死亡記事の形式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/11 16:33 UTC 版)
現在の日本の新聞の場合、形式から死亡記事は大きく三つに分かれている。一つ目の類型は定型記事として作成される簡潔な速報、二つ目の類型はニュース性が高い人物の死について見られる一般記事、三つ目の類型は、過去一定期間に死去した著名人の中から特に一部を詳細に取り上げた追悼記事である。第1類型と第2類型の中間的な扱いを設けている例もある。 第1類型の定型記事として作成される死亡記事は、様式が新聞社・通信社ごとに決められており、ほぼ共通するものの若干の違いがある。故人の氏名、死亡時の肩書や専門分野、縁故関係、死亡日時、死因、死亡場所、年齢、出身地などの基本的事項のほか、葬儀の会場や喪主が、読者の出席や弔電の便宜を考慮して地番や振り仮名など詳細に記される。新聞の定型死亡記事独特の表現として、氏名に傍線が付されており、「裏罫」「死亡罫」「死人罫」などと呼ばれる。対象は主に大企業の社長や専務などの要職を務めた人やまれにそれらの人の肉親で、多くは社会面の最下段に小さく配置される。主に関係者への連絡としての機能を果たしている。 第2類型の一般記事として報じられる場合は、「(故人名)死去」などの見出しが付されて、一般的な文章で構成される。記事の大きさは様々である。故人の関係者のコメントが載せられることがある。対象は知名度が特に高い人物のほかに、社会的問題性や話題性の点から大きく取り上げる例があり、そのままでは小さな定型記事で済んでしまう人物を大きく報道するために、所属組織の今後への影響などを盛り込んだ広範囲の内容として、ニュース価値を高める手法が用いられる。掲載位置は社会面のほか、場合によっては(元首相など国家の要職経験者や高い実績を残した元スポーツ選手など)一面記事となることもある。元スポーツ選手の場合にはスポーツ欄に関係者のコメントが載せられることがある。天皇・皇族など多方面に影響が及ぶ人物の場合は、一面・社会面の他、スポーツ面・経済面・地方面など各面にわたって死去した人物とのかかわりが掲載されることもある。 第3類型は近年になって見られるようになったものである。1カ月に2〜4回程度、多くは署名記事として取り上げる。朝日新聞の「惜別・ひと人生」、読売新聞の「追悼抄」、毎日新聞の「悼む」、産経新聞の「葬送」などの例がある。人物評伝をしっかりと書くという点で、欧米の死亡記事に近いという評価もある。年末にその年一年の主な物故者を振り返る記事を載せる慣例もあるが、これは年始ではなく年末に掲載されるため、たとえば岡本敦郎や松平康隆のように年末に死去して新年の新聞に訃報が掲載された場合は死去した年の「その年の物故者」からは漏れることになる。 どのような人物の死について掲載するか、どの形式をとるかは、主に社会的地位や知名度、業績を基に判断される。大学教授のように元学生などの関係者が全国にいることも掲載の理由となる。新聞社と故人の義理やしがらみから掲載される例も一部にある。編集局の整理部が実質的な最終判断を行う。 なお、以上のほか、地方紙では、地域で出た物故者の全員を掲載する欄を設けている例がある。現在では遺族の同意を得て掲載することが一般的である。
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