ソウル駅旧駅舎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 01:56 UTC 版)
現在役割を終えて保存されている旧駅舎は、1925年9月30日に竣工した。設計は東京帝国大学教授・塚本靖によるもので、ルツェルン駅(ドイツ語版)を手本としたと伝わる。なお、アムステルダム中央駅(ペトルス・カイペルス設計)とヘルシンキ中央駅(エリエル・サーリネン設計)が参考となったといわれているが誤りである。 1917年から1925年まで朝鮮総督府鉄道を運営していた南満州鉄道株式会社は、日本・朝鮮・満州を結ぶ国際列車が発着する駅にふさわしい国際的なレベルの駅舎を目指していた。駅舎の工事は1922年6月に始まり、1924年に完成予定であったが、1923年の関東大震災の影響で工期が延び、工費も減額された。 建築規模は、地上2階地下1階、延床面積6,631m2で当時としては大型建築物であり、2階に貴賓室と食堂、1階に待合室など、地下に駅事務室があった。1階の待合室の中央には大きなホールがあり、その上部の屋根にはビザンチン風のドームがあった。そのドームの側面にある半円アーチの窓から中央ホールの内部に自然光を引き込んで、明るい空間を形成していた。建物は鉄筋コンクリート造のレンガ組みで、屋根は鉄骨造で天然スレートおよび銅板を敷いて仕上げていた。 旧駅舎は1950年の朝鮮戦争で損傷を受け、修理の過程でコンコースの天窓の意匠が変更された。1958年1月には駅舎南側に特急列車の待合室が増設された。旧駅舎は、戦後の韓国では、同時期完成の朝鮮総督府庁舎とともに日本帝国による朝鮮搾取のために建設された代表的な建築物とされていたが、歴史的に重要な建物であることから、1981年8月25日に大韓民国の史跡第284号に指定された。 1988年のソウルオリンピックに合わせた橋上駅舎の完成で駅機能の多くが旧駅舎から移転した。さらに、2003年に旧駅舎南側に新駅舎が完成した後は駅舎としての役割を終えた。旧駅舎は当初、鉄道文化財団によりシネマテークなど各種の文化施設として用途転用される予定だったが、史蹟284号に指定されているソウル駅を原型保存すべきとする文化財庁は韓国鉄道公社に所有権の移転を要求し、2006年に文化財庁に所有権が移転され、2007年7月には文化観光部によって、いわゆる「複合文化空間」への転換が発表された。 旧駅舎は、2009年4月に改修工事を開始し、2011年8月9日に「文化駅ソウル284」という、ソウル駅の歴史などの展示を中心とする複合文化空間としてオープンした。これに合わせ、韓国の文化観光体育部(2008年に改称)は2008年9月から11月15日まで、最優秀に1400万ウォンなどの賞金を用意し、ソウル駅にまつわる逸話や資料の収集を行った。 2017年11月28日に京義線電鉄のホームの移転により、駅舎としての利用を再開する。
※この「ソウル駅旧駅舎」の解説は、「ソウル駅」の解説の一部です。
「ソウル駅旧駅舎」を含む「ソウル駅」の記事については、「ソウル駅」の概要を参照ください。
- ソウル駅旧駅舎のページへのリンク