無停電電源装置 歴史

無停電電源装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 05:18 UTC 版)

歴史

無停電電源装置の需要は古くからあったようで、静止型無停電電源装置は太平洋戦争以前には真空管式マルチバイブレータによるものが世界的に通信用として既に実用化されていたことが、残されている当時のいくつかの通信機や通信設備などより知ることができる。また動力用としては、1946年に応用型といえるジャイロバスが作られている[7]

日本での本格的な需要は鉄道の近代化に伴う。太平洋戦争後、鉄道車両内での電気機器の利用などの目的で、発電機や蓄電装置が鉄道車両に搭載され、例えば1500Vの直流モーターで交流100Vあるいは200Vの発電機を回すもの(電動発電機)、走行用とは別途搭載した小型のディーゼル機関で交流発電機を回すもの、あるいはその複合型、応用型など用途に応じたものが数多く作られ、実用に供されてきた。しかしこれらはここでいうところの無停電電源装置の応用型であるものが多く、以下、本稿では割愛する。

当初、大規模電源に実用されたのは回転型無停電電源装置であった。これは電動発電機の応用、古くからあるワードレオナード方式(より正しくはイルグナ方式)の応用である。すなわち交流電動機、交流発電機、発動機、フライホイールの組み合わせであり、それぞれを1つの回転軸で直結、商用電源によって交流電動機を回し、常時、交流発電機から得られた電力を負荷に供給するものである。商用電源が瞬停し交流電動機が乱れても、フライホイールの大きな慣性モーメントにより、交流発電機は暫くの間、安定して回転を続けることができることから、電圧と周波数の変動を抑えることができる。さらにフライホイールに蓄えられている回転エネルギーによって発動機を起動させると、商用電源の停電により交流電動機が停止しても、発動機によって交流発電機を回し続けることができ、無停電とすることができる。これが「CVCF」の原型である。日本では主に日本電気精器がこの方式のものを生産した。また上述、ピークカットへの応用も当初は回転型無停電電源装置でなされており、これは超大型のフライホイールを用いたものであった。すなわち発動機を持たないもので、小型の電動機でゆっくりとフライホイールを回し始めて回転エネルギーを蓄積、所定回転速度まで達したところで大型発電機と負荷を接続、負荷に瞬発的な大電力を供給するものである。核融合実験などの特殊な用途に用いられてきた。現在もこれはフライホイール・バッテリーとして、研究開発が続けられている。

1960年代静止レオナード方式の登場と並行するようにサイリスタを使用した静止型無停電電源装置の製品化が始まった。このサイリスタ自身には自分で電流を0にする能力(自己遮断能力)が無く、別の回路で電流遮断を行う必要があった。

1980年代になると、自己遮断能力を持ったGTO・パワートランジスタが現れ、素子自体の電流を遮断する回路(転流回路)が不要になった。これにより、高効率・小型化が進み、最大容量もかつての300kVA程度から500kVA程度までの大きなものが実用化できるようになった[8]

1990年代には、大電力かつ、GTO・パワートランジスタの約10倍以上[9]にあたる高速スイッチング動作の可能な、IGBTが無停電電源装置に使われるようになった。これにより、従来の素子では難しかった高周波によるPWM制御が可能になり、効率がさらに向上した。


注釈

  1. ^ 特に二次電池の劣化については致命的な欠点の一つとなり、経年によって非常に大きな劣化が発生する。製品にもよるが出荷時のバッテリー容量の20%から50%を下回った段階でいわゆる"寿命"が訪れ、内蔵バッテリーの交換もしくは製品の入れ替えを行う必要がある。

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