2月の改正案(6月に否決)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 07:38 UTC 版)
「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の記事における「2月の改正案(6月に否決)」の解説
第28期東京都青少年問題協議会の答申を受け、2010年(平成22年)2月24日から始まる東京都議会に東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例案(以下、改正案)が提出された。この改正案は、第1条と第2条(及び附則)から構成されており、その内容に対して漫画家、作家、出版関係者、IT企業、そして、一般の市民などから様々な批判が噴出した。その結果、2010年6月の都議会本会議にて否決され、いったん廃案となった。改正案の内で問題点が指摘されていたのは、次のような点である。 改正案第1条 ここでは、インターネット利用環境の整備に関して、主に条例第18条の7及び18条の8の改正、並びに18条の6の2の新設によって、フィルタリングの推奨および解除時の書面の提出を義務化するなど、業者に対する規制の強化を規定する条項を条文に追加することが掲げられている。 改正案第2条 ここでは、多くの改正点が掲げられているが、特に問題視されたのは、条例第7条第2号の改正にて新設された「非実在青少年(ひじつざいせいしょうねん)」のくだりである。関連する条文の改正案の文言は次の通り(太字部分が、改正案において条文の文言が修正ないし新設された箇所である)。なお、以下の7条1号については改正案提出当時における条例7条において同様の文言を用いて、同様の内容の努力義務を事業者に課していたものである。 第7条(図書類等の販売及び興行の自主規制) 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催するもの及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当するものと認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は閲覧させないように努めなければならない。一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。 二 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係わる非実在青少年の姿態を視覚により認識することが出来る方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。 — 第三十号議案 東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例 「非実在青少年」は、改正案において「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」と定義され、その「非実在青少年」を相手方とする又は「非実在青少年」による性交又は性交類似行為に係る「非実在青少年」の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるものを青少年に対する販売、頒布、貸付、観覧を規制するよう努力規定が定められている。そして、その内、「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害する」(第8条第2号)ものを「不健全図書」の対象と定めている。この対象には、漫画やアニメ、ゲームなどが含まれるとされるが、東京都青少年・治安対策本部青少年課は「小説(官能小説も含む)は含まれない」としている。小説が含まれないとされる条文上の根拠は、7条2号において「非実在青少年の“姿態”を“視覚”により認識することができる方法で」と描写方法の指定がされているためである。小説は「姿態を視覚により認識」させるものではない(読者は視覚によっては文字の連なりしか認識することができない)ため規制対象外となっている。 第18条の6の2の改正に関し、第7条で定められているもののうち、「青少年が性的対象として扱われているもの」、及び第18条の6の5第1項の図書類または映画など(いわゆるジュニアアイドル写真集)を「青少年性的視覚描写物」と定義し、「青少年性的描写物」を蔓延させないための機運の醸成と、蔓延の抑止に向けた活動の支援を定めている。 第18条の6の2から6の5の追加に関しては、児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延防止を目的とした項であり、第18条の6の4の第1項(案)には、「何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。」という一文がある。これは、罰則規定こそないものの、2010年の時点で児童ポルノ法が敢えて禁止していなかった単純所持を規制するものであり、条例制定権の逸脱である疑いも指摘されていた。なお、この第18条の6の4(案)は、第1項(案)の宛名が「何人」と規定される一方、第2・3項(案)の宛名が「都民」と規定されている。
※この「2月の改正案(6月に否決)」の解説は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の解説の一部です。
「2月の改正案(6月に否決)」を含む「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の記事については、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の概要を参照ください。
- 2月の改正案のページへのリンク