『上代仏教思想史研究』序文についてとは? わかりやすく解説

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『上代仏教思想史研究』序文について

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 04:05 UTC 版)

家永三郎」の記事における「『上代仏教思想史研究』序文について」の解説

上代仏教思想史研究』は(1)1942年初版(畝傍書房)、(2)1948年再版(目黒書房)、(3)1950年三版(目黒書房)、(4)1966年四版(法蔵館)の4種の版が存在する。秦は産経新聞(78/1/22)で本著に関し家永批判著した。「『上代仏教思想史研究』は(1)の序文に『この意義深き時に当たり学界一兵卒として学問報国戦列参加することの出来た吾人誠に願って無き幸せ者以て君国報じたい』とある。しかるに(2)ではこの箇所削除改変され(3)(4)では復活した」 これに対し家永はこう反論した。 『誹謗抗してマスコミ市民(1978/4)、「憲法・裁判人権」(1997名著刊行会)pp152-170より抜粋官憲の網にひっかからないようにくふうして表現した苦心文章ほかならない。(中略) 文章全体文脈今日そのまま私の信念として少しも変わっておらず、恥かしい文章であるとは全然考えていない。だからこの一節1950年版にも1966年版にも、そのまま活字として載せてあるのである秦氏によると、1948年版には削られているという。 あいにく私の手許に48年版がなく、削った記憶もないが、削られているとすれば占領軍検閲でひっかかるのを避けるためであったにちがいない。恥かしいと思ったからでないことだけは確実で、その2年後の50年版に初版どおり復原してあるのがその証拠である。 これに対して佐伯真光は「『上代仏教思想史研究』の象嵌」を著し、(1) - (4)各版を詳細に比較し、家永の旧著引用した。 『歴史危機面して』(1954東京大学出版会)pp236-239自分書いたものが活字になる、というのは、うれしいようで、一面恐しいことでもある。一度活字になった最後、どんな恥しいまちがいがあつても、抹殺する方法がないからである。 ある大先輩は、一生に何千という論文雑誌発表したが、ほとんど単行本らしい単行本を作らなかった。雑誌発表した論文なら、すぐまた前のを訂正した論文出せるけれど、単行本まちがったことを書くと、世を誤る責任が重い、というのが理由だったそうである。その学者良心きびしさには敬服するが、ちと単行本読者を見くびり過ぎていないだろうか。私なぞは反対に読者からまちがい教えてもらおうという虫のよい考えで、本を出している。 まちがい抹殺する方法はないが、訂正する方法はないではないのである日本出版界改版ごとに組みかえを許してくれるほどの余裕ないようだが、象嵌訂正くらいならできる。もっとも、私は象嵌訂正にがい経験味わった。「上代仏教思想史研究」という本を、目黒書店再版するというので、象嵌訂正をした。その次に重版を出すとき、再度象嵌訂正をしたが、本が出て見て驚いたことには、二度目訂正はちゃんと出ているかわりに最初訂正がまたいつのまに初刷通りもどっている。最初象嵌訂正紙型改めたとき、古い紙型廃棄されずに残っていて、それが二度目重刷のときに誤って使用されてしまったのである再版三版との間にこんな複雑な閑係があることは、おそらく書誌学者も御存知ないことと思うから、参考のために書いて置く。 つまり(2)で訂正したはずだが、(1)の紙型残っていたため、(3)出版する時に誤って使ってしまった訳である。 それでは(4)でどうして(1)の内容掲載されたかという疑問生じる。昭和30年代後半から家永を変節者として攻撃する声が高まった。『津田左右吉思想的研究』(1972岩波書店)で、家永は津田文章戦前戦後とでどう改訂されたか詳細な調査をしたが、家永自身将来他の研究者により調査される感じていた。自身首尾一貫性主張するために、(2)の存在抹殺する必要があったが、結果的に変節証明したと、佐伯結んでいる。大倉山論集での批判に、家永はまった反論していない

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