「ゴースト・ダンスの上着」の返還
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「ウンデット・ニーの虐殺」の記事における「「ゴースト・ダンスの上着」の返還」の解説
1999年8月1日、スコットランドのグラスゴーにあるケルビングローブ美術館・博物館からスー族に対し、「ゴースト・ダンスの上着」の返還が行われた。この「ゴースト・ダンスの上着」はケルビングローブ美術博物館館長のパトリシア・アレンによれば、「ウーンデッド・ニーの虐殺」で亡くなった戦士から剥ぎ取られ、1891年にバッファロー・ビルの「野生の西部ショー」のグラスゴー巡業の際に、ショーの通訳だったジョージ・クレイガーという人物によってモカシンや他の物品とともに「インディアンの珍奇品」として同博物館に持ち込まれたものである。 1992年9月、英国ツアー中に当博物館を訪れ、これを発見したジョージア州ウッドストックのインディアン弁護士、ジョン・アールによって、この遺品のスー族に対する返還要求が起こされた。同博物館では当時、「コロンブスによるアメリカ“発見”500周年記念展示」として、マクミラン・ギャラリーで「ゴースト・ダンスの上着」が展示されていた。アールは帰国後、スー族の遺族会にこれを報告し、アート・ギャラリーと博物館を管轄するグラスゴー地区議会の管理部門までたどって、ジュリアン・スポールディング館長に手紙を書き、正式に博物館側に遺品の返還を要求。しかし博物館はこれを拒否した。 1995年に、スー族の「ウーンデッド・ニー遺族会(Wounded Knee Survivors' Association)」はマルチェラ・ラ・ビューを特使とし、この遺品の返還を博物館側に強く要望した。「ゴースト・ダンスの上着」は、現在もスー族社会で神聖視されているものである。ラ・ビューはこう述べている。 私の肩にはこの大きな責任が課せられました。私はまっとうなことを言って、正当なことを要求する必要があったんです。[要出典] しかし、グラスゴー博物館はこれが「アメリカ本土以外ではここにしかない希少品」であり、「英国の市民に、ゴースト・ダンスとウーンデッド・ニーの虐殺の歴史を教育するのに欠かせないものとして、ここに保管されるべきである」と主張[要出典]。1997年春には、この「ゴースト・ダンスの上着」ほかの虐殺遺品はグラスゴーで、小学生教育のための展示会に出展された。 1998年、ジョン・アールと「ウーンデッド・ニー遺族会」、博物館、グラスゴー市参事会の6年越しの交渉の結果、市参事会はついに全会一致で遺品の返還を決定。107年の時を経て、晴れてスー族のもとへと返還されることとなった。この決定に対し、「ウーンデッド・ニー遺族会」で返還運動を続けていたスー族遺族のマルチェラ・ラ・ビューは感涙し、「私たちはグラスゴー市とその周りの地域の友情と、圧倒的な支援に感謝します」と謝辞を述べた[要出典]。 1999年7月末に、「ゴースト・ダンスの上着」を返還するため、グラスゴー評議員や美術館スタッフを含む代表団がサウスダコタを訪問。彼らはこの訪問で、「米国外からのこのような遺品の返還はアメリカ政府は全く予期しておらず、アメリカ本国の法律の限界を浮き彫りにした」と述べている[要出典]。スー族国家とグラスゴーの間で、晴れて大虐殺の遺品は正式に返還された。 同年8月1日の日曜日、サウスダコタのシャイアン川保留地にあるイーグルビュットで、グラスゴー代表団が出席した返還式典が行われた。スー族はこの歴史的な返還を祝い、大虐殺の被害者と生存者の子孫の大半が参加して、4日間にわたる儀式を行った。グラスゴー代表団はスー族遺族団とともにパインリッジ保留地のウーンデッド・ニーまで移動した。 スー族にとって古い精霊たちの守護者である「ワーワヤンカ(斑鷲)」が上空を飛び交い、スー族はこれを「償いのしるしと精霊からの歓迎メッセージ」と述べた[要出典]。 翌8月2日、 同州ピエールの州議会議事堂で式典が締結され、「ゴースト・ダンスの上着」はスー族が独自の美術館を持つようになるまで、サウスダコタ州歴史協会博物館で保管されると決定した。 2009年8月1日、「ゴースト・ダンスの上着」の返還10周年記念式典が開かれ、ダン・ブロスツによって上着が輸送された。ブロスツはこう述べている。 北アメリカのインディアンの民具がアメリカ合衆国へ戻り、インディアンの国に返還されたのはこれが初めてでした。明らかにこれはウーンデッドニー遺族会とラコタの人々にとって重大な意味を持っています。これがサウスダコタに戻ったということだけでなく、インディアン以外の人々が我々の共有する文化を学べるということに、もう一つ大きな意味があります。[要出典] 返還10周年式典では名誉の蝋燭が灯され、ウーンデッド・ニーの虐殺で殺されたスー族被害者たちの名前が読み上げられた。
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