神
*関連項目→〔デウス・エクス・マキナ〕・〔死神〕・〔福の神〕・〔貧乏神〕・〔二人の神〕
『大鏡』「実頼伝」 太宰府から帰京する大弍佐理の乗った船が、伊予の手前で動かなくなる。佐理の夢に三島明神が現れ、「我が社には額がないので、書の名人たる汝に額を書いてほしい」と請う。
『尾張国風土記』逸文・吾縵の郷 品津別皇子は7歳になっても物を言うことがなかった。皇后の夢に神が現れ「我がために祭主をあてがえば、皇子は物を言い、命も長いだろう」と告げた。
『古事記』中巻 祟神帝の世、疫病で多くの人が死んだ。帝が憂えて神床に寝た夜の夢に大物主神が現れ、「意富多多泥古を祭主として我を祭るならば、祟りは止む」と告げた〔*『日本書紀』巻5祟神天皇7年2月に類話〕。
『捜神記』巻5-1(通巻92話) 漢末の人蒋子文は鐘山で賊に切られて死んだが、呉の孫権が帝位についた頃に土地神となって現れ、また巫女に乗り移って「祠を建てて我を祭れ」と要求し、疫病や火事を起こした。孫権は蒋子文のために廟を建て、鐘山を蒋山と改めた。
『肥前国風土記』基肆(き)の郡姫社の郷 荒ぶる神が道行く人を多く殺した。占うと「筑前国宗像郡の人、珂是古に我が社を祭らせよ。この願いが叶えば、荒ぶる心は起こさぬ」との神示が得られた。
『肥前国風土記』佐嘉の郡 荒ぶる神が道行く人を多く殺した。「土で人形・馬形を作り、祭祀すればよい」との占いのままに神を祭ると、神の心は和んだ。
*空から落ちて来た星(=隕石)が、「私を祀れ」と要求する→〔惑星〕6の星高山の伝説。
★2.神が苦を訴える。
『古事談』巻3-92 松尾明神が7月なのに寒さを嘆き、空也上人に「法華の衣は薄く、妄想顛倒の嵐・悪業煩悩の霜にせめられて寒し」と訴える。上人が40余年法華経を読み染めた衣を着せると、松尾明神は「暖かになった」と喜ぶ〔*『発心集』巻7-2に同話。『三国伝記』巻6-15の類話では10月のこととする〕。
*神が、仏法興隆を願う→〔玉(珠)〕6の『古今著聞集』巻1「神祇」第1・通巻26話。
★3.神への非礼。
『金毘羅』(森鴎外) 小野博士は四国の高松へ講演に出かけ、琴平の旅館へ入ったが、金毘羅様には参詣しなかった。「金毘羅は荒神ですから、ここまで来て参詣しないと祟(たた)るかもしれません」と言う人がいた。博士が東京へ帰ると、2人の子供(百合さんと赤ん坊)が病気になった。博士は奥さんに金毘羅不参のことは言わなかったが、奥さんは隣人の勧めで、虎の門の金毘羅様へ祈祷を頼みに行った。赤ん坊は死に、百合さんは助かった→〔正夢〕2。
『イスラーム神秘主義聖者列伝』「ジュナイド・バグダーディー」 導師ジュナイドが弟子たちの心を試そうと、「各自、誰にも見られぬ所で1羽の鶏を殺し、ここへ持って来い」と命じた。皆、すぐに姿を隠し、鶏を殺して戻って来たが、導師が目をかけていた1人の弟子だけは、鶏を生きたまま持って来た。「なぜ殺さなかったのか」と問われて、弟子は「どこへ行っても、神は私を御覧になっておられましたので」と答えた。
★5a.人間が神を傷つける。
『イリアス』第5歌 ギリシア軍とトロイア軍が激しく戦う中、ディオメデスはアイネイアスを打ち倒し、アイネイアスを救おうとする母女神アプロディテにも槍を向ける。女神アプロディテは掌の付け根を傷つけられ、悲鳴をあげて逃げ去る。さらにディオメデスは女神アテナの助けを得て、軍神アレスの下腹に槍を突き立てる。軍神アレスも呻き声をあげて天へ逃げ昇る。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第6章 神々が巨人(ギガス)たちと戦った時、「巨人たちは、神々によっては滅ぼされぬが、人間が味方となれば退治することができる」との予言があった。そこでゼウスがヘラクレスを味方に招き、ヘラクレスは神々と力を合わせて、巨人たちを殺した。
*人間だけが、神にも悪魔にも殺されぬ魔王ラーヴァナを滅ぼすことができる→〔転生〕3の『ラーマーヤナ』第1巻「少年の巻」。
★6a.「死ぬ神」と「不死の神」。
『金枝篇』(初版)第3章第1節 かつてグリーンランド人たちは、「風が彼らのもっとも強力な神を殺せる」と考え、また、「その神は犬に触れると死ぬ」とも考えていた。キリスト教の神の話を聞いた時、グリーンランド人たちは、「その神はけっして死なないのか?」と何度も尋ねた。「死なない」と知らされて彼らは大いに驚き、「それはさぞ偉大な神に違いない」と言った。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第7章 青年イダスとアポロン神が、少女マルペッサの愛を得ようと争った。マルペッサは「私が年寄りになった時、アポロン神は私を見捨てるかもしれない」と恐れ、イダスを夫に選んだ。
★6c.童女(をとめ)は八十年を経てすっかり年老いたが、神の子孫である天皇は不老だった。
『古事記』下巻 雄略天皇は、美しい童女・赤猪子(あかゐこ)を見て、「近いうちに召すゆえ、結婚せずにおれ」と告げる。赤猪子は天皇の迎えを待ち続け、80年がたった。赤猪子は「待ち続けた心の内を訴えよう」と、宮中に参上する(*→〔処女妻〕5b)。雄略天皇は「婚(まぐはひ)しようか」と思うが、赤猪子が老齢なので、それは不可能だった。天皇は赤猪子に多くの物を与えて、家へ帰した。
★7.流行の神。
『流行』(森鴎外) 「己」はゴチック様式の廊下を抜け、応接室へ入って主人に会った。年は30から40の間で、貴族的な顔をしている。「己」が主人と話しているうちに、精養軒から料理が届いたり、三越から洋服が届いたりする。主人は代金を払わず、逆に、店の側が商品に大金をそえて持って来る。主人が利用した店は必ず流行(はや)り、使用した物はよく売れるからなのだ。不意に雷が鳴って、「己」は目が醒めた。「己」は書斎の机によりかかって仮寐(うたたね)していたのだ。
*森鴎外の妹の孫にあたる星新一も、これに似た作品を書いている→〔女神〕2の『れいの女』。
★8.御神体。
石神様の伝説 茂草のヌカモリ山にまつられた神様は、子供好きだった。毎日、子供たちが神社へやって来て、石の御神体を縄でしばり、山の上から大谷地の水溜りに転がして遊んだ。ある日、通りかかりの女が「そんなことをすると罰が当たる」と言ったので、子供たちは遊びに来なくなった。神様はさびしがり、女を盲目にしてしまった〔*女は21日間、神様に詫び、開眼した〕(北海道松前郡松前町)。
*御神体の石を捨てたが、何事もなかった→〔禁忌〕10の『福翁自伝』(福沢諭吉)。
*御神体の珠を覗いて、神秘体験をする→〔星〕8の『故郷七十年』(柳田国男)「布川(ふかわ)時代」。
『コンタクト』(ゼメキス) 恒星ヴェガへ飛ぶポッド(=1人乗り空間移動装置)の、乗員選考が行なわれる。候補者の1人・女性科学者エリーに、宗教学者が「神を信じますか?」と問う。エリーは「私は実証主義者です。神の存在については、判断するデータがないので答えられません」と言う。エリーは無神論者と見なされ、「神を信じない人物を、人類の代表として宇宙へ送るわけにはいかない」との理由で、候補者から除外される〔*その後、エリーは2台目のポッドに乗り、銀河系の中心まで行く〕。
*神さまが身を隠し、「わしは存在しない」と言う→〔天国〕7の『天国に結ぶ恋』(三島由紀夫)。
★10a.すべてが神。
『テディ』(サリンジャー) テディは、今年10歳の天才少年である。彼は6歳の時、ある日曜日に「すべてが神だ」と知って、髪の毛が逆立った。妹はまだ赤ん坊でミルクを飲んでいたが、まったく突然に、「妹は神だ、ミルクも神だ」ということがわかった。テディは自分の前世を覚えていたし、間近に迫った死も予感していた→〔落下〕5b。
★10b.唯一絶対神。
『コーラン』6「家畜」74~78 イブラーヒーム(=アブラハム)は夜空に輝く1つの星を見て、「これぞ我が主(しゅ)」と言った。しかし星はやがて沈んだので、「姿を没するようなものは、気にくわない」と考えた。月を見て、「これぞ我が主」と言ったが、月も沈んだ。太陽が昇ったので、「今度こそ我が主じゃ。これが一番大きい」と言ったが、太陽も沈んでしまった。イブラーヒームは「わしは、偶像崇拝や多神教ときっぱり縁を切った。今こそわしは、天地を創造し給うた唯一絶対の神を信仰する」と断言した。
『屍鬼二十五話』(ソーマデーヴァ)第25話 修行僧が、自らの呪法を完成させるためにトリヴィクラマセーナ王を利用し、繰り返し死骸を運ばせる(*→〔背中〕3a)。王は、修行僧の「転輪聖王になろう」との野望を知って、彼を斬り殺す。大自在天シヴァが、王の果断な行動に満足して出現し、王に告げる。「私は自身の一部から、汝・トリヴィクラマセーナ王を創り出した。汝は全世界を征服し、天上の快楽を長く享受した後に、自らの意志でそれを捨て、終局的には私に合一するであろう」。
『小桜姫物語』(浅野和三郎)67 一つの神界の上にはさらに一段高い神界があり、そのまた上にもいっそう奥の神界があって、どこまで行っても際限がない。現在の「私(小桜姫)」どもの境涯からいえば、最高の所は、天照大御神様のしろしめす高天原の神界で、そこまでは、一心不乱に精神統一の修行をすれば、近づくことができないでもない。しかしそこから奥は、とても「私」どもの力量(ちから)では及ばない〔*高天原の神界から一段降(くだ)った所が、我々の住む大地の神界で、ここに君臨あそばすのが皇孫の命(ニニギノミコト)様である〕。
*宇宙は高次の神を産み、高次の神はいっそう高次の宇宙を創って、宇宙も神もどこまでも進化して行く、という『神への長い道』(小松左京)と類似する発想→〔宇宙〕2a。
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