無人機による攻撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:56 UTC 版)
MQ-1 プレデターなど武装した無人攻撃機が世界で数多く登場しており、アフガニスタン紛争、イラク戦争などで実戦投入されている。主な任務は対地攻撃だが、2002年12月にスティンガーで武装したMQ-1 プレデターがイラク戦争でイラク軍のMiG-25と交戦し、互いに対空兵器を装備した有人機と無人機の史上初の空中戦となった。。 攻撃能力を持つ武装無人機がアフガニスタンとパキスタンでのターリバーン、アルカーイダ攻撃に参加しており、2009年8月にパキスタン・ターリバーン運動のバイトゥッラー・マフスード司令官の殺害に成功しているが、誤爆や巻き添えによる民間人の犠牲者が多いことが問題となっている。これは無人機操縦員の誤認や地上部隊の誤報、ヘルファイアミサイルの威力が大きすぎることなどが原因となっている。ヘルファイアミサイルの問題に関してはより小型で精密なスコーピオンミサイルを採用して対処することになっている。また、世界最大の武装無人機輸出国となった中国は「翼竜」「彩虹」といった武装無人機をアフリカやアジアの発展途上国に積極的に輸出して、イラク軍やエジプト軍のISILへの攻撃、ナイジェリア軍のボコ・ハラム攻撃、サウジアラビア軍とアラブ首長国連邦軍のイエメン内戦への軍事介入などで使用されており、先進国に輸出を限定していた米国もこれに規制緩和で対抗し、武装無人機の拡散による紛争拡大が懸念されている。 イランも武装無人機のシャヘド129(英語版)によってシリア内戦における反政府勢力を攻撃し、市販の中国製エンジンを搭載したアバビール(英語版)のような武装無人機を中東のシーア派民兵組織に拡散させて問題になっており、イエメンのフーシが自前化したアバビール(カセフ1)やサマド3(英語版)などでサウジ石油施設攻撃を起こして世界経済に大きな影響を与えた。2014年リビア内戦では暫定政府のトルコ製無人攻撃機のバイラクタル TB2とリビア国民軍の中国製無人攻撃機の翼竜が互いに破壊し合う無人機戦争が起きている。 テロ組織側でもISILは、自動識別や自動運航が可能で滑走路での離着陸を必要としないDJIやスカイウォーカー・テクノロジーなどの廉価な中国製の商用無人機に爆発物を搭載して武装化させており、2017年のシリア・イラクにおける紛争で、ISは手榴弾や迫撃砲弾、たる爆弾などを搭載した民生用ドローンを投入して政府軍に多くの死傷者を出している。構造は単純で、真下に爆弾を落とすだけの簡素なものだが、誤差数メートルという驚異的な精度で攻撃できた。小型のドローンは被発見性も低く、騒音も軍用機に比べてはるかに小さいため、直下の兵士が全く気付かないまま攻撃を受けることもあった。戦車に対する攻撃にも使用されており、撃破の事例はまだないが、対戦車榴弾や対戦車ロケットによる攻撃が試みられている。少なくともこの攻撃で乗員が殺傷されたことがISの連日投稿する動画で確認されており、脅威度の高さを裏付けるものとなった。民生用ドローンを攻撃用途に用いる場合、防護が一切ないので小銃弾を受けるだけで簡単に撃墜されてしまうが、十分な高度があれば攻撃後の退避は容易である。赤外線をほとんど出さない上にRCSも低いので、SAMによる対処は不可能である。軍用機として見れば極めて安価であり、歩兵が直接運用し自前で近接航空支援が可能なことから、テロリストから見れば理想的な航空兵器であり、懸念が高まっている。イラクで充電不足で自動帰還した自らのドローンにISILの戦闘員が誤爆されるという事故が起きた際は商用無人機の高性能化の脅威をむしろ示すものと報じられた。アメリカやイスラエルなどの正規軍でも廉価で使い勝手が良いことから民生用無人機は使用されており、イスラエル軍はDJIの無人機に催涙弾を搭載して2018年3月にガザ地区のデモ隊に使用して死傷者を出した。
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