石製模造品とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 石製模造品の意味・解説 

せきせい‐もぞうひん〔‐モザウヒン〕【石製模造品】

読み方:せきせいもぞうひん

古墳時代祭祀(さいし)用具の一。滑石などで武器・玉類・鏡・農工具などを小形に模造したもの。


石製模造品

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/15 15:36 UTC 版)

群馬県高崎市剣崎天神山古墳出土石製模造品(群馬県指定重要文化財)。群馬県立歴史博物館所蔵。

石製模造品(せきせいもぞうひん)は、日本列島古墳時代前期から中期に見られる、実物の器物を模して造った小型石製品ミニチュア品、仮器)の1種。武器武具刀剣甲冑)、農具工具刀子機織具)などを模したものがあり、各地の古墳のほか祭祀遺跡から出土する。古くは石製模造器具(せきせいもぞうきぐ)とも言った。祭祀に関わる遺物であるため「石製祭具 複合(せきせいさいぐ ふくごう)」と呼ぶ研究者もおり[1]、また多くが滑石製であることから滑石製品(かっせきせいひん)と呼ぶ傾向もある[2]

概要

京都府京都市鏡山古墳出土石製模造品。東京国立博物館所蔵。

古墳時代前期後半(4世紀半ば)以降に出現する、実際の器物を粗略に表現した軟質石材の石製品群を「石製模造品」と定義する事が多く、4世紀に出現する車輪石鍬形石などの、酸化凝灰岩碧玉を用いて精巧に造られた石製品群(前期古墳の副葬品に見られる)とは区別される。軟質で加工しやすい岩石を研磨して製作されており、滑石を使用したものが多いため滑石製模造品と呼ばれることも多いが、蝋石蛇紋岩蛇紋石)製のものも存在する[3]

古墳の副葬品のほか、川べりや岩陰などに所在する祭祀遺跡から出土する事が多く、祭祀に関わる遺物であると考えられている。川辺りの遺跡からの出土するものは、孔[注釈 1]を開けているものが多いことから、を通して樹木などに吊り下げて使用していたと考えられている[3][4]

石製模造品と同じく実用の器物を模したものとしては、土製のものや金属器のものも存在し、土製模造品や金属製模造品と呼ばれる[5]

学史において、これらを最初に報告したのは大野延太郎である。大野は1900年(明治33年)に『東京人類学会雑誌』169号誌上で、初めて「石製模造品」の名称を用いた[6][5]

この後、高橋健自が、模造された器物によって27種に分類した。この後、大場磐雄小林行雄らによる研究が知られる[2]

古墳に副葬されるものと、集落または集落近くの川辺り(遺跡としては旧河道として検出される)で出土するものとでは、模造された器物の構成に違いが見られる。古墳副葬品の場合、剣や盾などの武器武具のほか、刀子や斧・鎌などの農工具、鏡・櫛など、生活に関わる器物が見られる。これらは古墳に葬られた被葬者(首長)の政治的な性格を表すものと考えられている。これに対し集落遺跡から出土するものは、剣(剣形石製品)・鏡(有孔円板)等が多く、水辺における祭祀に使われたと考えられている[3]

類例

  • 武器・武具
  • 農具
  • 工具
  • 服飾具
    • (有孔円板)・(あしだ)・
  • 厨膳具
    • 臼(うす)・杵(きね)・案(つくえ)・槽(ふね)・坩(かん)・坏(つき)・盤(さら)
  • 機織具
    • (ひ)・筬(おさ)・千切(ちぎり)・腰掛(こしかけ)・紡錘車
  • その他

これらの分類法や名称の設定には、研究者ごとの分析視点や基準により異同があり、剣(剣形)や鏡(有孔円板)および類(臼玉など)を「石製祭祀遺物」として石製模造品とは別種とする意見もある[7]。また他の石製品群との区別が明瞭なものや、そうではないものもあり、見解が別れている。このため、滑石を用いたものに限った上での総称として「滑石製品」と呼ぶ事も行われている[8]

脚注

注釈

  1. ^ 底のある窪みである「穴」ではなく、貫通していることから「孔」の字を用いる。

出典

  1. ^ 北條 1999, pp. 2–5.
  2. ^ a b 清喜 2013, pp. 178–188.
  3. ^ a b c 公益財団法人 京都市埋蔵文化財研究所・京都市考古資料館 2023, p. 1.
  4. ^ 國學院大學. “國學院大学「古典文化学」事業”. 國學院大學. 2025年10月15日閲覧。
  5. ^ a b 斎藤 2004, pp. 243–244.
  6. ^ 大野 1900, pp. 282–286.
  7. ^ 石倉 1984, pp. 319–356.
  8. ^ 清喜 2013, pp. 73–76.

参考文献

関連文献

  • 大野, 延太郎「石製模造品に就て」『東京人類學會雜誌』第169号、一般社団法人 日本人類学会、1900年、282-286頁、ISSN 18847641 

引用文献

  • 石倉, 亮治「房総の石製模造品」『千葉県文化財センター研究紀要』第8号、千葉県文化財センター、1984年、319-356頁、 NCID AN00142443 
  • 北條, 芳隆「古墳時代前期の石製品研究をめぐって」『月刊 考古学ジャーナル』第453号、ニュー・サイエンス社、1999年12月、2-5頁、 ISSN 04541634 
  • 斎藤, 忠「石製模造品」『日本考古学用語辞典』学生社〈改訂新版〉、2004年9月、243-244頁。 ISBN 4311750331 
  • 清喜, 裕二 著「2.玉と石製品の型式学的研究 ③滑石製品」、一瀬和夫・福永伸哉・北條芳隆 編『副葬品の型式と編年』同成社〈古墳時代の考古学4〉、2013年5月31日、178-188頁。 ISBN 9784886216212 


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「石製模造品」の関連用語

石製模造品のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



石製模造品のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの石製模造品 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS