『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』
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「ウィリアム・バンティング」の記事における「『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』」の解説
1863年、バンティングは、『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民に宛てた、肥満についての書簡』)と題した小冊子を出版した。これは肥満を治療するにあたってバンティングが忠実に実践した食事療法のやり方とその体験談を、公開書簡の形にして書かれたものであった。この書簡では、バンティングが減量するにあたって今まで行ってきた様々な試み -断食、食事療法、運動療法、湯治療法- 、が全て失敗に終わったこと、それらはいずれも医者に言われて実行した趣旨が記述されている。バンティングは、減量において失敗に次ぐ失敗を重ねた末に、バンティングのために新たな食事法を奨めてくれた、別の医者の助言に従った。 バンティングはこの小冊子の中で以下のように書いている。 「私にこの食事法を教えてくれた、親切で大事な友人は、肥満の治療医ではないが、別の病気の治療においては素晴らしい評判の持ち主だ。彼も承知しているが、肥満はしばしば別の病気を誘発する」 「パン、バター(※)、牛乳、ビール、ジャガイモが、私にとっての生きる糧であり、私はこれらを無害なものとみなして長い間自由に食べてきた。素晴らしい助言をしてくれた友人は、これらはデンプンや糖分を含んでおり、身体に脂肪を蓄積させる傾向があり、避けるべきである、と私に言った。最初は、私には食べられるものはほとんど残されていないように思えたが、実際には沢山あることを友人が示してくれた。この食事計画を偏見無しに試してみることに大いに喜びを覚え、数日以内にその恩恵を得られた」 減量するにあたってバンティングが実践した方法は、1日に4度の食事を摂り、肉、野菜、(1日に数オンス以下の)果物、辛口のワインを摂取することであった。重要なのは、砂糖、サッカリン、デンプン、パン、ビール、牛乳、豚肉(※)、バター(※)を避けることであった。 (※「避けるべきもの」としてバターと豚肉が入っているが、当時はこの2つにもデンプンが入っている、と考えられていた。実際には、バターも豚肉も炭水化物をほとんど含んでいないが)。 バンティングが出版したこの小冊子の内容は、その後、何年にも亘って受け入れられ、新しい食事の模範として取り入れられるようになった。当初は自費出版で発表したが、かなりの人気を呼んだことで、一般市民に販売しようと決めた。第3版は、2007年に印刷されたものがオンラインでも読むことが可能。 体重を減らせず、悩んでいたバンティングに対し、炭水化物の摂取を制限する食事法を奨めたのは、医師であり友人でもあったウィリアム・ハーヴィー( William Harvey, 1807~1876 )であった。ハーヴィーがこの食事法を学んだのは、フランスの医師、クロード・ベルナール( Claude Bernard )がパリで行った糖尿病についての講演を聴いたのがきっかけであった。 クロード・ベルナールの講演を聴く前までのハーヴィーは、「体重を減らすには、激しい身体活動に励めば良い」と考えており、バンティングに対してそうするよう伝えた。バンティングは「早朝に2時間、ボートを漕ぐ」ことにし、テムズ川でボートを漕ぎ続けた。彼の腕の筋力は強化されたが、それとともに猛烈な食欲が湧き、その食欲を満たさねばならなくなり、体重は減るどころかどんどん増えていった。ハーヴィーは友人に対し、「運動を止めなさい」と言った。「運動には体重を減らす効果は無い」と悟ったためである。ハーヴィーから炭水化物の摂取を制限する食事法を教わり、実践したバンティングは、最終的に50ポンド(約23㎏)の減量に成功している。『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』を出版したのは減量後のことであった。 バンティング自身、『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』の中で、「減量に対して何の効果も無い方法」の1つに、「食べる量を減らして運動量を増やす」を挙げている。イギリスの医師、トマス・ホークス・タナー( Thomas Hawkes Tanner )も、著書『The Practice of Medicine』の中で、「肥満を治療するにあたっての『ばかげた』治療法の1つに、「食べる量を減らす」「毎日多くの時間を散歩と乗馬に費やす」を挙げている。
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