Let It Bleedとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Let It Bleedの意味・解説 

レット・イット・ブリード

(Let It Bleed から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 02:48 UTC 版)

レット・イット・ブリード
ローリング・ストーンズスタジオ・アルバム
リリース
録音
  • 1968年11月16日 – 17日 (1968-11-16 – 1968-11-17)
  • 1969年2月10日 – 11月2日 (1969-02-10 – 1969-11-02)
ジャンル ロック
時間
レーベル
プロデュース ジミー・ミラー
専門評論家によるレビュー
ローリング・ストーンズ アルバム 年表
  • レット・イット・ブリード
  • (1969年 (1969)
テンプレートを表示

レット・イット・ブリード』(Let It Bleed)は、1969年にリリースされたローリング・ストーンズオリジナルアルバム。プロデューサーはジミー・ミラー、レコーディングエンジニアはグリン・ジョンズ。全英1位[2]、全米3位[3]を記録。

解説

前作『ベガーズ・バンケット』と共に彼らの最良のアルバムと称賛され、ロック・アルバムの古典の一つと見なされる。本作タイトル『レット・イット・ブリード』は、しばしばビートルズの『レット・イット・ビー』のパロディだとされるが、それは正確ではない(『レット・イット・ビー』のリリースは1970年5月)。本作の制作中にブライアン・ジョーンズが脱退。その直後、後任ギタリストミック・テイラーが加入。本作はジョーンズが参加した最後のアルバムであると共に、ジョーンズとテイラーが参加した曲が同時に収められた唯一のオリジナル・アルバムでもある。

本作の収録曲でジョーンズがギターを弾いた曲は1つもなく、またテイラーが参加したのは「カントリー・ホンク」と「リヴ・ウィズ・ミー」の2曲のみで、本作で聴けるギターは大半がキース・リチャーズによるものである。また、初めてリチャーズが単独でリード・ボーカルを担当した曲(「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」)も収録されている。本作に収められた楽曲は、歌詞の内容が戦争レイプ殺人麻薬中毒といった荒涼としたものとなっているが、これについてミック・ジャガー1995年のインタビューで「当時はすごく暴力的で荒々しい時代だったからね…ベトナム戦争だよ。テレビでもその映像がたくさん映し出されてたしね」と説明している[4]

ジャケットのケーキは、著名な料理家であるデリア・スミスが制作した。レコードの内袋に各クレジットが記載されており、ステレオ盤は青、モノラル盤は赤で印刷されていた。ストーンズのスタジオアルバムでモノラル盤が製作されるのは、本作が最後となった。クレジットには「このレコードは大音量で再生すべし(THIS RECORD SHOULD BE PLAYED LOUD)」というメッセージが大きく入れられている。

経緯

本作の制作は1968年11月、ロンドンオリンピック・スタジオでの「無情の世界」の録音から始まった[5]。この間、ジョーンズの最後のステージとなった「ロックンロール・サーカス」をはさみ、翌1969年2月から6月にかけて再びオリンピック・スタジオで録音を行った。だがこの頃になるとジョーンズはレコーディングに参加する事自体がほとんどなくなっていた[6]。本作に収録されたジョーンズが参加した曲は2曲のみで、その2曲とも重要なパートは任されていない。またこの間の5月28日に、ジャガーと恋人のマリアンヌ・フェイスフル麻薬所持により逮捕されるという出来事もあった[7]

ジョーンズはこの年の5月にメンバーにストーンズ脱退の意向を打ち明けており、グループは話し合いの末、ジョン・メイオールから推薦された当時20歳のミック・テイラーを招聘し、レコーディングを続行した[8]。6月8日にジョーンズはストーンズを正式に脱退、その直後の7月3日に自宅のプールで溺死した。その後、ジョーンズの追悼ライブとなったハイドパーク・コンサートやジャガーの主演映画『太陽の果てに青春を』の撮影を挟んで、10月に再びハリウッドワーナー・ブラザース・スタジオでレコーディングを行い、27日までに完成させた。一連のセッションでは、マリアンヌ・フェイスフルに提供した「シスター・モーフィン」(『スティッキー・フィンガーズ』収録)、また「ラヴィング・カップ」、「オール・ダウン・ザ・ライン」(共に1972年のアルバム『メイン・ストリートのならず者』収録)の初期バージョン、そして「ジャイビング・シスター・ファニー」、「アイム・ゴーイング・ダウン」、「アイ・ドント・ノウ・ホワイ」(スティーヴィー・ワンダーのカバー)、「ダウンタウン・スージー」(ビル・ワイマン作)(いずれも1975年の編集盤『メタモーフォシス』収録)も録音された。本作のレコーディングの間に、ジャガー、ワイマン、チャーリー・ワッツは、本作にゲスト参加したニッキー・ホプキンスライ・クーダーと共にジャム・セッションを行っており、1972年にはその時の演奏を収録したアルバム『ジャミング・ウィズ・エドワード』が発売されている[9]

本作のリリースに伴い、グループとして2年ぶりの、そして6回目となる北米ツアーが1969年11月7日のコロラド州フォート・コリンズ公演から開始された[10]。本ツアーの最終公演、12月6日のカリフォルニア州オルタモント・スピードウェイでのフリーコンサートで、会場警備を担当したヘルズ・エンジェルスの手により、黒人青年メレディス・ハンターが刺殺された(オルタモントの悲劇)。これらの映像は映画『ギミー・シェルター』で公開された。また、11月9日のカリフォルニア州オークランド・コロシアム公演は『Liver Than You'll Ever Be』というブートレグとしてリリースされ、これが彼らの初のブートレグとなる。このブートレグが、公式ライヴ盤『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』のリリースを早めたとされる[11]

評価

イギリスではアフターマス以来3年ぶりに1位を獲得。アメリカでは3位とダブル・プラチナを獲得した[12]。セールス面のみならず各プレスからの評価も上々で、ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌は「なんてすごいアルバムだろう」「各曲にバラエティがあり、何度でも聴き返したくなる」と賞賛している[13]。ジャガーやリチャーズも、気に入っているアルバムとして本作を挙げている[14][13]

『これが最高!(Critic's Choice Top 200 Albums)』(1979年 クイックフォックス社)の英米編では8位、日本編では4位にランクされ、「Q」マガジンのグレーティスト・アルバム読者投票(1998年)では69位、ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500(2020年版)では41位[15]2003年にはTVネットワークのVH1がグレーティスト・アルバムで24位に選出した。

リイシュー

2002年8月に、アブコ・レコードよりリマスターされた上で、SACDとのハイブリッドCDとしてデジパック仕様で再発された。2016年、デッカ時代のオリジナルアルバムのモノラル版を復刻したボックスセット『ザ・ローリング・ストーンズ MONO BOX』で、モノラル版が初めてCD化された[16]

発表からちょうど50年となる2019年、最新リマスター版が「50周年記念エディション」として、ユニバーサルミュージックグループからリリースされた(リマスタリングはボブ・ラドウィック)。日本限定の2CDエディションは、オリジナルステレオ、モノラルミックスをそれぞれハイブリッドSACDに収録、さらに「ホンキー・トンク・ウィメン」の日本初回盤ジャケットを再現、UK盤にのみ付属していたポスター、日本初回盤LP帯、そして80ページのブックレットを付属している。さらに輸入盤のボックスセットには、2CDエディションのハイブリッドSACDに加え、LP盤2枚、そしてシングル「ホンキー・トンク・ウィメン」SP盤も付属し、2LP+2CD+SP盤の5枚組となっている。1枚組の通常CD、LP盤もそれぞれ発売[17]

収録曲

特筆無い限りジャガー/リチャーズ作詞・作曲。

SIDE A

  1. ギミー・シェルター - Gimme Shelter - 4:31
    • 当時激化していたベトナム戦争に強い影響を受けた曲。オルタモントの悲劇を収めたドキュメンタリー映画のタイトルにも使用された。日本では1971年に独自にシングル・カットされた[18]
  2. むなしき愛 - Love in Vain (Robert Johnson) - 4:19
    • ロバート・ジョンソンのカヴァー。リリース当時は作曲クレジットが「トラディショナル」となっていたが後に修正された[12]。この曲のカバーのきっかけは、マリアンヌ・フェイスフルがミックに「あなたは何故今まで、あなたの大好きなロバート・ジョンソンの曲をレコーディングしなかったの?」と言ったことだという。前述の通り、ライ・クーダーが本アルバムのセッションに参加しているが、最終的に彼のクレジットがあるのは本曲のみである。
  3. カントリー・ホンク - Country Honk - 3:07
    • 先行シングル「ホンキー・トンク・ウィメン」をカントリーミュージック風にアレンジした別テイク盤。タイトルの「Honk(警笛)」にかけて、曲の冒頭と終わりに自動車のクラクション音が挿入されている。
  4. リヴ・ウィズ・ミー - Live With Me - 3:33
  5. レット・イット・ブリード - Let It Bleed - 5:28
    • アルバムタイトル曲。これも日本では独自にシングル・カットされた[18]

SIDE B

  1. ミッドナイト・ランブラー - Midnight Rambler - 6:53
    • 映画『絞殺魔』のモデルにもなったボストン絞殺魔事件をヒントにした曲。ブライアン・ジョーンズを含めたオリジナルのメンバーのみで録音された最後の曲。コンサートでは頻繁に演奏されている。
  2. ユー・ガット・ザ・シルヴァー - You Got the Silver - 2:50
    • キース・リチャーズが初めて全編リードボーカルをとった曲。ジョーンズ最後の参加作品。
  3. モンキー・マン - Monkey Man - 4:11
    • タイトルはドラッグ・ジャンキーを意味している[12]
  4. 無情の世界 - You Can't Always Get What You Want - 7:29
    • シングル「ホンキー・トンク・ウィメン」のB面として初登場。シングルでは短縮されたバージョンだったが、ここではフルレングスで収録されている。本作中最初に録音された曲で、「ロックンロール・サーカス」でも披露されている。

参加ミュージシャン

※アルバム記載のクレジットに準拠

ローリング・ストーンズ
参加ミュージシャン

チャート成績

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b Rolling Stones* - Let It Bleed (Vinyl, LP, Album) at Discogs
  2. ^ a b STONES Official Charts Company:
  3. ^ a b The Rolling Stones | Billboard
  4. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」(株式会社ロッキング・オン2003年)56頁
  5. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年ISBN 978-4401616541)177頁
  6. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)187頁
  7. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)189頁
  8. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年ISBN 4-7897-0781-4)343-344頁
  9. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)196頁
  10. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)197頁
  11. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)198頁
  12. ^ a b c 日本版リマスターCD(2002年)の越谷政義による解説より。
  13. ^ a b Let It Bleed:” (英語). 2016年12月18日閲覧。
  14. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」(株式会社ロッキング・オン、2003年)58頁
  15. ^ Little Richard, 'Here's Little Richard'” (英語). 2016年12月18日閲覧。
  16. ^ THE ROLLING STONES | ザ・ローリング・ストーンズ - ザ・ローリング・ストーンズ MONO BOX (7インチ紙ジャケット仕様) - UNIVERSAL MUSIC JAPAN:
  17. ^ レット・イット・ブリード 「50周年記念エディション」「日本限定7インチ・デラックス」「SA-CD HYBRID」「SA-CD」 - ザ・ローリング・ストーンズ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
  18. ^ a b アーカイヴシリーズvol.4「ザ・ローリング・ストーンズ['69-'74]」(シンコー・ミュージック刊、2002年、ISBN 4-401-61774-6)116頁
  19. ^ Image : RPM Weekly - Library and Archives Canada” (英語). 2021年8月9日閲覧。
  20. ^ a b c d e f g h i lescharts.com - The Rolling Stones - Let It Bleed
  21. ^ Gold/Platinum - Music Canada
  22. ^ Award - bpi
  23. ^ Platinum - RIAA

「Let It Bleed」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

Let It Bleedのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Let It Bleedのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのレット・イット・ブリード (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS