知能向上終焉の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 21:56 UTC 版)
Jon Martin Sundetらによる2004の論文では、1950年代から2002年の間にノルウェーの徴集兵に実施された知能テストのスコアが調べられた。その中で、一般的知性のスコアの増加が1990年代半ば以降に止まり、数的推理の下位検査では得点が低下したことが発見された。 TeasdaleとOwenによる2005年の論文では、デンマークの男性徴集兵に実施されたIQテストの結果が調べられた。1959年から1979年の間では、10年あたり3ポイントの上昇がみられた。1979年から1989年の間の上昇はほぼ2IQポイントであった。1989年から1998年の間の上昇は約1.3ポイントであった。1998年から2004年の間では、IQは1989年から1998年の間に増えたのとほぼ同じだけ減少した。彼らは、「この低下の背景として、3-year advanced-level school programs[訳語疑問点]に入学する16〜18歳生徒の割合が同時に減少していることもありえる」と推測している。同じ著者による2008年のデンマークの男性徴集兵に関するより包括的な調査では、1988年から1998年の間に1.5ポイントの増加があったが、1998年から2003/2004年の間に1.5ポイントの減少があったことがわかっている。近年の衰退の原因として、デンマークの教育制度の変化も考えられる。また、デンマークでは移民やその直系子孫の割合が増加していることもその一因として考えられる。これは、デンマーク国籍の第1世代または第2世代の移民のスコアが平均を下回っているとするデンマーク徴集兵のデータによっても裏付けられる。 オーストラリアでは、レーヴン色彩マトリックス(CPM)によって測定された6〜12歳のIQは、1975年から2003年まで増加を示していない。 フリンによる2009年調査によると、英国では、1980年と2008年に実施されたテストでは、平均的な14歳のIQスコアがこの期間に2ポイント以上低下したことが判明した。上位層の成績はさらに悪化し、平均IQスコアは6ポイント低下した。しかし、5歳から10歳までの児童は、30年間でIQが年間最大0.5ポイント増加した。フリンは、英国の10代のIQの異常な低下は、若者文化が「停滞」したか、さらには衰弱したことが原因である可能性があると主張している。彼はまた、若者文化は、読書や会話よりも、コンピューターゲームを志向していると述べている。研究者のリチャード・ハウスは、この研究についてコメントし、テスト対策の教育に向かいがちな傾向があることだけでなく、コンピューター文化が本を読むことを減少させていることにも言及している。 Stefanssonらによる2017年の論文では、1910年から1990年に生まれたアイスランド人における学業成績に関連する多遺伝子スコアの低下が主張されている。しかし、観察された影響はごくわずかであり、ゲノム的影響がより大きく、その傾向が何世紀にもわたって続くと想定される場合に限り懸念となりうると指摘している。 BratsbergとRogebergによる2018年の論文では、ノルウェーのフリン効果が逆転し、平均IQスコアの当初の上昇とその後の低下のいずれもが環境要因によって引き起こされたという証拠を示している。彼らは、「環境に影響される尺度を使用して評価したときに隠れてしまう遺伝的要素の陰性選択の理論的可能性を排除することはできない」と結論づけ 、Stefanssonらの仮定による衰退を排除するまでには至らなかったものの、環境要因が低下のすべてまたはそのほとんどであると説明し、遺伝子型IQの仮定された低下は無視できると結論付けている。 世界保健機関と国際呼吸器学会環境委員会は、世界的に知能が低下している要因の1つとして、現在世界の人口の90%以上に影響を及ぼしている大気汚染の増加を挙げている。
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