欠点とその対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/06 07:00 UTC 版)
三元触媒が効率よく酸化・還元をするためにはガソリンが完全燃焼し、かつ酸素の余らない理論空燃比(ストイキオメトリ、英: stoichiometry)で運転されている必要があり、暖気運転時や高負荷運転時の空燃比が濃い運転条件では浄化能力が低下する。燃料噴射装置とエンジンコントロールユニット(ECU)の技術が発達するにしたがい、排ガス中の酸素濃度を酸素センサー(O2センサー)で測定するなど、運転状態をきめ細かにフィードバック制御することで、より効率よく三元触媒を利用できるようになった。一方、排ガス中に酸素が多いディーゼルエンジンやリーンバーンガソリンエンジンなどにはそのままでは使うことがはできず、ほかの触媒や尿素SCRシステムなどの技術が用いられる。 常温では還元能力が低く、エンジン始動直後などで三元触媒が冷えた状態では還元能力がほとんどない。これを改善するため、アイドリング時に排気管内に二次空気を導入して排気温度を上昇させるリードバルブ式二次空気導入装置を併設する方法や、触媒をエンジンに近づけて排気ガスの熱により温度上昇を促す方法がとられている。その一方で、過度の高温に晒され続けると破損するため、あまりエンジンに近い位置に設置することもできない。 スパークプラグの失火などにより触媒に多量の未燃焼ガスが流入すると、反応が過剰に行われ触媒が過熱して損耗する。この対策として、かつて日本国内で販売される乗用車には触媒コンバータに温度センサーを設置して警告灯や警報ブザーなどで過熱を知らせる熱害警報装置の設置が義務付けられていた。しかし、1991年(平成3年)の在日米国商工会議所の申し立てをはじめとして、市場開放問題苦情処理体制(OTO)を通じて熱害警報装置の設置義務の排除を求める動きが欧米より相次いだ。1994年(平成6年)の欧州ビジネス協会(EBC)のOTO申し立てを受け入れ、失火を検知して燃料供給を停止する電子制御の導入などを条件に、1995年(平成7年)に設置義務は廃止された。 三元触媒の材料には白金やロジウムなどの貴金属触媒が用いられる。貴金属の使用量を低減するため、自己再生機能を持つインテリジェント触媒などが実用化されている。2008年7月24日、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 助成事業として熊本大学がこれまでのセリア(CeO2)系酸素吸蔵物質(CeO2-ZrO2)に替わる「希土類オキシ硫酸塩(Ln2O2SO4)」を開発した。酸素吸蔵放出量が中高温域で既存物質のおよそ8倍の大容量酸素吸蔵(ストレージ)物質で吸蔵速度も約2倍を実現し、貴金属の使用量を大幅に低減する技術として期待されると述べている。 三元触媒はガソリンに鉛や硫黄が多く含まれていたり、オイルにリンや硫黄が多く含まれていると化学的被毒を受け浄化性能が低下する[要出典]。ガソリンに含まれる鉛と硫黄については、無鉛ガソリンが普及し低硫黄化が進んで触媒への影響は少なくなった。オイルの一部は燃焼するため、エンジンオイルに硫黄やリンが含まれていると触媒に影響が及ぶ。硫黄とリンを含んだ化合物は潤滑において重要な機能を担う添加剤として多く用いられていたが、ILSACなどのエンジンオイル規格で硫黄とリンの含有量規制が行われるようになった。またブローバイガスに混入するオイルの量を低減する観点から蒸発量も規制され、特に低粘度オイルでは蒸発量の少ない性状が要求されている。
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