ゲート式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 03:50 UTC 版)
ゲート式発馬機 (starting gate) はゲートを張ることによってスタートラインを仕切り、発走前に馬が越えることを防ぐことを目的とした装置である。スターティングゲート、または単にゲートとも呼ばれ、現在の平地競走などにおいて主流を占める発馬機である。イギリスではそれ以前のゲート(バリヤー)と区別して、スターティングストール (starting stall) という呼称も使われている。 多くは電磁石や金具などで開扉する機構を持つ、可搬式のゲートを使用する。枠で仕切ったゲート内に出走馬を佇立させスターターの制御によってそれぞれの枠の扉が一斉に開き、それをもって発走の合図としている。バリヤー式の欠点を解消した発馬方法であるが馬には本質的に狭所を嫌う性質があるため、ゲートに入れるための調教が必要となる。また調教により枠入りできるようになっても環境が異なる実際の競走の段では難渋し、最悪の場合には発走除外の措置となったケースも存在する。気性の極めて激しい馬の場合にはこのゲート入りがどうしても解決できずに、結果として競走馬失格となる場合も見受けられる。 電動式のスターティングゲートが最初に導入されたのはカナダにあるエキシビションパーク競馬場(現・ヘイスティングス競馬場)で、1939年7月1日に初のゲートによる発馬で競走が行われた。ゲート式発馬機を考案したのはエキシビジョンパークでスターターを務めていたクレイ・ピュエットで、発走に時間と手間がかかるというバリヤー式の欠点を解消するために製作した。 エキシビションパーク競馬場で公開されたのち、アメリカ合衆国の西海岸の競馬場を中心に導入するところが拡大していった。1940年代の終わりにはピュエットのゲートはほぼすべてのアメリカの競馬場で導入されるようになり、のちに全世界へと波及していった。イギリスにおいての導入は1965年7月8日が最初で、ニューマーケット競馬場のチェスターフィールドステークスで試験的に使用されて以来順次浸透していった。 ピュエットは自身の会社でゲートの製造を行っていたが1958年に事業を拡大して、アリゾナ州フェニックスにトゥルーセンターゲートという会社を興した。同社の製造するゲートの世界シェアは現在でも大きく、北アメリカのほとんどの競馬場で導入されているほか南アメリカやカリブ諸国、サウジアラビアの競馬場でも使われている。 ゲートは全馬が横一列に並ぶように設計されており、それぞれの仕切りの前後に扉が付けられている。競走馬はこの後ろの扉からゲート内に入り馬がゲートに収まったのが確認されると扉を手動で閉じ、馬を待機させる仕組みになっている。通常は前の扉は発走まで開くことはないが、ゲート入りを怖がる馬を誘導するために発走前に開く場合もある。 ゲート前方の扉はおもに電動式で開閉される。この扉は頑強に閉じられてはおらず馬が暴れた場合などには馬の力でも開けられるように設計されており、これによって馬や騎手が怪我をしにくくしている。ゲート内の全馬の準備が整ったとスターターにみなされるとスターターはボタンを押して前方の扉を開き、発馬される。北米で使用されている多くのゲートは発馬時にベルが鳴り、また同時に投票システムに投票締め切りの合図を送る仕組みとなっている。 バリヤー式に比べ、ゲート式には出走頭数の上限が制限されるという欠点がある。北米ではおもに12頭から14頭用のゲートが主流となっており、それより多頭数の競走では補助用ゲートが用意される。また、調教用などのためにより少頭数向けのゲートもある。
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