プラズマの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/23 02:49 UTC 版)
気体の温度を上げて行くと構成する中性分子が電離してプラズマになる。この際、固体、液体、気体間の相転移とは異なって、気体からプラズマへの転移は徐々に起こり、電離度が非常に低くて構成分子の1%が電離しただけでも充分にプラズマの性質を示す。そのためプラズマは「物質の第四態」といっても、それは物質の三態とは大分異なった意味合いを持っている。 電離度はサハの電離公式によって評価される。電離度が低く、中性分子が大部分を占めるプラズマを弱電離プラズマ (weakly ionized plasma)、もしくは低温プラズマ (cold plasma) という。身近なプラズマは大部分がこれに属する。イオンと電子とでは質量が極端に違っていて衝突してもエネルギー交換が起こりにくいので、弱電離プラズマではイオンと電子とが別々の温度をもつのが普通である。そしてイオン温度は室温に近く、電子温度は数千度であることが多い。 温度をさらに上げるとついには中性分子がすべて電離し、イオンと電子だけで構成されるプラズマになる。この状態のプラズマを完全電離プラズマ (fully ionized plasma)、もしくは高温プラズマ (hot plasma) と言う。このとき電子温度は数万度以上になり、イオン温度もそれなりに高くなっている。熱核融合炉をつくる研究では燃料である重水素イオンに核融合反応を起こさせるため、イオン温度を10keV(1億度)程度にまで上げる。この状態のプラズマを核融合プラズマということもある。 その他 通常のプラズマの定義からは外れるが、その延長として研究されているものに次のものがある。 ダストプラズマ 中に多数のμm程度の巨視的大きさをもった微粒子(ダスト)を浮かべたプラズマがあり、これをダストプラズマ (dusty plasma)、もしくは微粒子プラズマという。そこではこれらの微粒子が多数の電子を付着して大きな負の電気を帯び、微粒子系に着目するとそれが強結合系になって自己組織化などの興味深い現象をひきおこしたりするので、近年 注目されて盛んに研究されている。記事ダストプラズマを参照。 非中性プラズマ ミラー閉じ込めの原理を用いた荷電粒子の磁場閉じ込めにより、電気的中性から大きく外れたプラズマを、極端な場合には電子だけを蓄積して閉じ込めることができる。このようなプラズマを非中性プラズマという。 固体プラズマ 半導体中の伝導電子と空孔もプラズマ中の電子とイオンとに似た振る舞いをして、プラズマ振動を起こしたりする。この観点で見たとき、それを固体プラズマと呼ぶ。
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プラズマの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/26 15:58 UTC 版)
ここでは、プラズマの種類を区別するための基準をいくつか示す。 電離度 電離度が低く、電気的に中性な分子が大部分を占めるプラズマを弱電離プラズマ (weakly ionized plasma) 、もしくは低温プラズマ (cold plasma) と呼ぶ。一方、電離度が1となり、イオンと電子だけで構成されるプラズマを完全電離プラズマ (fully ionized plasma) 、もしくは高温プラズマ (hot plasma) と呼ぶ。電離度はサハの電離公式から計算できる。 圧力や粒子密度 大気圧下で発生させたプラズマを大気圧プラズマ、真空中で発生させたプラズマを真空プラズマ、もしくは低圧プラズマと呼ぶ。 大域的な磁場の有無 大域的な磁場がある系を磁化プラズマ (Magnetized plasma) 、大域的な磁場がない系を非磁化プラズマ(Unmagnetized plasma)と呼ぶ。磁化プラズマでは、プラズマ粒子は磁力線の周りをサイクロトロン運動し、磁力線に垂直な方向の移動は制限される。このため、磁力線に対して平行方向の温度と、垂直方向の温度は異なることがあるほか、誘電率はテンソルとなる。 近似の程度 プラズマを荷電粒子からなる多体系と捉える場合をプラズマの粒子モデルと呼ぶ。プラズマ粒子のクーロン衝突やサイクロトロン運動が粒子モデルによる記述である。また、プラズマ粒子の速度を分布関数によって近似する場合を運動論的モデルと呼ぶ。さらに、プラズマの速度分布関数がマクスウェル分布であると仮定できる場合を流体モデルと呼ぶ。最後に、イオン流体と電子流体を結合して一体の流体として扱う場合を磁気流体力学 (Magnetohydrodynamics, MHD) モデルと呼ぶ。 電気的中性の有無 等量の正電荷と負電荷から構成され電気的に中性なプラズマを中性プラズマ、正または負どちらか一方のみの荷電粒子から構成されたプラズマを非中性プラズマと呼ぶ。ソレノイドコイルによる一様磁場と、複数のリング電極による静電場から構成される電磁場配位を用いれば、電子プラズマの閉じ込めができる。このようにして集めた電子プラズマを減速材として用いて、陽電子を捕獲して蓄積することで、反物質プラズマを大量に生成できる可能性がある。 熱エネルギーとクーロンエネルギーの比 粒子間のクーロンエネルギーに比べて熱エネルギーの大きいプラズマを弱結合プラズマ、そうでない場合を強結合プラズマと呼ぶ。強結合プラズマは、プラズマが自由に動くことができない状態であり液体状態に相当する。宇宙空間では白色矮星の内部などに存在し、プラズマ密度は固体密度を大きく越える。実験室内においては、固体中の伝導電子(固体プラズマ)、電解質、微粒子プラズマが強結合プラズマに含まれる。微粒子プラズマのクーロン結晶化の研究が進められており、産業への応用も期待されている。 量子化の有無 プラズマ振動を量子化したものはプラズモンと呼ばれる。
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