ヒンドゥー教石窟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 08:54 UTC 版)
ヒンドゥー教石窟は7世紀頃から作られ始めた。これらのヒンドゥー教石窟は掘削技術と美術的観点の二つの面からいくつかの異なる様式を見出すことができる。これらの石窟は上から下に掘られているものが多い。いくつかの石窟寺院は非常に複雑で、その完成には数世代の期間を要したと思われる。 第16窟はカイラーサナータ寺院(Kailasanatha Temple)、あるいはカイラーサ寺院(Kailasa Temple)と呼ばれ、エローラで最も重要な石窟寺院である。エローラすなわちカイラーサナータ寺院と思っている人もいるほどエローラを代表する石窟である。 この巨大な『彫刻』は、ラーシュトラクータ朝の君主クリシュナ1世(位756年 - 775年)の命により、カイラス山(須弥山、ヒンドゥー教ではシヴァ神が住むとされる)をイメージして掘られたものと考えられている。クリシュナ1世は、パッタダカルのバーダーミのチャールキヤ朝の建築をモデルにしつつ、岩山から寺院を彫りだすアイディアは、パッラヴァ朝のマハーバリプラムの「ラタ」にヒントを得て、それを凌駕しようとする寺院を造り出すことでシヴァ神を祀り、王朝の権威を示そうとするものであった。 カイラーサナータ寺院はアテネのパルテノン神殿の倍ほどの規模があり、石窟と言うより一つの高層建築物にしか見えないが、紛れもなく一つの岩から掘られたものである。カンボジアのアンコール・ワットやインドネシアのボロブドゥール遺跡も同じくカイラス山をイメージして作られたものだと言われている。 全ての彫刻は2階以上の階層にある。2階層の出入り口はU型の中庭になっている。その中庭は彫刻のある3階層の回廊によって縁取られている。その回廊は巨大な彫刻パネルによって区切られており、それは様々な神の巨大な彫刻を含む一つの女性器像になっている。もともとはこの回廊は中央の寺院といくつかの空中回廊によって結ばれていた。これらの空中回廊は今は崩れて無くなっている。 この中庭には二つの巨大彫刻がある。一つは伝統的なシヴァ寺院によく見られるように、神聖な雄のナンディー(Nandi シヴァの乗り物である牝牛)の像が中央寺院のリンガに面するようになっている。第16窟では、このナンディー・マンダプ(Nandi Mandap)と中央寺院(シヴァ寺院)はそれぞれ約7mの高さがあり、2つの階層により構成されている。ナンディー・マンダプの低い方の階層は2重構造をしており、精巧で絵画的な彫刻により装飾されている。寺院の土台は象が建物を支えているような彫刻になっている。 岩の空中回廊は、ナンディー・マンダプと中央寺院の玄関を結んでいるものだけが現存している。中央寺院は南インドでよく見られるピラミッド型の構造をしている。神殿は列柱、窓、内室と外室と、階段状のホール、巨大なリンガを備えている。そして、小室、壁、窓、神像の収められた神棚、ミトゥナ象(Mithunas エロチックな男女像)、その他の像などが岩を掘り出すことによって作られ、空間を埋めつくしている。さらに、入り口の右側にはヴィシュヌ派の信者ら(Vaishnavaites)、左にはシヴァ派の信者ら(Shaivaite)の象が作りこまれている。 中庭には2つのDhvajastambhas(旗竿付きの柱)がある。これらのカイラス山を持ち上げようとしているラーヴァナの壮大な彫刻は、インド芸術における記念碑的存在である。 この『石窟』を作るには、20万トンの岩を掘り出し、100年の歳月を必要としたという。 第15窟ダシャ・アヴァターラ窟(Dasa Avatara)も印象的なヒンドゥー石窟である。広い中庭にはカイラーサナータと同じく露出した神殿がある。中には何も無いが、透かし彫りの窓があり、これも岩盤から彫り出された地球の一部である。中庭の周りにはマンションのような石窟がぐるりと囲み、ここには10柱のヴィシュヌ神の化身と雄牛の像、シヴァ神の像がある。 第21窟ラメーシュワラ窟(Ramesvara)には入り口に女神の川が掘り込まれている。 第29窟デゥマル・レーナ(Dhumar Lena)も印象的な石窟である。ヒンドゥー石窟としては最も西にある石窟である。この窟は丘の尾根の部分に作られており、大きな入り口が2つある。片方は川に面しており、テラス状になっている。もう片方は岩盤の大きな割れ間に通じており、いくつかの彫像が配置されている。青空の下にある他の石窟の入り口と違って、非常に神秘的な雰囲気がある。 石窟の内部は広く、特に天井が高い。この大きな空間に巨大なヒンドゥーの神々の立像が配置されている。
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