テレビにおける物真似芸
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テレビ時代の1960年代後半から70年代にかけての「歌真似」は歌唱力の卓越した歌手が演じるのが一般的で、水原弘の勝新太郎、三田明の森進一・橋幸夫、美川憲一のピーター、森昌子の都はるみなど、『象印スターものまね大合戦』で数多くの物真似が披露された。声質の似た者を誰に物真似させるか、その仕掛人は、同番組のバックを務めていたバンド「東京パンチョス」のリーダー、チャーリー石黒であった。一方「声帯模写」の分野では数々の演芸番組で桜井長一郎、江戸家猫八、佐々木つとむといった名手たちが至芸を披露した。 1980年代以降、テレビでのビジュアルを意識し、本人に似せた派手な衣装や扮装でオーバーな演技・歌唱を見せる物真似スタイルが広まった。このような演出はテレビ放映を前提とした芸であり、従前の物真似とは本質的に異質なものとみるのが正確である。本人登場というお遊びもよく行われる他、内田裕也のモノマネの場合、本人ではなく安岡力也が登場するといったケースもある。 旧来の形態模写と一線を画したビジュアル面の物真似を広めたのはコロッケである。コロッケは漫才ブームに付随して起こったお笑いブームの時期にメジャーシーンに登場。主として人気歌手の物真似を行っていたが、当初は声(歌)は真似せず(バックに真似する歌手のレコード音声を流す)、徹底的に顔や振り付けや態度や服装といったビジュアル面の物真似を行って人気を博した。これは「歌手の真似イコール声帯模写」という旧来の概念を打ち破るもので(形態だけ真似することは邪道との声もあった)、コロッケのビジュアル物真似は他に大きな影響を与えたと言える。コロッケは後に声帯模写の技術も身に付けたが、初期にはステージでも全く話さない(生声を聞かせるとイメージが壊れる)という芸風だった。当時のコロッケが得意としたのはちあきなおみ、岩崎宏美、野口五郎といった歌手だが、いずれも本人の顔の表情や振り付けをオーバーにカリカチュアする(野口五郎のように鼻をほじるなど、おふざけに偏ることもあった)ことにより、本物のパフォーマンスよりコロッケの物真似の方が印象に残るような結果になっている。 よく真似された有名人は、男性だとビートたけし・アントニオ猪木・えなりかずき・大滝秀治・武田鉄矢・森進一・桑田佳祐・板東英二・平泉成など、女性だと浜崎あゆみ・仲間由紀恵・ローラなどである。芸能人の中でも、例えばビートたけしのように声質や話し方に特徴がある者や、デーモン閣下のように顔貌や衣装などの外見的特徴がある者など、もともとオーバーな特徴を持つ者を題材に用いることが多い。美川憲一はコロッケの物真似の題材にされたことで本人も人気を復活させ、コロッケに感謝の意を表したことがある。清水アキラとキンタロー。は元の人物とかけ離れ変な部分やオーバーなおふざけをしたり下ネタを入れる部分で本人やファンに嫌われる傾向が強く、淡谷のり子が下ネタに嫌悪感を表しているほか、松村邦洋も「モノマネ芸は素晴らしいが下ネタに力を入れすぎ」と評している。2000年代以降はコージー冨田・原口あきまさ等、有名人の口癖や出演作品のワンシーン等、場面を切り取ったモノマネを得意とするタレントが多くなっている。 また、武田鉄矢(三又又三)、萩原流行(神奈月)、浜田雅功(山本高広)、野村沙知代(上島竜兵)など本人からの評判はイマイチでも親族や友人が絶賛したため、受け入れた事例もある。
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