アユ
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飼育
アユの観賞魚用としての飼育自体は稀である[要出典]が、コアユ(陸封型)であれば可能である。また、遡上型のアユも稚アユの時期より育てれば可能である。高水温に弱いため夏場の温度管理が重要である。食性は主に植物性であるが、コアユの場合は動物性がより強いので、稀に動物プランクトンも食べる。また、観賞魚として水槽内で飼育した場合は成熟までに至らないケースが多いため、1年から3年は生きる。
日本におけるアユ
日本では代表的な川釣りの対象魚であり、重要な食用魚でもある。地方公共団体を象徴する魚として指定する自治体も多い。稚魚期を降海し過ごすアユ (Plecoglossus altivelis altivelis) は、琵琶湖産コアユと区別するため、海産アユとも呼ばれる。
江戸時代から評判の高い多摩川の鮎は幕府に「御用鮎」として上納されていた[31]。
食材
特に天然アユを中心に、出まわる時期が限られていることから、初夏の代表的な味覚とされている[32][33]。
日本各地のアユの胃の内容物に関する調査の結果、濁りが多い川のアユは胃に泥を多く持ち、食味にも泥臭さが出る。この場合、はらわたを除去することで泥臭さを避けることもできる。一方、泥が少ない川では胃にも泥が含まれず、食味も大幅に改善する。同じ川でも、遡上量が多く川底がアユによって「掃除」されたような年には風味も良くなる[34]。
日本では一般に、魚は刺身で食するのが最良とされている(割主烹従)が、アユについては例外的に塩焼きが最良とされている。一般に初夏のものはアユの独特の香気を味わい、晩夏のものは腹子を味わうとされている[32]。
焼き物・揚げ物
アユは、初夏から夏の季節を代表する食材として知られ、清涼感をもたらす食材である。特に初夏の若アユが美味とされ、若アユの塩焼きや天ぷらは珍重される[35]。鮎は蓼酢で食べるのが一般的[32]だが、ほかにも蓼味噌を添える場合もある[33]。塩焼きにした後に残った骨はさらに炙り、熱燗の日本酒を注ぐ骨酒とすることができる。
生食
刺身や洗いなどの生食が行われることがある。アユは横川吸虫という寄生虫の中間宿主であり、食品安全委員会はこの観点から生食は薦められないとしている[36]。
刺身にするには、旬のアユを冷水で身を締め、洗いや背越しにする。特に背越しは骨の柔らかいアユの特徴的な調理方法で、ウロコや内臓を除去したのち、骨や皮ごと薄く輪切りにしたもので、清涼感のある見栄えや独特の歯ごたえを楽しむ。酢や蓼酢などで食することでもアユの香気を味わうことができる[33][32]。
酢や塩に浸け酢飯と合わせて発酵させるなれずしの「鮎寿司」や、「姿寿司」、「押し寿司」、「柿の葉寿司」、「笹寿司」などを作る地方がある。JR京都駅の名物駅弁ともなっている。
アユの腸を塩辛にした「うるか」は、珍味として喜ばれる[37]。うるかを作るには、腹に砂が入っていない(空腹になっている)夜間・朝獲れの鮎が好しとされる。[要出典]
煮物
琵琶湖周辺などでは稚魚の氷魚の佃煮や、成魚の甘露煮(小鮎の甘露煮)も名物として製造販売されている。
雑炊
岐阜県の郷土料理で、鮎を使用した鮎雑炊があり、5月から10月に食される。
シラス
シラス漁においては、海で過ごしているアユ仔魚・稚魚が混獲されることがある。しかし、この場合は独特の香りが製品につくのでむしろ嫌われる。[要出典]また、アユの仔稚魚は茹でると黄色になる。
アユ節
乾燥させた鮎節は和食の出汁としても珍重される。また、鮎の干物からとった「水出汁」は、極めて上品。
漁法
アユの若魚は刺し網、投網、産卵期に川を下る成魚は簗(やな)などで漁獲される。岐阜県の長良川などでは、ウミウを利用した鵜飼いも知られる。
友釣り
アユにターゲットを絞った漁法として、アユが縄張りを持つ性質を利用した友釣りがある。
毛鉤釣り
仔魚期から稚魚期の主要な餌は水生昆虫や水面落下昆虫であるため、毛鉤やサビキ仕掛けで釣れることもある。ただし、水産資源保護の観点から11月-5月は禁漁である。また、解禁された後も漁業権が設定された河川では、入漁料を支払う必要がある。
養殖
アユは高級食材とされており、内水面で養殖される魚種としてはウナギに次ぐ生産高を誇る。養殖は、食用とするための成魚の養殖と、遊漁目的の放流用種苗稚魚の養殖とが日本各地で行われ、稚魚養殖し天然河川に放流した個体を『半天然』と呼ぶこともある[38]。一部では完全養殖も行われる。この際には、主として、天然の稚魚を3月から4月に捕獲し淡水で育成する方法が採用される。実際、「河口付近の川で採捕した河川産稚アユ」「河口付近の海洋回遊中に採捕した海産稚アユ」「湖や湖に注ぐ河口で採捕した湖産稚アユ(コアユ)」が種苗として供給されている。完全養殖の場合、一時海水中で飼育することもあり、餌はシオミズツボワムシなどのワムシ類、アルテミア幼生、ミジンコなどが使用される。
植物プランクトン | ワムシ類 | 甲殻類の幼生 | カイアシ類 | ミジンコ類 |
アユ養殖の歴史
アユの養殖の始まりは諸説ある。養殖の実験は、石川千代松[39]らにより1904年より琵琶湖で行われたのが最初とされている[40]。1923年には琵琶湖産の稚魚が京都市の清滝川に放流された[41]。1960年代になると遊漁種苗の育成が盛んに行われるようになる。当初は琵琶湖産アユが養殖種苗として利用されていたが、海産の稚魚の利用も1929年に中野宗治の研究により開始された。なお、養殖アユの生産量は、最盛期の1988年には1万3600トンあまりあったが、2001年に8100トン、2005年には5800トン程度まで減少した[42]。
21世紀初頭には流水池での養殖池を行い脂肪分を減少させる事や、配合飼料に藍藻、緑茶抽出物[43]を添加することで動物質飼料由来の香りを抑制するなど、養殖方法にも工夫が加えられ養殖ものの食味を天然物に近づける努力もなされている。さらに、電照飼育により性的成熟を遅らせ、「越年アユ」として販売される場合もある。
飼育方法・放流・生け簀
アユについての漁業権のある河川では、毎年4-5月頃漁協により、10-15センチメートル程度のサイズの稚魚の放流が行われる。
アユの養殖時の飼育適温は摂氏15-25度であり、養殖用の生け簀(池)は長方形、円形など様々な形状のものが利用される。餌は、かつてはカイコの蛹粉末や魚の練り餌が使用されたが、現在では魚粉や魚すり身を主成分とした固形配合飼料が与えられる。アユは短期間に成長させる必要がある。このため、常に飽食量に近い量が給餌される結果、残った餌により養殖池の水質が悪化し、感染症が発生し易くなるという問題が生じやすい。また密度管理も重要である。これは、感染症対策をとる必要があるばかりでなく、生育密度が高いと共食いが発生しやすいためでもある。
天然物と養殖物の違い
天然物と養殖物の違いとしては主に以下のようなものがある[38]。
- 特有の香り
- 養殖魚にはない。
- 脂肪
ブランド
- 柑味鮎 - フルーツ魚のアユのブランド名として柑味鮎がある。主な生産地は、滋賀県、徳島県、和歌山県、愛知県、静岡県。
- 金鮎 - 魚体が金色の鮎。藻と水質により生じるものと考えられ、大正年間の時点で全国に10箇所程度しか存在しないとされていた[44]。
アユの感染症
養殖において感染症が問題となる。例えば、グルゲア症が発生した場合、治療法がなく発病群の全個体を処分し池および関連器材を消毒しなければならない。
病名 | 病原体 | 特徴的な症状 | ||
---|---|---|---|---|
体表、鰭 | えら(鰓) | 内臓、筋肉 | ||
冷水病 | フラボバクテリウム・サイクロフィラム(Flavobacterium psychrophilum) | 体表や尾柄部のびらん、潰瘍、下顎の出血 | 貧血 | 内臓の貧血 |
ビブリオ病 | Vibrio anguillarum | 体表や鰭の基部、肛門周辺の出血、体幹部の褪色やスレ | 内臓・筋肉の出血 | |
細菌性鰓病 | フラボバクテリウムの一種(Flavobacterium branchiophila) | 鰓蓋が開いたまま | 鰓のうっ血、多量の粘液分泌、鰓弁の棍棒化 | |
シュードモナス病(細菌性出血性腹水症) | Pseudomonas plecoglossicida | 下顎の発赤・出血、肛門の拡張 | 軽度の貧血 | |
真菌性肉芽腫症 | ミズカビ類の一種(Aphanomyces piscicida) | 皮膚の剥離、潰瘍や肉芽腫の形成 | 真菌の伸長による発赤 | |
ボケ病 | 不明 | 鰓蓋が開いたままになる | 鰓弁の腫脹と棍棒化、鰓の褪色 | |
ミズカビ病 | ミズカビ類のサプロレグニア属のカビなど | カビの集落を形成後、表皮組織が崩壊 | ||
グルゲア症 | 微胞子虫の一種(Glugea plecoglossi) | 乳白色で球形のグルゲアシストが体の各部位に形成 |
放流用種苗に係わる問題
前述の様に、当初は琵琶湖産アユが養殖種苗として利用されていたが、海産の稚魚の利用もされているが、外部からの新規個体が導入されない環境で継代飼育されることが多く養殖場の環境に適応した個体のみが残ることとなり、飼育しやすい反面、単一の形質をもつ遺伝的な多様性に欠ける集団となる。その結果、環境ストレスに対する耐性(例:主たる捕食者のカワウからの回避能力)を低下させると共に、継代人工種苗が親魚となった自然界での再生産のサイクルが良好に機能しない原因となっている可能性が指摘されている。しかし、遺伝的多様性を維持するために、養殖メスと野生オスを交配させ次世代の種苗とすることで遺伝的多様性の維持をはかることが可能である[23]。
天然アユ復活への取り組み
流域下水道の整備による水質浄化、かつて生息していた河川の清掃、直線化した河川構造の改造、産卵床の整備などを通した天然アユ復活の試みは日本国内各地(島根県[47]、多摩川[48][49])で行われている。例えば神戸市灘区都賀川は、かつてゴミとヘドロで埋め尽くされた「どぶ川」だった。「都賀川を守ろう会」が、1976年より、戦前のように魚とりなどができるようにと活動を続け、ゴミを引き上げたり、車に拡声器を積み川を汚さないようにと訴えてきた。陳情を受けた兵庫県も魚道の整備、産卵用の砂を敷き、川を蛇行させて流れを緩やかにした。その結果、毎年2000匹ほどが遡上し、産卵も行われるようになった[50][51]。
文学
命名
和菓子の一種に、鮎を形取って小麦粉を焼いて作った皮で求肥をはさんだものがあり、「鮎」または「若鮎」と呼ばれる。
参考画像
-
アユを模した和菓子の「鮎」
-
飼育される稚魚
-
釣れた稚鮎
-
販売される養殖アユ
注釈
- ^ 魚偏に桀。
- ^ ただし、これらは一般に流布している学説であって、高橋 & 東 (2006) では、縄張りをもたず群れで生活している天然アユにも黄色くなるものがいる例を上げて、最終的にはよくわかっていないとしている。
出典
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