通俗小説の祖
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明代通俗小説の中でも最も早い時期に成立した『演義』は、嘉靖から万暦にかけて隆盛した様々な白話小説に大きな影響を及ぼしている。 『水滸伝』には前述の「病関索」のあだ名を持つ楊雄のほか、諸葛亮(孔明)の名から作られたとおぼしき孔亮・孔明の兄弟、関羽の子孫とされ風貌もそっくりな関勝、「豹頭環眼、燕頷虎鬚」と張飛的な外見を持つ林冲、「美髯公」という関羽と同じあだ名を持つ朱仝、呂布と同じく方天戟を操る小温侯呂方(温侯は呂布の諡号)など、『演義』を髣髴とさせる人物が多く登場する。前述の通り、登場人物が説三分を聞く場面もあるなど『演義』と『水滸伝』は相性が良かったらしく、明末の簡本の中には『精鐫合刻三国水滸全伝』(『二刻英雄譜』とも)など、ページの上半分に『水滸伝』、下半分に『演義』を配し、両方の作品を同時に楽しめる書籍も刊行された。 『水滸伝』も羅貫中が編したという伝説が生じているように、最初の通俗小説『演義』を著したとされた伝説の作家「羅貫中」の名はブランド化し、『残唐五代史伝』『三遂平妖伝』など後続の小説も羅貫中が書いた作品と銘打って売り出されることになる。また元々演劇の世界から強い影響を受けた作品だけに、『演義』の普及は逆に、演劇界へも大きな影響を与えた。京劇や布袋劇などの伝統劇では、三国ものの演目は『西遊記』や『封神演義』関連のものをしのぐ定番シリーズとなっている。
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