生産者から一般小売まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 15:49 UTC 版)
2019年時点の日本では、1000トンの鯨肉が生産され、1000トンを輸入している。密漁や密輸された鯨肉の存在を主張する見解もあるが、1998年を最後に検挙事例はない。 調査捕鯨の副産物は、調査捕鯨の実施主体である財団法人日本鯨類研究所が卸元である。市販用と公益用の区分があり、一般流通に回る市販用が生産量の8割以上を占める。市販用については、従来は、調査捕鯨の実務を委託されている日本共同船舶株式会社を通じ、各都道府県の中央卸売市場での販売などが行われてきた。2006年からは、鯨肉市場開拓などを目的とした新設の合同会社「鯨食ラボ」も加わって、新たな販路が検討されている。もっとも市販用といっても完全に自由な流通に委ねられてはおらず、各卸売市場への配分は過去の消費実績などを基に水産庁や有識者による検討で決定され、その後も公的性格を有する産品として農林水産省総合食料局流通課による指導の下で取引されている。その際には「なるべく公平かつ廉価に配分されるよう努めるもの」とされている。後述するような部位ごとに価格決定されて、刺身用などの鮮肉のほか、ベーコンや大和煮缶詰、カレーの具材などの加工原料として流通する。流通過程では遠洋漁業水産物一般と同様、ほとんどは冷凍状態で保存管理されるが、沿岸調査副産物の一部(100トン弱)は生鮮品としても流通している。 最終的にはスーパーマーケットなどの商店で販売されるほか、インターネットなどを通じた通信販売を行う小売業者も存在する。前出の鯨食ラボ社も、インターネット上で直営の通信販売事業を行っている。千葉県の房総半島の伝統食鯨のたれのように、地域の特産品となり、土産物として販売される例もある。 鯨肉の国内消費量は2010年代は毎年3000~5000トン前後である。日本捕鯨協会が2018年1月にまとめた消費者1200人アンケート調査によると、鯨肉を食べた人のうち76%が「おいしかった」と回答。牛肉・豚肉・鶏肉以外で「食べてみたい肉」の1位(43.8%)を占めたものの、「売っているところを見かけない」という回答も64.7%と多かった 小型捕鯨のうちツチクジラ以外の種類、及び岩手県や静岡県、和歌山県などで現在も行われているイルカ漁の産品は地元での消費が多い。生産量は両漁業をあわせてゴンドウクジラ類300トン強、イルカ類1000トン弱である。もっとも、時おり遠隔地まで流通する場合があり、伝統的に静岡からの流通がある山梨県のほか、東京都内のスーパーマーケットなどでも魚肉コーナーで販売されていることがある。イシイルカについては九州地方での利用が比較的多い。単に「鯨肉」と表示されてしまう場合もあるため、特にイルカ肉と認識されないで消費されることもあると思われる。ただし、これは現在ではJAS法上において不適切な表示にあたる。 鯨肉の小売価格は、かつてに比べると非常に高騰している。商業捕鯨再開後、肉質の向上と供給不足により当初期待されていた安価な食材としての鯨肉は実現しなかった。 なお、小型捕鯨業では、伝統的に捕鯨従事者への一種の現物支給として鯨肉分配がされる習慣があり、現在でも一部でそうした利用が継続している。周辺住民が解体場で骨に残った肉をはぎ取って安価で貰い受ける伝統的な消費形態も、少なくとも1990年代後半までは千葉県で続いていた。
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