない。現在は第一線での使用に堪える戦闘機はなく、1950年代に開発された旧式のハンター戦闘機及びその複座型(OCU:作戦転換訓練用)が対地攻撃機として少数運用されていたが、2014年に退役した。その外、SA-342「ガゼル」戦闘ヘリが2~7機保管されている。以前はミラージュIII戦闘機も運用していたが、退役してパキスタンに売却された。 内戦の勃発した1975年に数機のハンターがイスラム教左派勢力に空爆を加え、同派やPLOによるベイルート郊外の大統領府の包囲網を一時的に破り、当時のスレイマーン・フランジーエ大統領をマロン派キリスト教徒の中心地であるジュニエに無事避難させた。 1982年のレバノン戦争後、本来の基地であるラヤークがシリア国内の長距離砲の射程圏内にあり、また、ベイルートは左派民兵やパレスチナ組織の支配地域であった南ベイルートに位置していたため、ハンターはジュニエ地区の高速道路を滑走路に改造した仮基地に避難した(現在は撤去)。この仮基地建設にはアメリカ海兵隊が協力したといわれる。 1982年に「山岳戦争」において同じくハンターを対地攻撃にジュニエから出動させたが、イスラム教左派勢力やシリア軍によって数機が撃墜され、一部の被弾した機体はキプロスに不時着した。 2007年、レバノン北部で反乱が発生した際には、同空軍はUH-1に(本来はハンター用とみられる)無誘導爆弾を搭載させ、反乱勢力の拠点への攻撃任務に従事させた。 現在稼動しているのはヘリコプターが中心であり、SA342、UH-1「イロコイ」多目的ヘリ×15機、アグスタウェストランドAW139要人輸送ヘリ×少数機、シコルスキー S-61消防ヘリ×少数機、ロビンソンR-44ヘリ×4機(2005年導入、練習用)などである。防空よりも兵員輸送や民生活動(山火事の消火活動など)に力を入れている。陸軍には空中機動部隊がある事から、小規模なヘリボーン作戦も実施されている。 上記のとおり、長らく防空能力を欠いていたが2008年にロシアがロシア空軍から中古のMiG-29を10機無償供与すると表明した。しかし2010年2月27日にレバノン政府はMiG-29の受領を辞退し、代わりに10機のMi-24攻撃ヘリコプターを発注した。 このほか、アメリカからヘルファイア対戦車ミサイルで武装可能なセスナ208(AC-208)が国境監視や輸送用として1機導入されている。
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