果物 果物の概要

果物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 14:28 UTC 版)

樹木になっている状態の果物の一例(リンゴ
樹木にならないイチゴなどは「果実的野菜」に分類される。

英語でfruitと言えば果実全般である(日本語の「果実」よりもさらに広い範囲を指す)。日本語の「果物」は、食用になる果実及び果実的野菜(後述)のうち、強い甘味を有し、調理せずそのまま食することが一般的であるものを「果物」と呼ぶ傾向がある。狭義には樹木になるもののみを指す。農林水産省では、統計上、果実は果樹(木本性などの永年作物)になるものとしつつ、野菜に分類されるもののうちイチゴメロンスイカなど果実的な利用をするものを「果実的野菜」として扱っている[1]


概説

果物とは、食用になる果実のことである。 果物はさまざまな栄養素を含んでいる。人体に必要な糖分カリウムビタミンが豊富なものも多い。→#栄養面や効能

果実を乾燥させ、ドライフルーツとする例も多い。乾燥させた場合、糖分の濃度が高くなり、保存に適する。中東ではデーツナツメヤシの果実を乾燥させたもの)が古くから広く親しまれており、聖書にも登場する。「砂漠の旅で食料が尽きてもデーツの実ひとつぶ食べれば数日生き延びられる」などといわれている。なお乾燥した国では、生のみずみずしい果物は分の補給源としても重要な役割を果たしている。日本では果物は、糖分補給のため(甘みを楽しむため)や、ビタミン源として摂られてきた歴史がある。

料理に利用したり、パンクッキーに入れられることもある。その甘みや酸味や香ばしさなどを利用する。種によってはタンパク質分解酵素を含む(パイナップルパパイヤなど)ため、肉類を柔らかくする効果のために利用される場合もある。砂糖を加えて煮込みジャム(やコンポート類)にして保存している。それをパンクラッカーに合わせたり、あるいはヨーグルトチーズなどの乳製品と合わせて朝食時に食べることもある。また午後の「お茶」や「おやつ」の時間に、イギリスでは「午後の紅茶」の場でジャムやコンポート類を味わったり、北欧のお茶の時間「フィーカ」ではさまざまな形で果物を取っている。日本の「おやつ時」などに生の果物を食べたり、あるいはパンにジャムを塗って食べたり、ヨーグルトにジャムを加えたもの食べる、なども広く行われている。

果物の中には、糖分だけでなく酵素まで含み、(さほど手間をかけずとも、つぶして放置するだけで)それ自体で発酵し酒となるものもあり、の原料としても用いられてきた。代表的なものとしてブドウの実がある。もともと糖分と酵素の両方を含み、潰して放置しておくだけで勝手に発酵して酒(ワイン)になる。ワインは「最も古くから存在する酒」や「最初の酒」と推定されており、地中海周辺ヨーロッパ(の大陸側)で太古から最も飲まれている酒であり、そして欧米諸国(南米オーストラリアも含む)でも非常に広まっていった。日本でも中世に宣教師が持ち込み、さらに1870年にワイン醸造所が作られそれ以降醸造もはじまり、現在では世界中で飲まれている。リンゴの実の発酵酒(シードル)も同様である。果実から作る酒を(ブドウの実のワインは別格として、それ以外の果物から作る酒を)フルーツワインと言う。

果物は欧州でも日本でも、昔から、贈答品や、入院した人などへのお見舞いの品として利用されることも多い。

熱帯果樹では「三大果物」と呼ばれるのがマンゴーチェリモヤマンゴスチンである。ドリアンは「果物の王」、マンゴスチンは「果物の女王」とも言われる。

食べられる果実がなる樹木を果樹と言う。

日本では古代から中世の時代には果物は菓子の中に包摂されていたが、江戸時代中期に加工品については「菓子」、果実は「水菓子」と記すようになり菓子とは別種のものとして理解されるようになっていった。さらに幕末期の京坂で果実を「クダモノ」と言うようになり果物の名称が成立した[2]

果樹による分類

以下の分類は『農学基礎シリーズ 果樹園芸学の基礎』を参照している[3]

落葉性果樹

仁果類

花床(花托とも)という花柄の先端にある部分が発達して果実になる、即ち偽果と呼ばれるタイプの果実をつける。英語ではPome fruitと呼ばれる。

核果類

子房壁が発達して果実になるタイプの果実(真果)をつけるもののうち、内果皮が硬化し種子に殻が形成され、核と呼ばれる状態になる。バラ科サクラ属に見られる。英語ではStone fruit(ストーンフルーツ)と呼ばれる。

殻果類

種実類、または堅果類とも呼ばれる。果皮が乾燥して硬くなっており、主に種子を食用として用いる果樹。アーモンドは果実の構造としては核果類と同様であるが、種子を食用とするため、堅果類に分類される。英語ではNut(ナッツ)と呼ばれる。

なお、これはあくまでも上記農学書にしたがって掲載するものであって、通常の日本語でアーモンドや胡桃、カシューナッツなどの可食部を指して「果物」と呼ぶことはほぼない(意味が通じるかという観点から言えば「果物」と呼ぶのは語彙の誤用であるといって差し支えない)。これらを包括的に指す名称は通常「ナッツ」である。

その他

高木性
低木性
つる性

液果(berry)

ブドウ、キウイフルーツ、カキなどのように成熟すると果肉細胞がほぼ液胞で占められ多汁で軟らかくなる果実を液果(berry、ベリー)と呼ぶこともある。

常緑性果樹

柑橘類

ミカン科のミカン属、キンカン属、カラタチ属などに属する植物の総称。カラタチ以外は常緑性。

その他

熱帯果樹

トロピカルフルーツ。亜熱帯から熱帯に分布する常緑性の果樹。


注釈

  1. ^ 青木直己『図説 和菓子の今昔』(2版)淡交社、19-21頁。 によれば、「水菓子」は、果物が菓子を意味していたことの名残り。果物や木の実は弥生時代以降の食料環境の変化に伴って食料から徐々に嗜好品としての側面が強くなり、長い年月をかけて「菓子」の一分野となった。「菓子」の字義からも果物などが菓子をさしていたことが解る。

脚注

  1. ^ 野菜と果物の違いを教えてください。また、すいか、メロンは野菜、果物のどちらですか。:農林水産省 - ウェイバックマシン(2019年9月16日アーカイブ分)
  2. ^ 並松 信久、2021年、「和菓子の変遷と菓子屋の展開」、『京都産業大学日本文化研究所紀要』26巻、京都産業大学日本文化研究所、ISSN 1341-7207NCID AN10537878 p. 303
  3. ^ 『農学基礎シリーズ 果樹園芸学の基礎』一般社団法人 農山漁村文化協会、2013年10月25日、21頁。ISBN 978-4-540-42204-1 
  4. ^ a b c 羽根 則子『増補改訂 イギリス菓子図鑑 お菓子の由来と作り方』誠文堂新光社、2019年、207頁。 
  5. ^ 国立がんセンターがん対策情報センター (2009年2月25日). “日本人のためのがん予防法:現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法”. 2008年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年12月1日閲覧。
  6. ^ WHO technical report series 916. Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases, 2003 & IARC monograph on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume83, Tobacco Smoke and Involuntary Smoking, 2004
  7. ^ 高齢者高血圧治療のこつ、久代 登志男、日本老年医学会雑誌、Vol.47 (2010) No.2 P123-126
  8. ^ Corliss, Julie (2023年1月1日). “Novel procedure may lower stubbornly high blood pressure” (英語). Harvard Health. 2022年12月25日閲覧。
  9. ^ 青澤直子. “第31回ハミウリ”. WOM Bangkok. 2020年4月4日閲覧。
  10. ^ Nishikimi M, Kawai T, Yagi K (October 1992). “Guinea pigs possess a highly mutated gene for L-gulono-gamma-lactone oxidase, the key enzyme for L-ascorbic acid biosynthesis missing in this species”. J. Biol. Chem. 267 (30): 21967–72. PMID 1400507. 
  11. ^ Martinez del Rio C (1997). “Can Passerines Synthesize Vitamin C?”. The Auk 114 (3): 513-516. http://elibrary.unm.edu/sora/Auk/v114n03/p0513-p0516.pdf. 
  12. ^ Pollock JI, Mullin RJ (May 1987). “Vitamin C biosynthesis in prosimians: evidence for the anthropoid affinity of Tarsius”. Am. J. Phys. Anthropol. 73 (1): 65–70. doi:10.1002/ajpa.1330730106. PMID 3113259. 
  13. ^ The Development of Agriculture”. web.archive.org(ナショナルジオグラフィック) (2016年4月14日). 2024年6月12日閲覧。
  14. ^ Janick, Jules (2005-02-14). Janick, Jules. ed (英語). The Origins of Fruits, Fruit Growing, and Fruit Breeding. Wiley. pp. 255–321. doi:10.1002/9780470650301.ch8. ISBN 978-0-471-66693-6. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/9780470650301.ch8. 
  15. ^ Tracing antiquity of banana cultivation in Papua New Guinea”. The Australia & Pacific Science Foundation. 2007年8月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年9月18日閲覧。
  16. ^ Denham, T.P.; Haberle, S.G.; Lentfer, C.; Fullagar, R.; Field, J.; Therin, M.; Porch, N.; Winsborough, B. (2003). “Origins of Agriculture at Kuk Swamp in the Highlands of New Guinea”. Science 301 (5630): 189–193. doi:10.1126/science.1085255. PMID 12817084. https://espace.library.uq.edu.au/view/UQ:163692/HCA10UQ163692.pdf. 
  17. ^ 清水, 克志「近代日本における果物の普及に関する一考察」2021年3月31日、doi:10.34378/00000041 
  18. ^ 植物防疫情報No.24 サイト:農林水産省 発行所:農林水産省横浜植物防疫所
  19. ^ 毎月8日は果物の日 - 日果連ホームページ 2010年4月9日閲覧


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