通例的に使用される分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 14:25 UTC 版)
「エンジンオイル」の記事における「通例的に使用される分類」の解説
上記API分類のグループI〜IIIでは粘度指数の規定があるが幅が広く同一グループであっても粘度指数にある程度の開きが生じる。ベースオイルにおいて粘度指数は重要な要素の1つである為、各グループの末尾に+を追加表示する事により分類を拡張、細分化したものを使用する事がある。以下の分類での粘度指数の数値はen:Lubricant#Base oil groupsを参考にしたが、この分類はあくまで通例的、慣例的なものであり厳格に定義されたものではない。 グループI+ グループIで粘度指数が103 - 108のもの。 基本はグループIと同様の溶剤抽出であるが、精製の調整もしくは何かしらの処理を追加する事により粘度指数などの性状の向上を図ったものが該当する。グループ1+の本来の目的は粘度指数の向上そのものではなく、低温流動性の向上および蒸発性の低減にある。近年のオイル規格では低蒸発性の規定が厳しく、さらに低温流動性が求められる粘度グレードの需要が高まっており規格や粘度によってはグループ1単独では要求に達しない事がある。その場合一定割合のグループII+/IIIのブレンドが必要となる。グループ1+ではグループ1に比べ低温流動性・蒸発性が改善しているため、ブレンド時のグループII+/IIIの比率を下げられるというのが生産における主な目的となっている。既存の溶剤精製プラントで低コストで導入が可能となるが、あくまで溶剤精製がベースとなるため通常のグループ1と比べて生産コストがかかるとされる。総合的な性能や生産性は水素化精製に劣り、新規にグループ1+製造プラントを建造するメリットは薄い。また既存設備を一定規模でアップグレードする場合は精製度が上がるため結果的にグループII/IIIに分類されるため存在的にも性能的にも際立ったものではなく後述のII+やIII+と比較すると表記される事は極めて少ない。 グループII+ グループIIで粘度指数が113 - 119のもの。 基本は従来のグループIIと同様の水素化精製となるが精製の効率化や前後の工程を改良する事で粘度指数を含む全体的な性能の向上を図ったもの。主に取られる手法としては脱ろう工程を従来の溶剤脱ろうや分解脱ろうから異性化脱ろうとする事で粘度指数を向上させる手法などがある。技術的にはグループIIIと重複する部分も多い。粘度指数こそグループIIIには達しないものの、一般的なグループIIIが水素化分解工程で一定量が低価値な燃料やガスに転化、高価値な潤滑油留分の収率が低くなるのに対し、グループII+はあくまで水素化精製をメインとするため原料から(多少の損失はあるものの)高効率に高性能で高価値な潤滑基油を得ることが出来る。従来ではグループIIにグループIIIブレンドしなければ製造できなかった規格・粘度のオイルをグループII+単独で製造する事も可能であるしグループIIIの比率を下げる事もできる。これらの理由からグループIIIに対しても充分な競争力を持つとしているため、グループ1+とは異なり新規のグループII+製造プラントも作られている。アメリカ本土の石油メジャーのプラントではグループIIIではなくグループII+の生産拡大が進んでいる。 グループIII+ グループIIIで粘度指数が140以上のもの。XHVIやワックス高度水素化分解・異性化を行ったものなど粘度指数が140を超える基油が該当する。ただし粘度指数を130以上とする場合もあり140に達しないものでもIII+を称する事もある。 大きく分けると低粘度グレードにおいても粘度指数が140を超えるものはワックスを水素化分解・異性化したもの、130を超える程度のものは通常のグループIIIとほぼ同様の精製工程だが高ワックスな原料を用いるのが一般的である(後者においても高粘度グレードは140を超えるものもある)。前者におけるワックスは天然ガス由来のGTLワックスや石油由来のスラックワックス等が用いられる。後者の場合は高ワックス原油を用いるか、水素化分解工程の前にワックスを増量する事でイソパラフィンを増やし粘度指数を向上させている。前者の場合は(品質にもよるが)比較的高価値となるワックスを原料にする上に、異性化において一定の部分が燃料やガスに転化し収率が低下するため製造コストは高くなる傾向があるが粘度指数に限れば同粘度のPAOを凌駕する性能を持つ。 近年では大規模なGTLプラントが稼働しはじめているが、これをグループVIに含める場合がある。
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