犯行声明を巡って
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 14:59 UTC 版)
「京都小学生殺害事件」の記事における「犯行声明を巡って」の解説
「てるくはのる」と記された犯行声明は、当時の国民に一昨年の1997年(平成9年)に発生した神戸連続児童殺傷事件を連想させるもので、事件直後から早速、一部のスポーツ紙やワイドショーによる「謎解き」が始められた。捜査本部へ寄せられた情報提供も、12月23日までの125件中、91件が「ワープロのキーボードで変換するとイニシャルが浮かぶ」といった犯行声明の「解読」であったという。 インターネット上の電子掲示板でも、パソコンで変換方法を変えて入力するとメッセージやホームページのアドレスになる、テレビゲームのパスワードや呪文である、などといった独自の解釈が氾濫した。この中で、テレビで紹介されたホームページにはアクセスが集中するという現象もみられている。 こうした現象については懸念の声もあり、推理作家の有栖川有栖は、「神戸の事件で、犯人に『暗号を送れば注目される』という意識が芽生えたのでは。安易な推測は、犯人を刺激するだけでなく、他の潜在的愉快犯を誘発する」と指摘している。 また、新潟青陵女子短期大学の碓井真史教授(社会心理学)も、開設したホームページで「シャーロック・ホームズになるな」と呼び掛け、「メディアやインターネットでなぞ解きを紹介する際、犯人を刺激したり、模倣犯を生む可能性があることを考慮してほしい」とした。 一方、識者による分析も新聞等に掲載された。京都造形芸術大学の野田正彰教授(比較文化精神医学)は、「犯行文は、幼稚さを意図して書かれている」とし、「急に小さな字が入ったりするのは幼い感じもするが、本当はもう少しきれいな字が書ける人だろう。筆者は十代の可能性が高い。文章に矛盾はなく、普通にまとまっている。思考過程が乱れている人ではない。やり方が神戸の児童殺傷事件とよく似ていて、模倣犯と思える」と分析した上で、「犯人は、学校にうらみをもつから復讐(ふくしゅう)する。そのためには学校という組織の一角を傷つければいいという一つの物語を勝手に作って実行した。日野小に関係している人を殺すことが日野小を攻撃することになると思っているのは、まったくゲーム的思考だ。現実感が希薄で、作った物語を淡々と実行している」とした。 産業能率大学の安本美典教授(心理学)は、「全体が角張った字体で書かれている。これは筆跡を隠すためだと思う。この点は神戸の事件と似ている」とし、「いくつか訂正部分があるなど文章を書き慣れているようではない。全体的に子供っぽく、たどたどしい。小学生の高学年ぐらいの文章ではないか」と分析している。また、「文字を入れ替えた暗号にもみえるが、『る』という文字を二つ含んでおり、意味を成しにくい。犯人が恨んでいる人の名前の頭文字を並べている可能性もある」とした。
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