ガス気球の操縦法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/13 04:52 UTC 版)
ガス気球は水素、石炭ガス、ヘリウムガスなどの大量の浮揚ガスをガス注入口から気嚢に注入するが、可燃性ガスを使用する場合は周辺地域は禁煙はもとより火気厳禁の徹底が行なわれる。 ガスの注入の際にはまずガス気球の気嚢を広げ異常がないかを確認し、その上にバランスよく気嚢を覆う球状のネットを被せ、ネットの末端にある沢山のシュラウドラインに気嚢を囲むようにバラスト(おもり)を付けた上で気嚢の注入口にガスを入れて膨らます。 ガスの注入後はガス注入弁ロープを引くとガス注入弁が閉じられるので、気嚢とゴンドラを繋ぐためにシュラウドラインをゴンドラのバスケットリングに取り付ける。(無人でガス気球を飛ばすことのないように飛行前までゴンドラの側面に相当量のバラストを付けておく必要がある。) 乗り込む際には精密な高度計やバルーンパイロットのライセンス、必要に応じて無線機や携帯電話、GPSなどの航跡追跡装置などを搭載する。 またそれとは別に万一の際に気球の急上昇ができるようにするため、最低でも30kg程度のバラスト用の砂と、砂を少量ずつ落とすための小さいスコップ(園芸用こて)と、ナイフを持ち込む。 飛行後は、過大な浮力による急速な気球の上昇を止めるため、適切にガス排気ロープを引くと、引いた時だけガス排気口からガスが抜けて、上昇速度が押さえられる。また浮力が落ちた場合は、バラストの砂を落として気球本体の重さを軽くすると、浮力を上げることができる。(前述の1936年の事故の映像でも浮力を上げ、タワーを回避すべく激突前に砂を落とす様子が見られる) 気球を降下する場合は、ガスの排気とバラストの落下を行いながら、落下速度をコントロールし着地を行なう。 ガイドロープ(ドラッグライン)を落下させて地上に垂らすと、気球を一定の高度に保持させやすく、降下時も緩慢な着陸を行なうことができるが、地上にガイドロープの痕跡を残すデメリットもある。使う場合はガイドロープを固定している細いロープをナイフで切断し使用する。 なお、赤いロープのリップラインを引くと、気嚢の一部(リップパネル)が破れてガスが抜けるので、浮力が失われる。前方に高圧線があり衝突が予想される場合や、強風で着地後に気球本体が引きずられることを防ぐために、地上もしくは地上に近い高度でリップパネルが開かれる場合があるが、リップラインは容易に操作されないために手が届きにくい高所に取り付けられる。 ヨーロッパでは、1783年のジャック・シャルルの水素ガス気球による有人飛行以来、ガス気球による見世物飛行や気球による冒険飛行のチャールズ・グリーンが多くの一般人を無事故でガス気球に乗せた実績や、ガス気球によるゴードン・ベネット気球レースも行なわれるなど200年以上のガス気球の歴史があり、ドイツなどのヨーロッパでは熱気球クラブだけでなくガス気球クラブが多く存在し、一部でヘリウムガスに浮揚ガスを転換している団体もあるものの高価であることから、現在でも水素ガスを使用している団体もあるといわれる。 しかし日本では、第二次世界大戦以前に民間で気球を所有や搭乗できた一般人はほとんどいなかったことや、大戦後のプロパンガス容器の普及と熱気球の球皮の使用に耐えられる耐熱性の合成繊維が大量生産されたことから、民間レジャー用の乗用気球としては引火爆発の危険性のある水素や高価なヘリウムガスによるガス気球が普及することなく、1969年(昭和44年)9月27日の「イカロス5号」による日本初の熱気球の有人飛行が成功して以降、入手のしやすいプロパンガスを燃料とする熱気球が日本国内では主流となった。
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