クーロン結晶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/21 06:28 UTC 版)
ダストプラズマ中で Γd* ≪ 1 ならば微粒子の熱エネルギーが相互作用エネルギーより充分に大きいので、微粒子は自由に飛び回り、「気体」になぞらえられる。それに対し、Γd* が 1 を越えると相互作用が熱運動に勝り、微粒子間に何らかの秩序が生じて「液体」になったと見なせる。Γd* がさらに大きくなると、条件によっては微粒子は格子状に配列して結晶をつくり、「固体」になる。これをクーロン結晶と言う。 通常の分子では分子間力は遠くでは引力、近くでは斥力であり、その中間にポテンシャル最小の距離がある。そこで隣り合った分子はこの距離で並ぼうとして、それを分子間隔とする結晶をつくる。ダストプラズマでは微粒子間の力は斥力だけなので、その機構による結晶は出来ない。しかし、ダストプラズマでは微粒子は外へ出ようとすると、プラズマ内で全体の電気的中性を保つために発生する電場により引き戻される。 こうして微粒子はプラズマ内に閉じ込められ、微粒子系の体積は限定される。そこでその中でポテンシャルエネルギー最小の状態として、微粒子がほぼ等間隔で並ぶ結晶が出来ると考えられる。 実験ではメタンプラズマ中に発生・生長する水素化アモルファスカーボンの球形微粒子(粒径 3 μm まで)などが用いられている。そして粒子間隔が 102 μm より広いきれいなクーロン結晶が得られ、CCDカメラにより容易に観察・計測される。 ダストプラズマ中で観察されたクーロン結晶の構造としてこれまで報告されたものには、BCC構造(体心立方格子)、FCC構造(面心立方格子)、六方最密格子、単純六方格子などがある。そして単純六方格子のクーロン結晶が圧力を徐々に低下させていくと次第に溶融し、乱雑な液体へと移行していく様子も観察されている。これらの構造の差はクーロン結合パラメタ Γ と遮蔽パラメタ κ = a {\displaystyle a} d/λD の値によって定まっているようである。 分子動力学シミュレーションによって、Γ−κ 平面上で固相(BCC、FCC)、液相の3つの相のそれぞれの存在領域を示す相図も得られている。
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