構えと攻撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 18:36 UTC 版)
基本の構えは四つあり、それぞれ左右同形である。 フォム・ダッハ(Vom Dach, Vom Tag:屋根) 日本剣術の八双のように、剣はまっすぐ、姿勢もまっすぐにし、足は左を前にして肩幅に開き、膝をリラックスさせる。肘を張って、裏刃を使えるようにする。ここからは、斜め下に強烈に切り下げる(ツォルンハウ Zornhau)。その際、左の握りは雑巾絞りのように絞り込み、切り下ろした時には、体は横や下を向かず、まっすぐになるようにする。 練習では腕を前にかまえ剣の動きは小さくする。この構えは相手が多人数の場合使いやすい。右でも左でも剣を動かせる。また大上段は肘が死角となるがこの構えにはその弱点が無く剣を立てるので疲れも少ない。 オクス(Ochs:雄牛) 左足を前に出し、切っ先を相手に向け、右の頬の横で雄牛の角のごとく構える。キヨンは自分の顔よりも前にして、顔面を守る。右手の親指は下に向け腕はクロスする。いかにも突きの構えに見えるがここから攻撃はツベルクハウである。アームクロスをすでにしているためむしろ、突きよりもツベルクハウのほうが出しやすいのだ。オクスはリードルをして再度突きをおこうなう通過の構えとしてもある。突きは手を伸ばし踏み込むが、体は相手に対して右斜めに進める。剣の軸線と体の移動方向を違えることで、相手のカウンターに備えるのである。 プフルーク(Pflug:鋤) 剣を正眼に、しかし腕を右に寄せ、左足を前にした構え。ここからの攻撃もオクス同様に突きである。 アルバー(Alber:愚者) 左足を下げ、右足を前に、腕を左に下ろし、切っ先を正面下に下げた構え。これは一見ノーガードに見えるので、勢い込んで相手が攻撃してくる時に、切っ先を上に向け下腹を突く。さらにノーガードに見せるべく、切っ先は地面に降ろして剣を垂直に立て、左手はポンメルの上に重ねる方法もある。右手を軸に左手でポンメルを押し下げると、テコの応用で剣先は持ち上げるよりも早く上を向くのである。 補助的な構えと攻撃としては、シュランクフート Schrankhut (横木の構え、剣は体より前。そのまま裏刃で切り上げるために刃は垂直方向に向く)や、ネーベンフート Nebenhut(下段横構え。剣は後ろに引く。テイルガード。刃は水平)などがある。ドイツ剣術は日本剣術にくらべて剣の位置が高く、肩の高さのハイ・ラインで行う。また、映画のように腕を大きく動かさない。自分の体の前にビーチボールのような空間があり、手はそこからはみ出すことはあまりない。手首のやわらかい回転が重視される。 ドイツ剣術では、攻撃は構えと構えの間にある。つまり、攻撃を終えた時には次の構えになっていなければならず、そこから連続攻撃をするのが前提となっている。例えば、フォム・ダッハから斜め左に切り下げ、シュランクフートになり、そこから水平に裏刃を使って切り(ミッテルハウ mittelhaw)、ネーベンフートで構え、下から切り上げ(ウンターハウ Unterhaw)、左のオクス、突き、右のプフルーク、突き、左の…と連続するのである。いいかえれば構えは剣の通過ポイントにすぎない。大切なのは剣の移動である。 ツヴェルヒハウは頭上で水平に剣を動かす。これは防御の天井である。ツベルヒハウは上からの攻撃に対して防御であるが、同時に水平斬りの攻撃でもある。クルンプハウは正面の壁である。それはワイパーのようにあなたの前面を扇状にカバーする。クルンプハウを水平に寝かせると腹部へのミッテルハウ(水平切り)になる。シールハウは左右の壁である。左右からの攻撃を防御するとともに上からの攻撃になる。これらは基本は防御であるが角度を変えることで攻撃にもうつりかわる。 特殊な攻撃 モルトシュラーク Mortschlag これは剣を逆手で持ちハンマーのようにキヨンで殴る。あるいは、キヨンの部分で引っ掛け引き倒すのだ。例えば、相手が切り下ろしてきた攻撃をハーフグリップで受け止め、グリップを離して剣先を持ち、そのままキヨンで相手の剣を絡めて引き落とし、相手のあごをポンメルで下から突き上げる。 クロスアーム 両手剣では構える時腕がクロスするものがある。例えば右のオクス、右の突き、左のシュランクフート、ネーベンフートなどだ。クロスアームは距離が近い時すべきではない。上から押さえられると両手が防がれてしまう。しかし、利点もある。クロスした腕を戻すパワーでハウは強く、スピーディになる。
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