ピート・ヘグセス
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ピート・ヘグセス
Pete Hegseth
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2025年
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生年月日 | 1980年6月6日(45歳) |
出生地 | アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス |
出身校 | プリンストン大学(B.A) ハーバード大学(MPP) |
所属政党 | ![]() |
配偶者 | ジェニファー・ロシェ(2019年結婚) |
子女 | 7[1] |
サイン | ![]() |
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内閣 | 第2次ドナルド・トランプ内閣 |
在任期間 | 2025年1月25日 - 現職 |
ピート・ヘグセス Pete Hegseth |
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所属組織 | アメリカ合衆国陸軍 陸軍州兵 |
軍歴 | 2003 - 2016 2010 - 2014 |
最終階級 | 少佐[2] |
ピーター・ブライアン・ヘグセス(英語: Peter Brian Hegseth)は、アメリカ合衆国の政治家、テレビ司会者、退役軍人。2025年1月から第29代アメリカ合衆国国防長官を務める。
経歴
2003年にプリンストン大学を卒業し、ハーバード大学ビジネススクールで修士号も取得している[3][4]。

大学卒業後は陸軍州兵の歩兵部隊に入隊し、アフガニスタン紛争やイラク戦争に従軍した[3]。
2014年にFOXニュースに加わり、番組の司会やニュースの解説を行った他、1期目の大統領を務めていたトランプに単独インタビューを行った[3]。
アメリカ合衆国国防長官
2024年11月12日、大統領に返り咲くこととなったドナルド・トランプは国防長官にヘグセスを指名した[5][3]。
しかし、トランプ大統領の指名後に、2017年にカリフォルニア州モントレーで性的暴行を行った疑惑や勤務中に過剰飲酒していたことが発覚[6][7]。大きな組織を率いた経験が無いことなどが問題視された[8]。
2025年1月24日、アメリカ合衆国上院は51対50でヘグセスの国防長官指名を承認した[9][10][11]。50対50で票数が拮抗したため上院議長を兼ねるJ.D.ヴァンス副大統領が賛成票を入れ1票差での承認となった[9]。翌日、ヴァンス副大統領の元で宣誓し、正式に就任した[12]。
2025年3月に発覚したSignalチャットのリーク事件で、ヘグセスは民間チャットであるSignalを用いてフーシ派への攻撃計画を他の高官に伝達したため批判を招いている[13][14]。
4月には米政府の監査官がヘグセスのSignalの利用の調査を始めた[13]。さらに同年4月20日には、ヘグセスがSignalを用いて妻や弟、弁護士らと中東での米軍の作戦を共有していたと報じられた[15][16]。一方ヘグセスはこの報道を「中傷」として非難している[17]。
一連の問題が続く中、米公共ラジオNPRは21日、ホワイトハウスがヘグセス更迭に向け後任選びに着手したと報じた[18]。一方、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は自身のSNSでNPRの報道を否定した[18]。またトランプ大統領も「彼は素晴らしい仕事をしている」と述べ、ヘグセスを擁護した[18]。
主張
ヘグセスは、その言動から「キリスト教ナショナリスト」と呼ばれてきた[19][20][21]。右腕にはラテン語で「神がそれを望まれる」を意味するデウス・ウルトのタトゥー(入れ墨)があり[22]、右胸にもエルサレム十字の入れ墨が彫られている。
イスラエル
国防長官候補として臨んだ公聴会では、ヘグセスの過去の親イスラエルの発言から「クリスチャン・シオニスト」と呼んで抗議する者が現れて中断する一幕もあった[23]。公聴会では、トム・コットン上院議員からクリスチャン・シオニストであるか問われた際に同盟国イスラエルへの支持を述べ、「イスラエルがハマスを破壊し、最後のメンバーを一人残らず殺害することを支持する」とも発言した[23]。
自らの著書『アメリカン・クルセイド』の中で、イスラエルへの支持をクルセイド(十字軍)になぞらえ、「千年前の我々キリスト教徒の仲間たちのように、我々は戦わなければならない。私たちにはアメリカの十字軍が必要である」「アメリカを愛するならばイスラエルを愛することも学ぶべき」と主張した[24]。また、ユダヤ・キリスト教の価値観を守る十字軍を立ち上げるべきとしてトランスジェンダーの採用など軍で人種や性別の多様性を推進する動きやイスラム教に反対する姿勢を示した[1][25]。2016年のインタビューで、ヘグセスはイスラエル人を「神に選ばれた民」と呼んだ[26]。2018年にエルサレムで開催されたアルーツ・シェバの会議で講演を行い、「神殿の丘に神殿が再建されるという奇跡が不可能な理由はない」と述べた[27][28]。同年、ニューヨーク市で開催された米イスラエル青年評議会の祝賀会では、「シオニズムとアメリカニズムは、今日の我々の世界における西洋文明と自由の最前線である」と述べた[29]。パレスチナ問題においては二国家解決に反対し、ヨルダン川西岸地区に対するイスラエルの主権を支持した[30]。
国防長官に就任後、初めての外国政府高官との電話会談をイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と行い、両国の「壊れない絆」を確認してアメリカがイスラエルと肩を並べてその安全保障に全力で取り組むことを表明した[31][32]。。
NATO
ヘグセスは、北大西洋条約機構(NATO)に対して批判的・懐疑的であり[5]、NATOを作り直す、もしくはNATOに加盟するヨーロッパ諸国がより負担を増やすことを主張している。トルコのNATO加盟も批判しており、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領を「公然とオスマン帝国の復活を夢見ているイスラム主義者」と評した[24]。
イラン
ヘグセスはイラン政府を「悪の政権」と批判している。2020年1月、ヘグセスは第1次トランプ政権によるイランのガーセム・ソレイマーニー将軍の殺害に支持を表明した[33][34]。また、トランプに、武器庫や文化遺産を含むイラン本土を爆撃するよう求めた[35]。
ロシアおよびウクライナ
ヘグセスはロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」としてソビエト連邦の復活を求めていると批判する一方で[36]、ロシアからの侵略へ晒されているウクライナに対するアメリカの軍事援助に対しても批判的である[26]。
中国
2020年5月、ヘグセスは中国共産党が「私たちの文明を終わらせる」ことを望んでいるとし[37]、中華人民共和国はアメリカを打ち負かすことに特化した軍隊をつくりあげていると述べた[26]。
脚注
出典
- ^ a b >外信部, 時事通信 (2024年11月13日). “保守派のニュース司会者 米国防長官指名のピート・ヘグセス氏―次期米政権・横顔:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2025年7月13日閲覧。
- ^ vietnam.vn (2024年12月7日). “米国国防長官候補のピート・ヘグゼスとは誰?多くの非難にもかかわらず、トランプ氏はなぜ最後まで擁護を続けるのか?”. vietnam.vn. 2025年7月13日閲覧。
- ^ a b c d “トランプ氏 次期政権の国防長官にFOXニュース司会者ヘグセス氏”. 日本放送協会 (2024年11月13日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “HON Pete Hegseth” (英語). U.S. Department of Defense. 2025年7月13日閲覧。
- ^ a b Stewart, Phil、Ali, Idrees、Stewart, Phil、Ali, Idrees「トランプ氏、国防長官にTV司会者ヘグセス氏指名へ NATOに懐疑的」『Reuters』2024年11月13日。2025年7月13日閲覧。
- ^ “トランプ氏が国防長官に起用の元軍人“過去に性的暴行で捜査” (2023年11月16日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ 産経新聞 (2025年1月25日). “暴行や過剰飲酒…疑惑まみれのヘグセス米国防長官 安保の知識不足も露呈、同盟国に不安”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年7月13日閲覧。
- ^ “ヘグセス氏が米国防長官に 過去に性的暴行疑惑 共和党から3人反対も上院が人事案承認 | TBS NEWS DIG (1ページ)”. TBS NEWS DIG (2025年1月25日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ a b “米上院、ヘグセス氏を国防長官に承認 51対50の僅差”. BBCニュース (2025年1月25日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ ロイター編集「米上院、ヘグセス氏の国防長官人事を承認 賛否同数で副大統領が決裁」『Reuters』2025年1月25日。2025年7月13日閲覧。
- ^ “米上院がヘグセス国防長官承認 賛否同数、議長票で決定”. 日本経済新聞 (2025年1月25日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ 外信部, 時事通信 (2025年1月26日). “同盟国支援の姿勢強調 ヘグセス米国防長官が就任:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2025年7月13日閲覧。
- ^ a b “米政府監察官、国防長官の「シグナル」利用を調査へ”. 日本経済新聞 (2025年4月4日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “米誌、フーシ攻撃計画の詳細公表 トランプ政権高官、シグナルで共有:朝日新聞”. 朝日新聞 (2025年3月27日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “ヘグセス米国防長官、民間アプリで空爆情報を妻らと共有か トランプ氏は擁護”. BBCニュース (2025年4月22日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “米紙 “ヘグセス国防長官 アプリで妻らと軍事作戦の情報共有” (2025年4月21日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “米国防長官 妻との軍事作戦情報共有報道を“中傷”と非難” (2025年4月21日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ a b c “家族への情報漏えい問題、ヘグセス氏「更迭」準備の報道…トランプ氏は擁護姿勢”. 読売新聞オンライン (2025年4月22日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ Herman, Alice (2024年11月15日). “Pete Hegseth, Trump's Pentagon pick, sparks alarm over far-right extremism”
- ^ Kilgore, Ed (December 6, 2024). “Pete Hegseth's Christian Nationalism Is Fair Game for Confirmation Hearings”. New York Intelligencer. オリジナルのDecember 23, 2024時点におけるアーカイブ。 2025年1月20日閲覧。.
- ^ Adams, Liam (2025年1月13日). “Why Pete Hegseth nomination is a milestone for the rightwing Christian movement he follows”. USA Today. オリジナルの2025年1月17日時点におけるアーカイブ。 2025年1月20日閲覧。
- ^ “Trump Pentagon pick had been flagged by fellow service member as possible 'Insider Threat'” (英語). Associated Press News (2024年11月15日). 2025年1月30日閲覧。
- ^ a b “‘I support Israel destroying and killing every last member of Hamas’ says Trump nominee Pete Hegseth” (英語). ジューイッシュ・クロニクル (2025年1月15日). 2025年9月6日閲覧。
- ^ a b Wilson, Jason (2024年11月25日). “Trump Pentagon pick attacks UN and Nato and urges US to ignore Geneva conventions” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2024年11月30日閲覧。
- ^ Ryan, Missy; Hill, Evan (2024年11月14日). “Trump Pentagon pick dismissed military diversity drive, demonized Islam”. The Washington Post 2024年11月15日閲覧。
- ^ a b c “Who is Pete Hegseth, the pro-Israel Fox News host picked to head Pentagon?” (英語). Al Jazeera (2024年11月13日). 2024年11月14日閲覧。
- ^ Template:Cite youtube
- ^ Magid, Jacob (2024年11月14日). “Trump's nominee for Pentagon chief suggested new temple could be built on Temple Mount”. The Times of Israel. オリジナルの2024年12月4日時点におけるアーカイブ。 2024年12月2日閲覧。
- ^ “Trump taps Pete Hegseth for defense secretary”. Cleveland Jewish News (2024年11月13日). 2024年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月13日閲覧。
- ^ “All the Settlers' Men”. Slate. (2024年11月15日). オリジナルの2024年11月16日時点におけるアーカイブ。 2024年11月16日閲覧。
- ^ “Netanyahu, Hegseth discuss ‘unbreakable’ Israeli-US bond” (英語). JNS (2025年1月26日). 2025年9月6日閲覧。
- ^ “米国防長官 妻との軍事作戦情報共有報道を“中傷”と非難” (2025年4月21日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ Steinhauer, Jennifer (2020年1月6日). “Fox Host's 'America First' Shift Makes an Exception for Trump's Iran Strike”. The New York Times. オリジナルの2024年11月16日時点におけるアーカイブ。 2024年11月16日閲覧。
- ^ Bittle, Jake (January 31, 2020). “Trump's War Whisperer” (英語). The New Republic. オリジナルのAugust 14, 2023時点におけるアーカイブ。 2023年8月14日閲覧。.
- ^ Relman, Eliza (2020年1月8日). “The Fox host with Trump's ear on military issues urges him to bomb Iranian cultural sites and 'rewrite the rules' of war to be 'advantageous to us'”. Business Insider. 2020年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月11日閲覧。
- ^ “Trump's Pentagon pick criticized US involvement in Ukraine, said Putin probably wouldn't go 'much further' if he wins”. Business Insider. (2024年11月13日). オリジナルの2024年11月16日時点におけるアーカイブ。 2024年11月16日閲覧。
- ^ Baragona, Justin (2020年5月22日). “Tucker Carlson and Pete Hegseth Try to Bring 'Kung Flu' Back” (英語). The Daily Beast 2021年3月31日閲覧。
著書
- Hegseth, Pete (2016). In the Arena. Threshold Editions. ISBN 978-1-4767-4934-1
- Hegseth, Pete (2020). American Crusade: Our Fight to Stay Free. Center Street. ISBN 978-1-5460-9874-4
- Hegseth, Pete (2022). Battle for the American Mind: Uprooting a Century of Miseducation. Broadside Books. ISBN 978-0-06-321504-7.
- Hegseth, Pete (2024). The War on Warriors. Broadside Books. ISBN 978-0-0633-8942-7
外部リンク
- ピート・ヘグセスのページへのリンク