死亡記事 Obituary
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 14:10 UTC 版)
「アシモフのミステリ世界」の記事における「死亡記事 Obituary」の解説
※初出『F&SF』1959年8月号。 ランスロットが新聞を読んでいると、彼とはきわめて仲が悪いが、成功した有名な学者の死亡記事が載っていた。それには美辞麗句がちりばめられ、まるで第二のアインシュタインのようにまつり上げられていた。ランスロットも、自分の正真正銘の死亡記事を読みたいと思った。彼は時間旅行の研究をしていて、それなりの成果を上げていた。複製を3日間だけ存在させることはできたが、生き物は死体になってしまった。彼の計画はこうだった。まず自分の複製をつくり、彼自身はどこかに隠れる。複製は死体に間違いないから、医者に死亡診断書を書いてもらい、葬儀社に連絡し新聞社にも情報を流す。新聞に載った自分の死亡記事を隅から隅まで読む。3日過ぎて複製が消えるころに本人が登場して時間旅行についての発表をする。彼は賞賛されその名声は歴史に刻まれるというものだった。 ランスロットは計画を実行した。細かいところは妻に手伝わせた、複製には青酸カリで死んだような細工をほどこし、医者はそれを認めて死亡診断書を書いた。妻が葬儀社と新聞社に連絡すると、新聞記者が取材に訪れた。次の日、隠れているランスロットのもとに、妻が新聞を持ってきた。それには「原子科学者の謎の死」と書かれてあった。彼は自分の死亡記事を隅から隅まで読み、そして何度も読みかえした。ランスロットは満足だった。3日経って複製が消えたとき、妻がいれたコーヒーを飲んで彼は死んだ。コーヒーには青酸カリが入っていた。妻はあれこれ命令する夫に不満を持ち、嫌気がしていたのだ。妻は複製が消えてなくなった棺桶に、ランスロット本人の死体を入れた。複製の死体が、本人の死体に代わっただけだ。やがて葬儀が行われた。いま妻は自由で、金もあり、友達もできた。妻は満足だった。
※この「死亡記事 Obituary」の解説は、「アシモフのミステリ世界」の解説の一部です。
「死亡記事 Obituary」を含む「アシモフのミステリ世界」の記事については、「アシモフのミステリ世界」の概要を参照ください。
- 死亡記事 Obituaryのページへのリンク