由来と分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 06:47 UTC 版)
サイバーパンクの語源となるサイバネティクス(cybernetics)とは、本来はフィードバックの概念を核にして生理学と機械工学、システム工学、情報工学を統一的に扱う学問領域であるが、これが転じて脳神経機能の電子的・機械的補完拡張やコンピューターへの接続技術を指すようになった。さらに、人体の機能の一部を機械的・電子的に拡張ないし置き換えたサイボーグ(cyborg: cybernetic organからの造語)という概念がSFで盛んに用いられるようになっていた。サイバーパンクではこれらの人体と機械が融合し、脳内とコンピューターの情報処理の融合が「過剰に推し進められた社会」を描写する。さらに、社会機構や経済構造等のより上位の状況を考察し、それらを俯瞰するメタ的な視点・視野を提供するという点で従来のSFと一線を画する。 これらサイバーパンクを含む「テクノロジーの過剰な発達を土台とした世界や作品」は、一部ではテックパンクスとも呼ばれ、蒸気機関が現実の絶頂期の様相を越えて発展した社会や世界を描くスチームパンクや、電気機器の(現実を越えた、過剰な)発展による社会や状況、鉄塔や電線、碍子、真空管などのガジェットへの傾倒を描いたエレクトリックパンクなどといった類型も存在するが、これらはサイバーパンクからの派生ジャンルとみなされ、共に広義のSFに内包されるものとして取り扱われている。 サイバーパンクが成立した1980年代前半は、北米や欧州を中心にパーソナルコンピュータが一般家庭にも普及を開始し、原始的なネットワーク(パソコン通信)を伴って身近なものとなり、また各種の電子機器が民生機器として隆盛していた時代でもあり、一方で軍学共同の広域ネットワーク(インターネットの直接のルーツとなるARPAネットなど)の研究と普及も始まっていた。これら実在のガジェットや概念に触れる機会が増大したことで、それらが「過剰に発展した(近)未来への着想」をもたらしたという点でも、同時代の社会および科学・民生技術の状況がサイバーパンク成立の母体となったことは確かである。 一方、1990年代に入りインターネットの商用利用解禁や、ITバブルによるパーソナルコンピュータや携帯電話などの普及によってこれらが身近なものとなり陳腐化すると、サイバーパンク・ムーブメントの存在感や刺激は相対的に後退し、沈静化する。しかしこれは言い換えれば、90年代以降は、サイバーパンクの着想が大衆的に広く浸透し、あえてジャンル化する意義が見いだせないほど当たり前なものになった時代でもあるということである。さらにインターネットの普及、ユビキタス社会、AI社会の進展により、サイバーパンク的な感覚は一般的になった。
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