カウスリップとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 自然 > 生物 > 植物 > 植物 > カウスリップの意味・解説 

カウスリップ (黄花九輪桜)

Primula veris

Primula veris

Primula veris

Primula veris

Primula veris

Primula veris cv. Sunset Shades

Primula veris cv. Sunset Shades

イギリス地中海沿岸アジア南西部原産です。高さは2025センチほどになります4月から5月ごろ、真ん中オレンジ斑紋のある小さな黄色い花を咲かせます古くから去痰鎮静剤として、薬用使用されきました。「カウスリップ(Cowslip)」の名前は、アングロサクソン語の「牛糞(cu-sloppe)」に由来します。牛や羊の放牧地によく生えていたからとか。和名では「きばなくりんざくら(黄花九輪桜)」と呼ばれます写真中5・下は、園芸品種の「サンセットシェード(cv. Sunset Shades)」。
サクラソウ科サクラソウ属多年草で、学名Primula veris。英名は Cowslip, Key of heaven
サクラソウのほかの用語一覧
オカトラノオ:  沼虎尾  浜払子  草連玉
サクラソウ:  カウスリップ  プリムラ・アウリクラ  プリムラ・アリオニー  プリムラ・アルピコラ

キバナノクリンザクラ

(カウスリップ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 15:22 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
キバナノクリンザクラ
キバナノクリンザクラ(カウスリップ)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: ツツジ目 Ericales
: サクラソウ科 Primulaceae
: サクラソウ属 Primula
: キバナノクリンザクラ
P. veris
学名
Primula veris L. subsp. veris[1]
和名
キバナノクリンザクラ(黄花九輪桜)[2]
英名
cowslip
paigle[3]
key flower[4]
fairy cups[5] 等

キバナノクリンザクラ(黄花九輪桜、学名Primula veris[2]は、ヨーロッパから西アジアシベリア南部にかけて分布する、サクラソウ科サクラソウ属多年草。同属の模式種である[6]。英名はカウスリップ(cowslip)、ほか複数の異称がある。イギリスでは、早春に咲く代表的なサクラソウの仲間として親しまれると共に、花や若葉は食用花ハーブとして料理に用いられ、また民間薬としても利用されてきた。現在プリムラと総称されるサクラソウ属の園芸品種群の原種のひとつでもある[7]

リンネの『植物の種英語版』(1753年) で記載された植物の一つである[8]

特徴

オットー・ヴィルヘルム・トーメ著『ドイツ、オーストリア、スイスの植物』(1885年)より。
分布域

形態

葉は群がってロゼット状に根出し、長さ5~8cmの卵形~長楕円形[9][10]。葉の表面にはしわがあり、葉縁は波状でやや外側に巻き込み、不規則な細かい鋸歯がある[2][11]葉柄は太く、翼を持つ[2][3]。春から初夏にかけて、微毛のある高さ10~20cmの花茎を数本伸ばし、その頂点に多数の花序を散形につける[11]は釣鐘状で5つに浅く裂ける。花冠は筒状で先が5裂し、色は黄色で中心に赤い斑紋があるが、様々な色の園芸品種も存在する[2][11]。花は芳香を持つ[3]。冬は根茎が残り、先端に芽鱗をつけた状態で越冬する。[10]

分布

スカンディナヴィア半島北部・ロシア北部・地中海沿岸の一部を除く全ヨーロッパ大陸に分布。さらに東はウラル南部・シベリア南部まで、南はトルコ北東部・コーカサスイラン北部まで[10]。低地からおおよそ標高3,000mまで、草原や高原に広く分布するが[5][10]、現在は開発や過剰採取、除草剤の影響などにより以前ほどは見られなくなっている[5]

名称

和名キバナノクリンザクラ(黄花九輪桜)。「九輪」は、同じサクラソウ属のクリンソウ(九輪草)の場合は、直立する茎の周囲に花序が輪生しそれがいくつもの段を作る外観を、仏塔の頂上に設置される相輪の部品である九輪に見立てた命名であるが[12]、本種は茎の頂上に花序が輪生こそするものの、段を作って咲くことはない。クリンソウに似ていて花が黄色であることによる命名、とする文献もある[11]

英名のカウスリップ(cowslip)は、古英語の "cu-slyppe" に由来し、これは「牛の糞」の意である[5][13]。牛はこの草を食べず、また動物の糞が落ちた場所を好んで生えるわけでもないが、「牛の糞が落ちているような田舎道ならどこにでも生えている」という意味合いである[13]。その他、効能や伝承に基づいた様々な呼称があり、以下の節で述べる。

利用

『セシリ・パセリのわらべうた』中の、カウスリップワインを作る場面[注釈 1]

食用

柔らかい若葉や香気のある花は、春の野草としてサラダに加えられる[14]。花は乾燥させてハーブティに用いたり[3]砂糖漬けにしてケーキやデザートの装飾に用いたり[14]ジャムピクルスの香り付けに用いたりもする[3]。またイギリスでは、本種の花を大量に採取して自家製の「カウスリップワイン」を作る文化がある[14][15]。これはワインと呼ばれるものの、ブドウのワインに花の香り付けをしたフレーバードワインではなく、カウスリップの花からシロップを作り、それを発酵させて作る飲料である。イギリスの作家ビアトリクス・ポターによる絵本「ピーターラビット」シリーズの1冊『セシリ・パセリのわらべうた英語版』の中にも、ウサギのおかみさんがカウスリップワインを作る場面がある[14]

薬用

根と花は民間薬として用いられてきた歴史がある。鎮静・リラックスの効果があるとされ、神経系の症状に用いられた[5][16]不眠症の薬としてカウスリップティーが飲まれたほか[5]中風の薬に用いられたことから palsywort(麻痺の草)の異名もある[5][15]。美顔効果もあるとされ、かつては化粧品にも用いられた[17][18]。ただし、体質により皮膚炎を起こすことがあるという[3]

亜種・近縁種

左が本種(茎の全周から花序が出る)、右がセイタカサクラソウ(茎の片面に集中して花序が出る)。
亜種
  • Primula veris subsp. macrocalyx - 基本種に比べて丸みを帯びた葉に、毛の生えた大きな萼片と大きめの花を持つ[19]
  • Primula veris subsp. columnae - 葉は卵形で、葉裏に白い毛が生える。南ヨーロッパ~トルコ東北部の山岳地帯に自生する[19][10]
近縁種
  • イチゲサクラソウ英語版Primula vulgaris[20][21] - 別名イチゲコザクラ[22]。英名プリムローズ(primrose)[10]・イングリッシュプリムローズ[16][23]。ヨーロッパではカウスリップと並んで春を告げるサクラソウ属として知られる[13][15][21]。カウスリップ同様に、食用花やハーブとして用いられる[3]。また、エリザベス朝時代にカウスリップとの交配によって、プリムラ品種改良の起源ともなった[7]
  • セイタカサクラソウ英語版Primula elatior[24] - 英名オクスリップ(oxlip)[25]。同じくヨーロッパに普通に見られるサクラソウ属の一種。外見はカウスリップに似ているが、カウスリップの花序が茎の全周につくのに対し、オクスリップの花序は茎の一方向に集中するという点で区別できる[10](右写真参照)。カウスリップとの間に自然交雑種を生じることがある[6][26]
  • クリンザクラPrimula × polyantha[27] - プリムラ・ポリアンサ、ポリアンサス、ポリアンタ等の名称で販売される園芸品種。カウスリップ、プリムローズ、オクスリップ等の複数の種の交雑によって生み出された種である[7][16]

伝承・文化

聖ペトロイコン
聖カタリナ修道院蔵)
ペトロは伝統的に鍵を持った姿で描かれ、本種の花はペトロの鍵束に見立てられてきた。
シェイクスピアは『夏の夜の夢』の中で、妖精に擬人化してカウスリップの花を描いた。

春を告げる花

イチゲサクラソウなどの近縁種と共に、早春の草原に咲いて春を告げる花としての性格がある[13][15][21]ロシア語で Первоцвет(「初花」の意)と総称される、雪解け直後に咲く早春の代表的な花のひとつである[28][注釈 2]

鍵の花

茎の先端に鮮やかな黄色の花が下向きに密集している様をに見立てて、英語で key flower とも呼ばれる[4]北欧神話では、この花は美と豊穣の女神フレイヤに捧げられ、フレイヤの所有する宝殿の鍵を開く力があるとされた[5]。またキリスト教圏では、イエスから天国の鍵を授けられた使徒ペトロの伝承と結び付けられ、天国の入り口で鍵の管理をしていた聖ペトロがうっかり鍵の束を地上に落とし、その場所から生えた植物だと言われる[29]。ここから、英語で key of heaven の別称があり、またドイツ語でも Himmelsschlüssel (Himmel=天国、schlüssel=鍵)と呼ばれる[4][17]。古代スラヴにおいては、この花は地下に隠された秘宝の錠前を破壊する力がある魔法の植物 "Разрыв-трава"(ロシア語ラテン文字:raskovnik)のひとつとされた[30][31]

妖精の花

本種の釣鐘形の花は、小さな妖精の隠れ家に使われると考えられた[4]。このため、英語で fairy cups の異称がある[5]。花序に生じた斑点は、妖精が触った跡であるという[18][32]。またウィリアム・シェイクスピア喜劇夏の夜の夢』においては、妖精の台詞の中にカウスリップが登場する[33][34]

夏の夜の夢』第2幕第1場より
Fairy:
The cowslips tall her pensioners be;
In their gold coats spots you see;
Those be rubies, fairy favours,
In those freckles live their savours.
I must go seek some dewdrops here,
And hang a pearl in every cowslip's ear.
  
妖精:
のっぽのカウスリップは女王様の家来たち
金のコートに見える印は
ご寵愛の証のルビー
その斑点にはよい香り
私は露の滴を探して
カウスリップの耳たぶに真珠を掛けてやらなくちゃ

絵画

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ なお、この挿絵の場面で作っている飲料について、福音館書店刊行の日本語版では「ビール」と翻訳している。
  2. ^ ロシア語の Первоцвет はサクラソウ属全体を指す語でもある。

参照

  1. ^ Primula veris L. subsp. veris キバナノクリンザクラ”. 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList) (2012年5月11日). 2018年5月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e 原色世界植物大図鑑、218頁。
  3. ^ a b c d e f g ブレムネス、207頁。
  4. ^ a b c d スキナー、25頁。
  5. ^ a b c d e f g h i マッキンタイア、181頁。
  6. ^ a b 園芸植物大事典、289頁。
  7. ^ a b c 世界のプリムラ、134頁。
  8. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 142. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358161 
  9. ^ 牧野1996、370頁。
  10. ^ a b c d e f g 世界のプリムラ、143頁。
  11. ^ a b c d 新分類牧野日本植物図鑑、916頁。
  12. ^ 園芸植物大事典、282頁。
  13. ^ a b c d 北野、138頁。
  14. ^ a b c d 北野、140頁。
  15. ^ a b c d フリーマン、80頁。
  16. ^ a b c 世界有用植物事典、852頁。
  17. ^ a b フリーマン、81頁。
  18. ^ a b マッキンタイア、182頁。
  19. ^ a b フローラ、1083頁。
  20. ^ 原色世界植物大図鑑、128頁。
  21. ^ a b c 萩尾、150頁。
  22. ^ Primula vulgaris Huds. イチゲコザクラ”. 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList) (2012年5月10日). 2018年5月20日閲覧。
  23. ^ フローラ、1084頁。
  24. ^ Primula elatior (L.) Hill セイタカサクラソウ”. 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList) (2009年6月24日). 2018年5月20日閲覧。
  25. ^ 朝日百科、6-10頁。
  26. ^ 園芸植物大事典、281頁。
  27. ^ Primula x polyantha Hort. ex L.H.Bailey クリンザクラ”. 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList) (2009年6月24日). 2018年5月20日閲覧。
  28. ^ 狩野、381頁。
  29. ^ 北野、139頁。
  30. ^ 狩野、382頁。
  31. ^ 狩野、425頁。
  32. ^ スキナー、24頁。
  33. ^ 安部、93頁。
  34. ^ 金城、50頁。

参考文献


カウスリップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 02:35 UTC 版)

ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の記事における「カウスリップ」の解説

ヘイズル達を自らの招待したウサギ

※この「カウスリップ」の解説は、「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の解説の一部です。
「カウスリップ」を含む「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の記事については、「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「カウスリップ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カウスリップ」の関連用語

カウスリップのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カウスリップのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ボタニックガーデンボタニックガーデン
Copyright 2001-2025 shu(^^). All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのキバナノクリンザクラ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのウォーターシップ・ダウンのうさぎたち (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS