“ステルス機”としての実在性について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 09:56 UTC 版)
「MiG-37 (架空の軍用機)」の記事における「“ステルス機”としての実在性について」の解説
前述のように「ステルス機の機体形状は曲線主体で構成されているものであり、このような形状で高いステルス性が発揮されるとは考えられない」とされたMiG-37の直線的なデザインの理由は、製品の説明書にある一連の解説(「TECHNICAL NOTE」の項目名で記述されている)によれば以下のように述べられている。 The Soviets haw traditionally had dilficultyin producing plastic surfaces with complexcompound curves. With stealth materialsbeing mosdy made of plastics and compositematerials heir problems have multiplied. By minimizing the use of curves and puttingtogether a craft witt a multiplicity of flatpanels, the aircraft is still mission capablebut not as sleek as a U.S. stealth design. — ソビエトの工業技術では伝統的に複雑な曲線を組み合わせた構成面を持つ合成樹脂製品を製造するのが困難であり、ステルス航空機には合成樹脂や複合材料が多く使われるため、その問題はますます大きくなっている。 この問題は、曲面を最小限に抑えて平面を多用した機体デザインにすることで対処可能ではあるが、アメリカのステルス設計ほど洗練されてはいない。 (1/48モデルキットの説明書より (※日本語訳は当項目の執筆者による) この解説(設定)によれば、MiG-37が直線的な機体形状となっているのは、当時のソビエトでは複合材料の製造技術がアメリカに劣っていたため、ステルスとして最適な曲線的な機体形状を実現できず、簡素化した機体形状となった、となっている。 本モデルの発売後、F-117の公表により、直線を多用した機体形状はむしろ実際のステルス機に即していることが明らかになった。また、「機体が複数の平面の組み合わせにより直線的に構成されている理由」についても、F-117がそのような形状である理由(曲面構成が理想だが、当時のコンピュータの能力ではレーダー反射率を曲面で計算するには能力的に無理があり、その当時のコンピュータで計算が容易な角ばった機体形状として妥協した)とは異なるものの、「技術的限界により妥協して簡素化した機体形状となった」という点では合致していた。「この機体形状では高いステルス性は発揮されないであろう」と考えられていた本モデルキットは、予想に反してステルス航空機の実態を捉えていたのである。 だが、アメリカ国防総省とアメリカ空軍が公式にステルス戦闘機の開発と配備を認めてF-117の存在と実機を公表したのは本モデルキットの発売された翌年である1988年11月のことであり、これ以前にステルス戦闘機の開発・運用に関わっているアメリカ空軍と担当航空機メーカーの一部の関係者以外が正確な情報を知り得るとは考え難いため、『MiG-37』の開発・発売時期からして、テスター社が当時極秘中の極秘であった実際のステルス戦闘機の詳細を知る手段があったとも考え難いことから、これらの一致は単なる偶然とすることが妥当であろう。 しかし、冷戦当時はコンコルドに対するTu-144のように、ソビエトは西側の新技術をそっくり真似するというイメージが強く、「ステルス戦闘機 F-19の機体形状は曲線主体で構成されている」が正しいと考えられていたならば、“ソビエトのステルス機”を製品化するのであれば、「技術的に不可能であるため」に曲線的なデザインではなくとも既に製品化したF-19に似通った形状にする方が自然で、フィクションとしての説得力もある。テスター社がMiG-37をF-19とは全く異なるデザインとした理由について、「このような形状では十分なステルス性が発揮されないだろう」と受け止められていた際には、航空模型愛好家の間で「F-19の大ヒットに気を良くしたテスター社が、自称“情報筋”から持ち込まれた「ソビエトの機密情報」を買い取り、虚偽の情報とは知らずにそのまま製品化した」という説があったが、F-117の公表後に航空機のステルス性についての理解が改まると「なぜMiG-37のモデルキットはF-19とは全く異なる“正しい”ステルス機の形状であったのか」という点について様々な憶測がなされることになった。 その理由として語られたものとしては テスター社は独自の情報源からアメリカのステルス戦闘機開発計画の全容を掴んでいた F-19(F-117)の実態を知る人物から“実際のステルス機のデザインはF-19の模型とは全く異なっている”という情報を何らかの形でリークされ、それを基にリークの事実を隠すために敢えてソビエト機という形でリメイクを行った アメリカ軍およびアメリカ政府の情報関係部門が、「軍関係者以外には“正しい”ステルス機の機体形状についてどの程度認識されているか」を把握するため、模型メーカーに情報をリークし、反応を探った といったものがあるが、2020年現在、いずれの説にも根拠や論証となるものが乏しく、確たる論拠はない。 なお、テスター社およびジョン・アンドリュースが1985年にデザインした『F-19 Stealth Fighter』の機体形状は実在するものとは全く異なってはいたものの、本モデルが発売された1987年の時点であれば既にメディアに掲載された「“ステルス機”についての解説」の中には“アメリカ軍が極秘開発中のステルス戦闘機”についてほぼ実態を捉えたものもあり、前作の『F-19 Stealth Fighter』をデザインした後にテスター社とアンドリュースがメディアその他で語られた“ステルス機”についての新たな情報をMiG-37のデザインに反映させたのであれば、アメリカ軍による情報公開以前に巷に流布している情報のみから“正しい”ステルス機を創作できたとしてもさほどの不思議はない、とは言える。
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