立件した事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 08:06 UTC 版)
佐久間は検察官として任官されたものの、法務省の本省での勤務が長いことから捜査に従事した経験は少ない。東京地方検察庁特別捜査部に複数回在籍した経験を持つが、いずれも短期にとどまっている。なお、その間にいくつかの事件の捜査に従事し、中心的な役割を果たした。 長銀粉飾決算事件 「長銀粉飾決算事件」は、佐久間が主任検事として捜査を担当した。証券取引法違反および商法違反容疑で日本長期信用銀行の経営陣3名を逮捕・起訴したが、最高裁判所で被疑者全員に無罪判決が下され、冤罪だったことが確定した。特別捜査部が立件した大規模経済事件において被疑者全員の無罪が確定した完全無罪事件は、前身である「隠匿退蔵物資事件捜査部」時代を含めても史上初めてであり、特捜検察はじまって以来の事態となった。また、捜査の過程で、参考人聴取した日本長期信用銀行の関係者ら複数名が自殺している。 この事件の主要な争点は、日本長期信用銀行の不良債権査定の際に、大蔵省の通達した新しい決算経理基準を適用せず旧基準を適用した点である。検察は旧基準で査定したのは違法だと主張し、被告人らの主張と全面的に対立した。上告審の裁判長を務めた中川了滋は「新基準は大枠の指針を示したもので、適用するには明確性に乏しかった」と述べて検察の主張を退け、旧基準適用の違法性を完全に否定した。そのうえで、中川は「ほかの大手銀行18行のうち14行も長銀と同じ処理をしていた」と重ねて指摘し、当時の会計処理では旧基準を適用して査定することが一般的だったとしている。なお、この14行のうち立件されたのは、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の2行のみであり、そのほかの銀行には捜査自体が行われなかった。 下級審では被告人に有罪判決が下されているが、最高裁判所はそれらの有罪判決について「破棄しなければ著しく正義に反する」と強い口調で断じている。その結果、東京高等裁判所での有罪判決は破棄され、被告人全員の無罪が確定した。 防衛施設庁談合事件 「防衛施設庁談合事件」は、佐久間が特捜部の副部長として捜査の指揮を執った。競売入札妨害容疑で防衛施設庁技術審議官ら幹部を逮捕・起訴した。 福島県知事汚職事件 「福島県知事汚職事件」は、佐久間が特捜部の副部長として捜査の指揮を執った。収賄容疑で前福島県知事ら福島県庁の幹部らを逮捕・起訴した。東京高等裁判所の判決では、特定企業が受注させる行為が県の職務に対する社会の信頼を失墜させたことを認定はしたものの、知事の弟が受領した土地売買における時価との差額の利益を否定し、換金の利益に留まるとされ、追徴金も免除された。 PCI事件 「PCI事件」は、佐久間が特捜部の部長に着任する直前に発覚した事件であり、佐久間が部長として捜査の指揮を執った。2008年4月、東京地方検察庁特別捜査部は、特別背任容疑でパシフィックコンサルタンツインターナショナルの幹部らを逮捕した。同年7月、佐久間が特別捜査部の部長に就任すると、前任者より引き継ぎ捜査の指揮を執った。 しかし、東京地方裁判所は、特別背任容疑に問われた持ち株会社「パシフィックコンサルタンツグループ」の元社長に対し、無罪判決を下した。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長に対しては、脱税容疑は有罪としたものの、特別背任容疑については無罪とする判決を下した。2010年5月、東京高等裁判所は検察側の控訴を棄却し、特別背任容疑に問われたパシフィックコンサルタンツグループの元社長に対し、一審同様に無罪判決を下した。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長に対しては、一審同様に脱税容疑は有罪としたものの、特別背任容疑については無罪とする判決を下した。東京高等検察庁は上告を断念したため、持ち株会社の元社長の完全無罪が確定した。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長も、特別背任容疑については無罪が確定した。
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