砂糖業界による買収行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 04:50 UTC 版)
ハーヴァード大学の栄養学者、マーク・ヘグステッド(Mark Hegsted)らは、アメリカ砂糖協会(The Sugar Association)から資金を提供されて研究を行っていた事実を、複数の研究者たちが明らかにした。これはヘグステッドたちの死後のことであった。2016年、「アメリカ砂糖協会は、ヘグステッドを含む研究者たちに金を渡して買収し、糖分の過剰摂取に伴って発生する健康被害を長年に亘って隠してきた」という事実が、砂糖協会の保管記録から発見された。サイエンス・ジャーナリストのベス・モール(Beth Mole)は、「砂糖業界は研究者たちを買収し、食事における指針を何十年にも亘って歪めてきた」「堕落した研究者と、捻じ曲げられた科学文献は、50年近くもの間、砂糖の摂取の危険性から目を逸らさせ、食べ物に含まれる脂肪への責任転嫁に成功した。低脂肪・高糖質な食事の推奨は、現在起こっている肥満の流行の重大な原因である」と書いた。 これについて、砂糖協会は公式に表明を発表し、「我々としては、砂糖研究財団(砂糖協会の前身)は、すべての研究において、より高い透明性の責務を果たすべきであったということは認めるが、問題視されている研究が発表された当時は、資金開示や透明性の基準について、現在のように一般化されているわけではなかった」「ある業界から資金提供を受けた研究は腐敗したものになる、という烙印を押されるのは、不適切であるというだけでなく、酷い仕打ちだ」「我が協会は、砂糖と健康における役割についてなお理解しようと常に努力しているが、我々の主張は、質の高い科学と事実に基づいたものだ」と弁明した。 砂糖研究財団は、ハーヴァード大学の研究者3人、 - マーク・ヘグステッド、フレデリック・J・ステア(Frederick J. Stare)、ロバート・マクガンディ(Robert McGandy) - に資金を提供し、砂糖と冠状動脈性心臓病を結びつける研究に対抗するのを目的とした批評を書くよう要請した。1967年に「ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」(The New England Journal of Medicine, NEJM)に掲載された批評では、砂糖の摂取が冠状動脈性心臓病につながる証拠は限られていることを「発見」し、心臓病の危険性がある患者に対し、砂糖の消費については「気にすることはない」と書かれた。NEJMは、1984年までは研究者に対して資金の開示を要求しておらず、研究者は利益相反を開示する必要が無く、彼ら3人は砂糖研究財団から金を渡された事実を明らかにしなかった。 ヘグステッドらが砂糖協会から金を受け取っていた事実を公表したカリフォルニア大学サンフランスィスコ校のクリスティン・E・カーンス(Cristin E. Kearns)は、2000ページに及ぶ内部文書を保管しているという。カーンスによれば、砂糖研究財団がのちに政策立案者に提供した小冊子で引用した論文は、アメリカ国民に低脂肪食を薦めることで、砂糖の市場占有率を拡大させたがっていた業界の目論見の後押しになったという。 砂糖研究財団の副会長兼研究責任者、ジョン・ヒクスン(John Hickson)は、栄養研究の動向を注意深く監視していた。カーンスが明らかにした1964年の内部稟議で、ヒクスンは、「砂糖研究財団が『砂糖を拒否する態度』に対抗できるようにするための『重要な計画に着手しよう』」と考えていた。ヒクスンは、ハーヴァード公衆衛生大学栄養学科の学科長を務めていたフレデリック・ステアを、砂糖研究財団の科学諮問委員会に参加させた。1965年7月、砂糖と冠状動脈性心臓病の発症を関連付ける記事が医学雑誌『Annals of Internal Medicine』に掲載されると、ヒクスンはヘグステッドに助けを求めた。ヒクスンは、研究者たちに対して最終的に6500ドルを支払う契約を結んだ。これは現在の48900ドルに相当する。 これら一連の出来事の詳細は、アメリカ医師会雑誌(The Journal of the American Medical Association, JAMA)に掲載された。
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