ミッチ・マコーネルとは? わかりやすく解説

ミッチ・マコーネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/05 16:25 UTC 版)

ミッチ・マコーネル
Mitch McConnell
ミッチ・マコーネル(2013年9月)
生年月日 (1942-02-20) 1942年2月20日(83歳)
出生地 アメリカ合衆国
アラバマ州シェフィールド
出身校 ルイビル大学B.A.
ケンタッキー大学J.D.
前職 弁護士
所属政党 共和党
配偶者 シェリル・レドモン(離婚)
イレーン・チャオ
サイン
公式サイト U.S. Senate Republican Leader Mitch McConnell

選挙区  ケンタッキー州
在任期間 1985年1月3日 -

在任期間 2007年1月3日 - 2009年1月3日
在任期間 2021年1月20日 - 2025年1月3日

在任期間 2015年1月3日 - 2021年1月20日
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アディソン・ミッチェル・マコーネル・ジュニア英語: Addison Mitchell McConnell, Jr.1942年2月20日 - )は、アメリカ合衆国政治家1985年からケンタッキー州選出の連邦上院議員。2007年1月3日より、共和党の上院院内総務を18年間務めた。党の上院院内総務在任期間としては、アメリカ合衆国史上最長である。ミッチ・マコーネル(Mitch McConnell)と通称される。

経歴

軍歴

1964年にルイビル大学カレッジ・オブ・アート・アンド・サイエンスを卒業し、ケンタッキー大学カレッジ・オブ・ローを1967年に卒業した。大学在学中最後の年に、ケンタッキー州ルイビルでアメリカ陸軍予備役部隊、第100師団に入隊する。伝えられるところによると1967年7月から6ヶ月間、主として訓練任務に従事することとなった。ケンタッキー州フォート・ノックスでの入隊式の後、マコーネルは1967年8月に現役から解放された[1]。1967年8月、上院議員のジョン・シャーマン・クーパーは、フォート・ノックスの司令官に手紙を書き、マコーネルはニューヨーク大学に通うため、いつ現役任務から「解放」されるかを尋ねた。その結果、マコーネルは実際には現役任務を完了しなかった。元選挙対策担当者によると、マコーネルは視神経炎(視神経炎は多発性硬化症の徴候である[2]。)によって除隊されたとする。除隊に関連する事実は、以来ジャーナリストと政敵の両方から度々質問されている[3][4]

政治経歴

1967年、キャピトル・ヒル英語版における経験を重ね、法学部での最後の学期に上院議員ジョン・シャーマン・クーパーのインターンとなる。その後上院議員マーロウ・クックのアシスタントを務め、フォード内閣での司法次官補であった。1978年から上院議員に当選するまで、マコーネルはケンタッキー州ジェファーソン郡の判事であった。

1985年からケンタッキー州選出の連邦上院議員、2007年1月3日より共和党の上院院内総務を務めている。2007年の時点では上院少数党院内総務であったが、2015年1月3日より上院多数党院内総務となり、2021年1月20日からは再び上院少数党院内総務である。バラク・オバマ政権において、上院少数党院内総務の時は、フィリバスター(議事妨害)によって徹底抗戦し、オバマ大統領の2期目の中間選挙で、共和党が上院を奪還してからは、上院多数党院内総務の持つ強力な議事決定権を用いて、オバマ大統領の指名したアメリカ合衆国連邦最高裁判所陪席判事候補の公聴会を行わない等、議会を通さなければならない政権の重要案件をことごとく封殺する。この時に最高裁判所判事ポストの空きを埋めずに、2016年アメリカ合衆国大統領選挙において、ロー対ウェイド判決による人工妊娠中絶の合法化の是非を、意図的に選挙の争点に持ってきたことが、ドナルド・トランプが共和党の大統領候補指名選挙を勝ち抜き、大統領本選でも勝利する1つの要因となる。

2021年1月6日、合衆国議事堂が占拠される事件が発生するが、マコーネルは同年1月19日、議会で「暴徒は嘘を吹き込まれた。彼らは大統領とその他の権力者たちに触発された」と述べた[5]。元々、微妙であったドナルド・トランプとの関係は、これ以降冷え切ることになった[6]ジョー・バイデンの大統領就任にあたっては、上院議員同士として長きに渡って友人関係を育んできたこともあって、祝意を表明した。2021年11月に成立したInfrastructure Investment and Jobs Actでは、地元のケンタッキー州においてバイデン大統領と共同記者会見をおこなった。

バラク・オバマ大統領と議会指導部とのホワイトハウスにおける会議
ジョー・バイデン大統領との記者会見

2023年に81歳を迎えるなど高齢であり、健康上の懸念が浮上している。同年3月8日にはワシントンD.C.で開かれた会合で転倒し、脳震盪を起こしたほか肋骨を折り入院。同月25日に退院したものの、4月半ばにようやく議会に復帰した。7月26日の連邦議会議事堂における記者会見では、途中で突然発言をやめ約20秒間黙り込むという事態が発生した。同僚議員に促されて一旦その場を後にしたが数分後にはマイクの前に戻り、自らの健康をアピールしたものの、再び健康懸念が浮上した[7]。また8月30日にはケンタッキー州コビントンで行われたイベントにて記者と談笑中、再選を目指すために立候補するかどうか問われた際には30秒以上沈黙した[8]。2カ月間で2回も発言が止まるという事態を受け、神経科医4人に受診し、9月5日に事務所が脳卒中てんかん発作といった形跡はみられなかったとする担当医の報告書を公表したが、共和党内部からはマコーネルが3月の脳震盪から完全に回復していない可能性を懸念する声も上がった[9]。2024年2月28日に上院で行った演説の中で、11月中に上院院内総務を退任する意向を表明した[10]

2025年1月24日に行われた、第2次トランプ政権における国防長官に指名されたピート・ヘグセスの承認採決には反対票を投じた。共和党からは他にもリーサ・マーカウスキースーザン・コリンズの両議員も反対に回ったため賛成・反対共に50票となったが、上院議長であるJ・D・ヴァンス副大統領が賛成票を投じて賛成51票、反対50票となったため人事案自体は承認されている[11]。このほか国家情報長官に指名されていたトゥルシー・ギャバード保健福祉長官に指名されていたロバート・ケネディ・ジュニアにも反対票を投じているが、いずれも共和党からの造反はマコーネルのみであったため、人事案自体は承認されている[12]

85歳の誕生日を迎えた2025年2月20日には翌2026年の中間選挙に立候補せず、2027年1月の任期満了をもって政界から引退する意向を表明した[13]

私生活

2歳の時に左足がポリオに感染し、残りの生涯で障害を抱え続ける危険性があった。そのため、コロナ禍においてワクチンに懐疑的な発言をしたトランプ大統領を厳しく批判し、同じくワクチン陰謀論者のロバート・ケネディ・ジュニアの長官指名に反対した。

最初の妻のシェリル・レドモンとは後に離婚した[14]。夫妻の間には3人の娘(エリー、クレア、ポーター)がいる[15]。二番目の妻のイレーン・チャオと1993年に再婚した。イレーンはジョージ・W・ブッシュ政権で労働長官を務め、閣僚となった初のアジア系女性であった。バプテスト教会の信徒[16]である。マコーネルの個人資産は2009年で3,275万6,000ドルと見積もられた。前年度よりも80万2ドル増加し、上院で12番目の資産家である[17]。また、マコーネルはバージニア州アーリントンNPOであるリーダーシップ・インスティテュート英語版の代表を務め[18]ファイ・カッパ・タウ英語版の生涯のメンバーである[19]

脚注

出典

  1. ^ Mitch McConnell at Political Base”. Web.archive.org. 2007年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月30日閲覧。
  2. ^ Kentucky Kernel: November 01, 1996”. Kernel.uky.edu. 2010年7月30日閲覧。
  3. ^ Rogers, Michael (2008-10-23) What is Mitch McConnell Hiding?, Huffington Post
  4. ^ Ryan Alessi and Jack Brammer (2008-10-22) McConnell's military record attacked, Lexington Herald-Leader
  5. ^ Cowan, Richard (2021年1月20日). “'Mob was fed lies': Mitch McConnell accuses Trump of 'provoking' riot”. The Sydney Morning Herald. https://www.smh.com.au/world/north-america/mob-was-fed-lies-mitch-mcconnell-accuses-trump-of-provoking-riot-20210120-p56vew.html 2021年1月25日閲覧。 
  6. ^ 米共和党に激震、トランプ氏が指導部掌握も-マコネル氏退任表明で”. Bloomberg.com (2024年2月29日). 2025年2月26日閲覧。
  7. ^ “マコネル米共和党上院院内総務、会見中に突然黙り込む-健康懸念浮上”. bloomberg.co.jp. ブルームバーグ. (2023年7月27日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-27/RYFL8ZT0AFB401 2023年7月27日閲覧。 
  8. ^ “Sen. Mitch McConnell appears to freeze again at a Kentucky event”. NBCニュース. (2023年8月31日). https://www.nbcnews.com/politics/congress/sen-mitch-mcconnell-appears-freeze-kentucky-event-rcna102583 2023年9月6日閲覧。 
  9. ^ “共和党マコネル氏、専門医らの診察で「発作の形跡なし」”. CNN.co.jp. CNN. (2023年9月6日). https://www.cnn.co.jp/usa/35208732.html 2023年9月6日閲覧。 
  10. ^ “米共和党マコネル氏、上院院内総務を11月に退任へ 「前に進む時が来た」”. BBC News. BBC. (2024年2月29日). https://www.bbc.com/japanese/articles/cyjk4123vnmo 2024年2月29日閲覧。 
  11. ^ “米上院、ヘグセス氏を国防長官に承認 51対50の僅差”. BBC News. BBC. (2025年1月25日). https://www.bbc.com/japanese/articles/cr46wy21463o 2025年1月25日閲覧。 
  12. ^ “米保健福祉省長官にワクチン懐疑派のケネディ氏、上院が承認”. CNN.co.jp. CNN. (2025年2月14日). https://www.cnn.co.jp/usa/35229388.html 2025年2月14日閲覧。 
  13. ^ “米共和党重鎮マコネル氏が27年政界引退へ 次期中間選挙に出馬せず”. ロイター. (2025年2月21日). https://jp.reuters.com/world/us/SAGF5XWE4BPTXMVNMV6YFFIZ74-2025-02-20/ 2025年2月21日閲覧。 
  14. ^ John E. Kleber, Kentucky Bicentennial Commission, Thomas Dionsius Clark, and Lowell H. Harrison, "The Kentucky Encyclopedia", University Press of Kentucky, 1992, page 592
  15. ^ Office of Senator Mitch McConnell (R-KY) > Biography”. Mcconnell.senate.gov. 2010年7月30日閲覧。
  16. ^ Listed as Baptist in official biographies, but reportedly attends a different church now.Wide variety of Baptists, other faiths found in 111th Congress
  17. ^ OpenSecrets.org (2010年12月3日). “Mitch McConnell (R-Ky), 2009”. OpenSecrets.org. 2010年12月3日閲覧。
  18. ^ Mitch McConnell. “Speaker Bio Mitch McConnell”. The Leadership Institute. 2010年10月7日閲覧。
  19. ^ The LI Difference”. The Leadership Institute. 2010年10月7日閲覧。

外部リンク

アメリカ合衆国上院
先代
ウォルター・ハドルストン
ケンタッキー州選出上院議員(第2部)
1985年1月3日 - 現在
同職:ウェンデル・H・フォード, ジム・バニング, ランド・ポール
現職
先代
リチャード・ブライアン
D-ネバダ州
上院倫理問題特別調査委員会委員長
1995年 - 1997年
次代
ロバート・C・スミス
R-ニューハンプシャー州
先代
ジョン・ウォーナー
R-バージニア州
上院議事規則議院運営委員会委員長
1999年 - 2001年
次代
クリストファー・ドッド
D-コネチカット州
先代
ハリー・リード
D-ネバダ州
上院多数党院内幹事
2003年1月3日 - 2007年1月3日
次代
リチャード・ダービン
D-イリノイ州
先代
ハリー・リード
D-ネバダ州
上院少数党院内総務
2007年1月4日 - 2015年1月3日
次代
ハリー・リード
D-ネバダ州
先代
ハリー・リード
D-ネバダ州
上院多数党院内総務
2015年1月3日 - 現在
次代
現職
党職
先代
ルイス・ゲンスナー
ケンタッキー州選出上院議員共和党候補
(第2部)

1984年, 1990年, 1996年, 2002年
2008年, 2014年, 2020年
次代
-
先代
アル・ダメイト
ニューヨーク州
全米共和党上院議員委員会委員長
1997年 - 2001年
次代
ビル・フリスト
テネシー州
先代
ドン・ニックルズ
オクラホマ州
共和党上院院内幹事
2003年 - 2007年
次代
トレント・ロット
ミシシッピ州
先代
ビル・フリスト
テネシー州
共和党上院院内総務
2007年 - 現在
現職
アメリカ合衆国の儀礼席次英語版
先代
チャック・シューマー
上院多数党院内総務
上院少数党院内総務 次代
ディック・ダービン英語版
上院多数党院内幹事
先代
チャック・グラスリー
D-アイオワ州
上院議員の先任順
第2位
次代
パティ・マレー
D-ワシントン州




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