カドミウム、鉛、ヒ素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/15 03:36 UTC 版)
「ファイトレメディエーション」の記事における「カドミウム、鉛、ヒ素」の解説
カドミウム、鉛、ヒ素は生物への強い毒性を持つが、植物の中にはこれらに耐性を持つものが存在し、汚染された土壌に耐性植物を植える事で根から有毒物質を吸収させて回収する方法が検討されている。 カドミウムは化学的形態によって植物の吸収効率が異なる。日本の土壌ではカドミウム濃度が高い傾向がある。現在、日本ではカドミウム含量0.4ppm以下の玄米しか食用では販売できない。 アブラナ科のセイヨウカラシナ(Brassica juncea)やグンバイナズナの一種のAlpine Penny-cress(Thlaspi caerulescens)は、重金属耐性であり、根から地上部に吸い上げる能力の高い高蓄積(Hyperaccumulator)植物として注目される。汚染地域で修復に用いられた例も報告されている。重金属を溶解させ植物の吸収を高めるためチオシアン酸アンモニウム塩の使用が試みられている。 これらの植物がなぜ重金属を高蓄積するのか、その機構はほとんど不明だが、取り込まれた重金属イオンが細胞内のファイトケラチン、リンゴ酸、クエン酸、ヒスチジンなどとキレート化合物を形成し、無毒化されると考えられている。なお、T. caerulescensには様々な耐性化機構があると知られる。例えば、T. caerulescensのトノプラスト(tonoplast:液胞膜)局在型の重金属ATPase 3(heavy metal ATPase 3)が、Cdなどの重金属耐性に直接関与することが判明している。 なお、耐性植物のほとんどはバイオマスが小さく一度に回収できる有毒物質の量が限られるといった問題がある。特に重金属に耐性が強く鉱脈の存在を示唆することから金山草としても知られるイヌワラビの一種のヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)やイノモトソウの一種のモエジマシダ(Pteris vittata)などは極めて強い重金属耐性を示すのだが、シダ植物であるため根系の発達が悪く、環境浄化には必ずしも適しない。土壌浄化植物として望まれる性質は以下の通り。 根系が良く発達し、土壌中から広く有害物質を吸収 地上部へ汚染物質を転流 地上部に高濃度で無毒な形で蓄積 高濃度で総量を多く蓄積 そこで、遺伝子組換えによる高バイオマス植物の有毒物質耐性の強化も試みられている。突然変異体の解析から、植物はファイトケラチンを有毒物質(カドミウム、鉛、ヒ素)と結合させて有毒性を抑えた後に液胞へと隔離する事がわかっており、これらの耐性機構の強化や、ファイトケラチンの前駆体であるグルタチオンと有毒物質(カドミウム、鉛)の複合体を液胞へと輸送するトランスポーターの導入などが既に試みられている。グルタチオンは、グルタミン酸とシステインからγ-グルタミルシステイン合成酵素によるγ-グルタミルシステインを経て、γ-グルタミルシステインとグリシンからグルタチオン合成酵素によって作られる。更に、複数のグルタチオンからファイトケラチン合成酵素によって作られる。そこで、前駆体であるシステインの合成を強化したり、γ-グルタミルシステイン合成酵素やグルタチオン合成酵素やファイトケラチン合成酵素の合成を促進して耐性強化が試みられている。
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