リニューアルと命名権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/11 07:26 UTC 版)
「京都市美術館」の記事における「リニューアルと命名権」の解説
開館80周年にあたる2014年に、京都市は「京都市美術館将来構想」を策定した。翌年には「京都市美術館再整備基本計画」を策定し、公募型プロポーザルにより、応募者の中から青木淳・西澤徹夫設計共同体の案が選ばれた。リニューアル工事は休館後の2018年1月に始まり、2019年10月に竣工し、2019年11月には報道陣や美術関係者や一般市民に対する公開が行われた。 この案では、もともとの建物にあったものの見失われていた東西軸(神宮道に面した西側の広場から、西玄関、中央の大陳列室、東玄関、その東にある東山を背景にした日本庭園に至る軸線)が強調されるなど、長年の使用により使われなくなっていた空間の可能性を発掘しようとした。また、観客の動線が大幅に刷新された。 まず玄関周辺にミュージアムカフェやミュージアムショップなどの開かれた施設を置くために、西側広場を掘り込んでスロープ状の広場「京セラスクエア」に変え、掘り込みであらわになった従来の玄関の下側の地下一階部分にガラスをはめて、新玄関やカフェ・ミュージアムショップなどからなる「ガラス・リボン」という空間を作り出した。観客は地下一階から入り、かつての地下下足室だった空間から新設の大階段を経て中央ホール(旧大陳列室)に入る。この中央ホールが館内各所へのハブとなる。本館の北側(北回廊)が企画展・公募展などに使われ、南回廊1階にはこれまでなかった美術館コレクションの常設展示室(1,000平方メートル)が設けられる。館内にある、開館以来の装飾などはほぼそのまま残り、美術館の歴史を継承する。南北にある中庭が設備機器に占拠され非公開になっていたのを改め、南中庭を復元し「天の中庭」とし、北中庭はガラス天井を張った吹き抜け空間「光の広間」にした。ここはパーティーやイベント等に使用される。美術館の北東側にあった、川崎清による設計の収蔵棟は、新たな設備室および現代美術に対応する1,000平方メートル規模の新展示室、収蔵庫、オフィス等を収容した新館「東山キューブ」として改装され、屋上庭園が設けられている。その外側に広がる日本庭園は、第4回内国勧業博覧会会場跡の岡崎公園に、明治42年(1909年)に作られた京都市商品陳列所の庭園として七代目小川治兵衛(植治)が作庭したもので、京都市美術館建設のために京都市商品陳列館が撤去された際に庭園は残されて現在に至っている。 一方、新館建設などリニューアルを実施するのに合わせ、京都市は2016年9月1日から30日にかけ、費用の獲得と愛称を決める目的で命名権の募集を実施したが、市民団体や有識者などからは「公共の文化財に一企業の名称が被るのは相応しくない」などの異論が出ている。同年10月6日、京都市は同市伏見区に本社を置く京セラに命名権を売却すると発表した。再オープン時から「京都市京セラ美術館」の名称が用いられる。 命名権料は、再オープン時から50年契約の総額50億円(消費税別)で、2017年度から2019年度に3回に分けて支払われる。これによりリニューアルにかかる整備事業費のおよそ半額が賄われる。
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