アメリカ合衆国の協定離脱宣言と復帰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 04:26 UTC 版)
「パリ協定 (気候変動)」の記事における「アメリカ合衆国の協定離脱宣言と復帰」の解説
2017年6月1日に第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプは「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのにアメリカは何十億ドルも払う不公平な協定だ」としてアメリカがパリ協定から離脱すると表明した。これに対してアメリカ国内・日本・ヨーロッパをはじめとする世界各国は反発し、トランプの前任者で中国とともにパリ協定を主導した元大統領バラク・オバマは「地球の未来を拒否する一握りの国に加わった」と非難した。 フランス大統領エマニュエル・マクロンは「アメリカの離脱は大きな間違い」とトランプを批判し、トランプ政権がスローガンとして掲げる「アメリカを再び偉大にしよう("Make America Great Again")」を皮肉って「私たちの惑星を再び偉大にしよう("Make Our Planet Great Again")」とパリ協定の重要性を訴えた。またドイツ・イタリアの首脳と連携して「アメリカとの再交渉を拒否する」との声明を発表した。 日本の麻生太郎副総理兼財務大臣も事例として「かつての第一次世界大戦後にウッドロウ・ウィルソン大統領が創設を提唱しながらその肝心のアメリカが国際連盟に加入しなかった」という歴史上の出来事を引き合いに「その程度の国」とトランプ政権を非難するコメントを出している。中国の李克強国務院総理も離脱宣言をしたアメリカに対し、「(温暖化対策で)世界の責任を全うする」としてパリ協定遵守を表明した。G20の19カ国はアメリカを抜きにパリ協定を履行することで合意した。 アメリカ国内でもワシントン州・ニューヨーク州・カリフォルニア州の3州はトランプ政権から独立してパリ協定目標に取り組むアメリカ気候同盟を結成して、さらにマサチューセッツ州・ハワイ州など他の7州も加盟した。アメリカ気候同盟の立ち上げを主導したカリフォルニア州のジェリー・ブラウン州知事は結成直後に訪問した中国で「中国がアメリカに代わって気候変動対策のリーダーシップを握った」として中国政府との協力を表明した後、中国とクリーンテクノロジーのパートナーシップを結んだ。 アメリカのリック・ペリーエネルギー長官は、トランプのパリ協定離脱表明直後に中国が気候変動対策でリーダーシップをとることを歓迎するとしつつ、依然アメリカはクリーンテクノロジーの開発などでリードしていると述べ、6月6日にパリ協定離脱反対派であるブラウン州知事とともに中国の北京を訪れて第8回クリーンエネルギー部長級会議(英語版)に出席し、中国の張高麗国務院副総理と会談してクリーンエネルギーでの米中協力で一致するも、一地方自治体に対する異例の厚遇である中国の習近平国家主席(党総書記)との会見を行ったブラウン州知事との対応の違いが注目され、ブラウン州知事は中国の一帯一路に参加する意向を示したことなどが待遇の違いに繋がったとされる。トランプのパリ協定離脱表明に抗議してロバート・A・アイガーやイーロン・マスクは大統領戦略政策フォーラムから脱退し、アメリカの500箇所を越える自治体と約1700ものの企業もトランプを無視してパリ協定を順守する決意をした。 共和党のミッチ・マコーネル上院多数党院内総務は「石炭産業やその労働者を取り戻す決意を示した」と高く評価し、トランプのパリ協定離脱表明を支持した。アメリカ合衆国環境保護庁長官スコット・プルーイットもアメリカのパリ協定離脱を批判している世界各国に対して「(離脱は)正しい判断であり、アメリカとして謝ることは何も無い」とトランプ大統領を擁護した。 2018年1月10日にトランプは前政権が署名した当時の協定内容の修正を条件に「正直に言って私としては問題の無い協定だ。よって、復帰もあり得る」と述べた。 2019年11月4日にアメリカ合衆国国務長官マイク・ポンペオはパリ協定から離脱するための手続きを開始したと発表した。離脱の手続きには通告から1年を要するため、正式な離脱は2020年アメリカ合衆国大統領選挙の翌日の11月4日となった。
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