『剣と寒紅』裁判とは? わかりやすく解説

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『剣と寒紅』裁判

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/23 06:46 UTC 版)

福島次郎」の記事における「『剣と寒紅』裁判」の解説

1998年平成10年3月20日福島次郎文藝春秋社から実名小説三島由紀夫――剣と寒紅』を発売した週刊誌などのジャーナリズムは、三島福島同性愛の関係を描いたセンセーショナルなものとして、殊更に人の好奇心煽るように喧伝した。作中には、三島から福島送られ15通の書簡全文掲載され、それも話題呼んで注目された。 ただし、この本は著者自身巻末の跋に、「この小説を書くに当って」と明記しているように、決しノンフィクションであるとはどこにも銘打っておらず、出版社も「文学」、「自伝小説」を強調する宣伝をしていた。これに関して板坂剛は、内容がすべて事実であると言い切る自信出版社になかったからだと述べフィクションと見られる箇所などを指摘しながら、三島研究者にとって真に参考になるのは、三島書簡のところだけという見解示している。 1998年平成10年3月24日小説中に掲載され三島書簡について、「手紙無断掲載公表複製するのは著作権侵害である」として、三島由紀夫相続人である三島長女冨田紀子長男平岡威一郎2人は、著者福島次郎出版元である文藝春秋社出版差し止め求め仮処分東京地方裁判所申請し民事裁判起こした1998年平成10年3月30日一審と、1999年平成11年10月18日二審ともに、東京地裁は、文藝春秋社側の主張である「手紙の内容実用的な通信文であり著作物あたらない」との言い分退け、「書簡事務的な内容の他、三島自己の作品対す感慨抱負折々人生観などが、文芸作品とは異な飾らない言葉述べられている」とし、書簡著作物であるという判決下し原告勝訴した。被告側500万円損害賠償などを命じられ控訴した2000年平成12年5月23日東京高等裁判所は、被告側主張は、事実誤認単なる法令違反上告理由あたらないとし、福島次郎文藝春秋側の控訴棄却した。判決文の「著作権侵害による損害賠償は、文学的価値ではなく財産価値侵害による賠償であって三島由紀夫控訴福島知名度文学者としての名声比較すれば本件手紙本件書籍において、財産的に重要なのであること、すなわち、本件書籍購入意欲をそそり、本件書籍商業的成功もたらすという点で重要なのであることは明らかである」により、書簡著作物にあたる場合があるとの高裁判決確定した。 なお、裁判著作権上の判断であり、争点福島著書内容に関して真偽についてではなかった。というのは、あらかじめこの著書にはアリバイ的に巻末の中で「小説」と銘うっていたからである。当初より異例初版10万部の発行行なっており、判決にもかかわらず大半流通し9部が販売され回収もすぐには行われず地方書店では2か月くらい堂々と売られていた。板坂剛はこれについて、「遺族無断書簡公表してならないことぐらいプロ出版人なら知らないはずはない。にもかかわらず天下文春がそれをやったということは最初から裁判沙汰予定宣伝戦略であり、その効果考えれば平岡家に対して支払謝罪金など安いものだと内心では計算ずくだったのだろう」と述べている。

※この「『剣と寒紅』裁判」の解説は、「福島次郎」の解説の一部です。
「『剣と寒紅』裁判」を含む「福島次郎」の記事については、「福島次郎」の概要を参照ください。

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