科学技術政策局の評価
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ジミー・カーター政権は科学技術政策局(OSTP)に対しヴェラ・ホテル6911のデータを再調査し、探知された閃光が核実験によるものかどうか判断するために計装専門家の委員会の招集を求めた。結果は大統領任期中及び核の拡散防止と軍縮がテーマとして特に取り上げられた1980年の大統領選挙再選運動時にカーターにとって重要なものとなった 。SALT II条約は3ヶ月前に署名されアメリカ合衆国上院による批准を待っている状況であり 、イスラエルとエジプトは6ヶ月前にキャンプ・デービッド合意に署名していた。 カーター大統領の科学顧問でOSTP局長のフランク・プレスにより証拠を評価し事件が核爆発による可能性を判断する科学と工学の専門家の独立委員会が任命された。科学委員会自体の会長は国防総省の国防高等研究計画局の元局長でマサチューセッツ工科大学博士のジャック・ルイナが務めた。1980年夏の報告では、委員会は探知された光学的痕跡は実際の核爆発とは特に衛星の2つの検出器によって測定された強度比において重要な違いがあると指摘した。現在は機密解除されている報告書 ではヴェラ・ホテル衛星による測定の詳細が含まれている。 爆発を探知したのはいくつかのヴェラ衛星の一つに搭載された2組のセンサーだけであり、他の同様の衛星は地球の別の部分を監視していたか天候の状況により同じ出来事の観測を妨げた 。ヴェラ衛星は過去にフランスや中華人民共和国などの国々による41回の大気中の核実験を探知しており、その後に放射性降下物の試験を含む他の手段によって確認されている。ヴェラ事件の核起源の裏付けとなるものがないことはまた「二重の閃光」シグナルが未知の起源の偽の「動物園」シグナルであり、おそらく流星塵の衝撃によって引き起こされたことが示唆された。そのような核爆発を模倣した「動物園」シグナルは過去に数度受信していた。 それらの報告書では、閃光のデータは「過去に観測した核爆発からのシグナルの多くの特徴」を有している が、「慎重な調査では9月22日の出来事における光の痕跡に重要な偏りがあったことが明らかになり、核の出来事としての解釈に疑問が投げかけられた」と指摘した。彼らの最良のデータ分析ではセンサーが適切に較正されていれば、「閃光」の起源は偽の「動物園の出来事」だと示唆した。 従って彼らの最終決定はシグナルが核起源の可能性は排除できないとする一方で「関連する科学的評価における我々の経験に基づき、9月22日のシグナルは恐らく核爆発によるものではないというのが我々の共同判断である」というものであった。 Victor Gilinsky (アメリカ合衆国原子力規制委員会の元委員)は科学委員会の発見は政治的動機に基づいていると主張した 。核爆発が「二重の閃光」シグナルの原因だとを確認したような一部のデータが存在する。 同時刻に移動する「異常な」電離層の乱れがプエルトリコのアレシボ天文台で観測された が、地球の別半球で数千マイル離れていた。数か月後に西オーストラリア州で行われた試験で一部の核放射線レベルの上昇が見られた[要ページ番号]。 ニュージーランド国立放射線研究所による詳細な研究が行われたが、過剰な放射能の証拠は見つからずアメリカ政府が出資した核研究所においても同様だった 。ヴェラ・ホテルプログラムを手掛けていたロスアラモス国立研究所の科学者達はヴェラ・ホテル衛星の検出器は適切に機能しているとの確信を表明した。 当時エネルギー・核拡散に関する上院小委員会の事務局長だったLeonard Weissもまた特別委員会の発見について懸念を示し、イスラエルの核実験だとする増大するやっかいな意見に対抗するためにカーター政権によって仕組まれたものだと主張した 。イスラエルの核プログラムに関する具体的な情報は委員会に共有されず、それ故に委員会の報告書では政権が求めていた「もっともらしい否認」を作り出した。
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