カドミウム汚染米
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 06:59 UTC 版)
「中国産食品の安全性」の記事における「カドミウム汚染米」の解説
2002年に中国政府農業部の「コメおよびコメ製品品質監督検査試験センター」の抜き取り検査で、サンプル中国米に含まれていた重金属で基準値超過率は鉛28.4%、カドミウムが10.3%であった。 2007年の南京農業大学農業資源環境研究所の潘根興教授の調査では中国の6地区(華東、東北、華中、西南、華南、華北)のコメを無作為分析した結果、10%のコメに基準値を超えたカドミウムが含まれており、重金属汚染米は長江以南で生産される籼米(せんまいインディカ米)であり、湖南省、江西省は深刻な状況にあった。 中国のコメの年産量は約2億トンなので、カドミウム汚染米の量は2000万トンとなり、日本の米生産量882万トン(2007年)の約2.3倍にのぼる。カドミウム汚染米を食べた広西チワン族自治区桂林市陽朔県興坪鎮の思的村の住民には骨軟化症、腎機能の低下、筋力低下、骨の激痛を発症しており、これは日本でのカドミウム中毒によるイタイイタイ病と同様の症状である。この思的村では1960年以前からカドミウム汚染が存在していたとの調査報告もある。 2008年4月の潘根興教授の再調査では江西省、湖南省、広東省などの米の60%以上に基準値を超えるカドミウムが含まれていた。 中国南部の酸性土壌で「超級雑交稲(スーパー・ハイブリッド稲。袁隆平が開発した品種)」を栽培すると通常の稲に比べてカドミウムの吸収量が高まり、また土壌のカドミウム汚染が汚染米の根本的な原因とされた。 2008年以降に限っても、中国の環境汚染による事故は100件以上発生、ヒ素、カドミウム、鉛など重金属を原因とするものが30件を越え、2009年の湖南省瀏陽市のカドミウム中毒事件では、約500人がカドミウム中毒になり、2人が死亡した。 2010年には武漢大学環境法研究所の王樹義教授の調査でも重金属類による土壌汚染は深刻で、また中国科学院生態環境研究センターの調査では、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛など重金属汚染の影響を受けている面積は約2000万ヘクタールにおよび、中国の総耕地面積の約5分の1に及び、重金属類以外に農薬、抗生物質、病原菌などによる土壌汚染も進行している。 この汚染で中国全土で毎年1000万トン以上の穀物が減産になっている。 2010年2月3日、中国政府は土壌汚染防治法の公布準備を開始し、法案立案の専門家チームは「中国の現行の土壌汚染防止関連法規は、汚染の管理や改善に重点が置かれており、防止や予防が疎かになっていた」と指摘した。 2011年2月14日に中国で発行された週刊誌『新世紀週刊』で宮靖記者が「鎘米殺機(カドミウム米の殺意)」記事を掲載し、中国政府農業部や潘根興教授の調査にもとづくカドミウム汚染米が報道された。この記事は日本でも報道された。 財新網も中国国内で販売されている米の10%がカドミウムに汚染されていると報道。 工場排水による土壌汚染などが原因とみられるが、中国には重金属に汚染された土壌での栽培基準が存在していない。 北村豊によれば、中国の公害病は日本のかつての公害病よりもはるかに深刻であるが、中国政府は2011年2月時点で公害病の存在を公式に認めていない。 日本への中国米輸入は近年増加傾向にあり、2011年上半期には1万5484トンだったが、2012年上半期には3万5965トンにのぼり、輸入量は2.3倍になった(財務省統計)。イオングループ、イトーヨーカ堂などセブン&アイ・ホールディングス、ゼンショーホールディングスなどは中国米を取り扱う予定はないとした。 『週刊文春』2013年2月14日号によれば、2002年の日本を基準値とすると長江河口の汚染は、水銀244倍、鉛3500倍、ヒ素1495倍、カドミウム4.2倍となる。重金属以外でもBHCやDDTなどの有機塩素化合物などによる土壌汚染が指摘されている。 中華人民共和国環境保護部の推計では、重金属汚染食料は年間1200万トンに上る。中国の富裕層は中国国内の野菜を信用せず、日本の野菜を食べているのに対して、中国産野菜の日本への輸出は年々増加している。
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