茶漬けにまつわる雑学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 17:58 UTC 版)
江戸時代の高級料亭八百善では一杯一両二分(だいたい10万円に相当する値段)という高額な茶漬けを客に出したことがある。上記の通り同時代にはファストフードとなっていた茶漬けを要求された八百善は、茶漬けに合う水を飛脚を使って多摩川の上流から取ってこさせたため、このような値段になったという話がある。 森鷗外の長女である森茉莉が『記憶の絵』というエッセイで明かしているところによれば、大の甘党であった森鴎外は饅頭を具とする饅頭茶漬けを旨そうに食べていたとされる。これは饅頭を4つ位に割って御飯の上に載せ、そこに煮えたぎった煎茶を掛けたものである。また、森鴎外の妹である小金井喜美子が『鴎外の思い出』で述べているところによれば、焼いた餅を醤油に浸したものを御飯の上に乗せて、そこにほうじ茶をたっぷりと掛けた、餅茶漬けを食べたとされている。 茶漬けはジャンルを問わず様々な作品にも登場する料理(それだけ普及した料理)である。例えば、昭和初期の風俗を描いた永井荷風の『濹東綺譚』においては、玉の井の私娼が、配達されたお櫃入りの冷や飯とアルミ鍋に盛られた薩摩芋の煮付けを食べるに当り、火鉢に掛けたアルミ鍋の薩摩芋、山盛りの沢庵とともに茶漬けをさらさら掻きこむ描写が幾度にも渡って描かれている。さらには、1952年には小津安二郎が監督をした『お茶漬の味』という映画が公開されたように、茶漬けが作品名にまで登場する例も見られる。他、例えば落語には『茶漬け間男』『茶漬け閻魔』といった作品もある。 「茶漬け」が出てくる諺も幾つか知られている。「朝腹に茶漬け」とは、物事が少しもこたえないこと。「茶漬けにひしこの望み」とは、ささやかな望みのこと。などがある。 茶漬けを嫌う習俗も存在する。トンネル掘削工事の作業員や職員、炭坑の坑夫などは、御飯に茶や汁をかける「茶漬け」や「汁かけ飯」を縁起が悪いとして避けており、家族にも食べさせることを禁じている場合がある。これは茶や汁をかけたときに御飯が崩れる様が、切羽の崩落や山の落盤を想像させるからである。このようにトンネル掘削の作業員が「茶漬け」「汁かけ飯」を忌み嫌うことは、テレビドラマ『黒部の太陽』でも描写されている。 「茶漬けにかけるのはお茶かお湯か」という論争があるが、そもそも茶漬けはご飯に茶をかける料理であるためかけるのは茶が正しい。なお、永谷園などの食品メーカーが販売している「お茶漬けのもと」には抹茶が含まれているため、湯を注ぐだけでお茶漬けを作ることができる。
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