石臼 石臼の概要

石臼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/11 13:42 UTC 版)

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食材を製粉するためネパール人女性が挽き石臼を使っている様子
スコットランドの手挽き石臼の上石。ノース・エアシャーのダルガーヴェンミル民俗博物館
食材を製粉するのに使用された、古代ネパールの石臼
現代でも道具屋であたりまえの日用道具として売られている石臼。3セットの挽き石臼が、積み重ねて置いてある。 これらの石臼は幅が僅か30cm程度である。(2010年、中国の海南省海口市にある市場の中にある道具屋の店頭にて。)

概要

石臼は、石でできた臼であり、さまざまな素材を挽いて[2]にするための道具である。

石臼は、上下一対のペアで使用される[3]。一般に挽き石臼では、下部の静止した石が「固定臼」と呼ばれ、上部の可動する石は「回転臼」と呼ばれる。中央の穴は「投入口(もの入れ)」と呼ばれるもので、ここから穀物などが臼の内側に送られる。また、脇に挽き手の差込穴があって回転臼を回すことができる[4]

歴史

こうした石臼は新石器時代に穀物を粉末に挽くために最初に使用された[5]。この意味では、この時代の石臼は考古学の研究対象ともなり、(考古学的な意味での)「石器」でもある。

新石器時代後期旧石器時代の人々は、石臼を使って穀物木の実根菜などを粉挽きしてから作った食品を消費していた[6]。後年になると食品だけでなく、顔料や製錬前の鉱石を粉砕する目的でも石臼が用いられるようになった。こうした石臼には「ひき臼」と「つき臼」がある[7][8]

西洋の石臼は、サドルカーンと呼ばれる磨臼(すりうす、学術的には石皿)から始まり、やがて上石を手動で平行回転させるロータリーカーンと呼ばれる手挽き石臼が出現する[7]。その後、手動ではなく動力を用いた「碾臼」ことミルストーンが開発される[7]

日本に回転式の挽き石臼が伝来したのは『日本書紀』によると7世紀頃といわれており、鎌倉時代から室町時代にかけて抹茶を挽く道具として上流階級に普及した[8]。石工の技術の発達とともに江戸時代には民衆にも普及した[8][9]

現代でも石臼は使われ続けており、電力供給をあまり当てにできない地域などでは石臼は今も粉にするための主要な方法である。また高速回転の刃で粉にして風味が落ちてしまうような上質の食品では、あえて高速回転の刃は避けて(高速回転刃によって食品が瞬間的に高温になってしまうのを避けて)、石臼で粉にするほうが高く評価されることも続いている。例えば茶の名産地の「宇治」の抹茶は、現在でも石臼によって茶葉が挽かれて(「石臼挽き」)抹茶となっている。石臼で抹茶を作ったほうが香りが良く、最高の抹茶は石臼挽き、という評価になっている。昔との違いと言っても、昔は動力が手動で石臼を回していたところを電動機(電気モーター)で石臼を回すようになった、というくらいの違いでしかない。

基本設計

上石は一般的に面形状で、下石は面形状である。古いゲール語の諺に「回転臼が凹んでいる時、挽き石臼は最高の成果をあげる」[10]とあり、上は凹面で下が凸面というのが望ましい形状である。時々リンズが木片(または別の素材)として存在し、中央の軸受け機構として機能しつつも[11]、穀物などを粉砕面に供給できるようになっている。上石には、もの入れの周囲に隆起した縁取りの杯状領域があるものもあった[12]。大半の回転臼には上面に挽き手の穴があり、利用者は棒を垂直に立てて使うことで、臼を回転させることが可能となる[13]

もの入れに投入された素材は、上石と下石の接触面の回転による摩擦で砕かれる[8][3]。日本では佐渡地方などを除いて反時計回りの臼である[8]。接触面には4から8分画の目が刻み込まれており、上臼の「もの入れ」から投入された原料は円周の外側に向かって進みながらせん断や摩擦により粉砕される[3]。関東や九州では6分画、西日本には8分画のものが多い[8]

材質

挽き石臼に最適なタイプの石は玄武岩のような火成岩である。これらには自然な粗い表面があるが、穀物は容易に分離しないので粉末になる素材が粗粒にならない。しかし、そのような岩石が常に利用できるわけではなく、砂岩珪岩石灰岩を含む多種多様な岩石から石臼が製造されている。

南レヴァントでは玄武岩の石臼が他の岩石から製造されたものよりも好まれたことが、ラターの調査により判明している。彼の主張によると、玄武岩の手挽き石臼は長距離輸送されたものだったので、日々の実用的な機能にもかかわらずステータスシンボルとしても使われていたという[14]


  1. ^ 鉄盤上で直径1-2mの鉄製ローラ-をいくつか旋転させ、圧砕と摩砕により穀物粒や岩石粒を粉砕する粉砕機のこと[34]
  1. ^ 上・下の石ふたつを組み合わせて使うのでquern-stonesと「s」をつけて複数形で用いる用語である。
  2. ^ 「挽いて」は「ひいて」と読む。「粉に挽く(こなにひく)」などと言う。
  3. ^ a b c 赤尾剛・林弘通・安口正之『食品工学基礎講座 固体・粉体処理』光琳、1988年、36頁
  4. ^ a b McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 113: 106. ISSN 0081-1564. 
  5. ^ a b Explore/Highlights: Quern stone for making flour”. London: The British Museum. 2019年5月16日閲覧。
  6. ^ Revedin, A (2010). “Thirty thousand-year-old evidence of plant food processing”. Proc Natl Acad Sci U S A 107 (44): 18815-18819. Bibcode2010PNAS..10718815R. doi:10.1073/pnas.1006993107. PMC: 2973873. PMID 20956317. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2973873/. 
  7. ^ a b c 三輪茂雄『粉』法政大学出版局、2005年、48頁
  8. ^ a b c d e f 石臼 青森県立郷土館
  9. ^ 石臼を挽こう 大野城市教育委員会
  10. ^ Burnet, Graeme Macrae (2015). His Bloody Project (First ed.). Glasgow: Contraband. p. II. ISBN 9781910192146 
  11. ^ 石臼の謎」木下製粉HP。2019年5月31日閲覧。リンズについても若干説明されている。
  12. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 106. ISSN 0081-1564. 
  13. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 112. ISSN 0081-1564. 
  14. ^ Rutter, Graham (2003). Basaltic-rock procurement systems in the southern Levant. PhD thesis, University of Durham. p. 236. http://0lem.wordpress.com/2011/06/16/basalt-procurement/ 2014年3月12日閲覧。 
  15. ^ Coe, Michael D. (1999). The Maya (Sixth ed.). New York: Thames & Hudson. p. 13. ISBN 0-500-28066-5 
  16. ^ Greenberger, Robert (2005). The Technology of Ancient China. Rosen Publishing Group. pp. 10. ISBN 978-1404205581 
  17. ^ Huang, H.T. (2000). Science and Civilisation in China: Volume 6, Biology and Biological Technology, Part 5, Fermentations and Food Science. 6. Cambridge University Press (November 30, 2000発行). p. 463. ISBN 978-0521652704 
  18. ^ Wright 1992:87f
  19. ^ Lease et al. 2001:235
  20. ^ 石皿とは」コトバンク、世界大百科事典 第2版の解説より。
  21. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 105. ISSN 0081-1564. 
  22. ^ a b J.T. Koch, An Atlas for Celtic Studies (2007), p. 150.
  23. ^ Ritti, Grewe & Kessener 2007, p. 159
  24. ^ E.W. MacKie, The broch cultures of Atlantic Scotland: origins, high noon and decline: part 2: The Middle Iron Age: high noon and decline c.200 BC - AD 550, Oxford Journal of Archaeology, vol. 29, no 1. (2010), pp. 89-117 (100).
  25. ^ Garnett, T. Observations on a Tour through the Highlands and part of the Western Isles of Scotland, particularly Staff and Icolmkill. Pub. T. Cadell. The Strand. P. 155.
  26. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 119 - 122. ISSN 0081-1564. 
  27. ^ a b c Freese, Stanley (27 May 2011). Windmills and millwrighting. Cambridge University Press. p. 14. ISBN 9781107600133 
  28. ^ Wood, Geoff (2003). Thorrington Tide Mill. Essex County Council. p. 13. ISBN 185281-232-X 
  29. ^ Peak District Millstones”. Stephen N Wood. 2010年4月10日閲覧。
  30. ^ Aikin, Arthur (1838). “On Corn Mills”. Transactions (Royal Society of Arts) 51: 121. 
  31. ^ 溝(目)の種類」、佐藤工房、2019年7月26日閲覧。
  32. ^ Wood (2003) p 19
  33. ^ NPS publication "Peirce Mill" GPO: 2004--304-337/00145 Reprint 2004
  34. ^ ローラミル」コトバンク、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説より。
  35. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 119: 106. ISSN 0081-1564. 
  36. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 113: 117. ISSN 0081-1564. 
  37. ^ Ewan Campbell, A cross-marked quern from Dunadd and other evidence for relations between Dunass and Iona, Proceedings of the Society of Antiquaries of Scotland, vol. 5, no. 117 (1987), pp. 105 - 117.
  38. ^ Janet and Colin Bord, Mysterious Britain (Garnstone 1973), 0-85511-180-1. P. 62.
  39. ^ Watson, William J. (1926). The History of the Celtic Place-Names of Scotland. Edinburgh : William Blackwood & Sons Ltd., p.187





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